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Realizeー果てなき世界の物語ー  作者: 神木ひかり
第2章 終焉の再来
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【1】手紙

2章始まりです!

よろしくお願いします<(_ _)>

蒸気機関車に揺られて、長い眠りについた。今までの疲労と緊張の糸がそこでプツリと途切れたようにライトは長く意識を夢の中に置いていたのだった。シルヴィアは流れていく景色を眺めながら対話を始めた。



【ライトへ】


お変わりないですか?元気ですか?


私たちは元気です。生活は豊かな自然にも恵まれて変わらず良好。それもこれもシルヴィアさんのおかげです。今もあの時の恩を忘れずに私たちは平穏を送っている。だから、ちゃんとその事も伝えてください。そんな毎度の前置きはこれくらいにして。


3ヶ月に1度こうして手紙のやり取りをしているけど、それでもあれから3年の月日が経ったね。成長している私たちにとって、お互いの顔が分からないなんてことがあったら笑っちゃう。少しは帰ってきてくれると私も含めて、皆喜ぶ。だからライトは、いつでも帰ってきていいんだからね?私たちにとっては地獄だった場所でもあるけど、それでも故郷にも当たる場所なんだから(わからないけど……多分そう!)


まずは、近況報告から


※※※


いつも通り、楽しくやっています。街は変わらず歪んでるけど。それでも平穏は平穏です。


さて楽しいお話もここまでで。一応伝えておくけど、あまりライトが心配することではないと思うから、スルーしちゃっても構わないのでそこのところはライトに任せます。


最近、街でよく聞く話なんだけど。1つ目は、いるはずもない死んだ人間を見かけたという話。これは本当なのか分からないし、デマかもしれない。見間違いという人もいれば本当にいたという人もいる。不思議な出来事。そして、もう1つ。最近鎖のネックレスが流行しているらしいんだけど、そちらではどうですか?ということ。ここのところそういうネックレスをした人が多くて、ライトの方ではどうなのかなぁなんて思ってます。


じゃあ、ここら辺で終わろうか。ライトからの手紙待ってます。


そしてできるだけ身体を大切に。無理しないようにして下さい。本当に帰ってきてくれてもいいんだからね?(多分、ライトが思っているよりもずっと私たちはあなたに会いたいと思っているんだろうな)じゃあ、また。


【カルラ&みんなより】



最後の方で雑な感じが否めないそれに苦笑したのを覚えている。近況報告も彼らの様子が伺えるようでライトにとってはそれも1つの楽しみなのだ。


元奴隷。そこに自由を求めて、脱出したのが3年前だ。親友を失って手に入れた自由を初めは、無下にしていた自分。喪失感しか残していなかったそんな自由でも徐々に意味を持っていることに気づいて、自分のすべきことを再認識した。そして奴隷であったときに共に脱出を試みた仲間、それが彼らだ。自分はそこから旅を始めて別れを告げたが、今でも彼らが大切な存在であることに変わりない。


夢の中は無限に続く可能性を持っている。未来を創造してみたり、はたまた過去を振り返ってみたり。何でもありだということだ。自由とはまた別の意味の可能性。


忙しい日々が続いていたこともあって、前回送られてきた手紙に対しての返しが送れたのはつい先日だ。ライトは思う。彼らの状況が分からない今、早く着かないと間に合わなくなってしまうのではないかと。


焦燥感にかられたライトは、胸騒ぎを抑えて眠った。依頼の内容とカルラの手紙の内容での共通点を見つければそれこそ奇妙であることを物語っている。最悪だ、死人がもう一度立ち上がっているなんていう不思議な話は。険しい顔つきで眉間にしわが寄っていたライトの、正面に座っていたシルヴィアが彼の額をトンと指をうった。


「グルーラの東に位置するビルゲイジ。イグル国から北に2つ行ったところにあって、まだまだ長い道のりかしらね……依頼はそのグルーラ国の中の東端にあるビルゲイジでの奇妙な噂について。死人目撃情報と今そこにいるらしい魔女の拘束。魔女狩りの方にも情報はいっているはずだけれど青軍の方が情報提供の力はあるか……」


表情が和らいだライトを見て、また微笑んだシルヴィアは窓枠に肘を着いて長い道のりを遠く眺めた。



なぜか、自分は草原に立っていた。風が吹き抜きさわやかに駆け抜ける。だがライトの手に握られていた手紙は、それによってふわりと舞い上がった。それは掴もうとしても遠くに飛んでゆく。目の前に手を伸ばしても視界は暗転し、いつも大事な時に世界は闇へと落ちるのだ。


全ては悪魔のこの、対価に支払った視界のせいで。取り憑かれたようにライトは黒へと染まってゆく。



「っぁ!!!」


最近は見ていなかったはずの悪夢にうなされて、額に脂汗を滲ませながら目を覚ましたライト。心臓が跳ねて、血の気が引いたように青白い顔を浮かべる。


「君、うなされてたけれど大丈夫?」


正面からの声は、いつも通りでそれが安心感を覚えさせてくれた。ライトはそこで一呼吸置いて落ち着きを取り戻し返答する。


「あまり最近はなかったんだけどな……誰かが遠くに行ってしまったり、大切なものが抜け落ちてしまう夢。自分が孤独になるとかのそういう類の真っ黒な夢」


シルヴィアがふぅんと物珍しそうにこちらを見ていたので視線を逸らした。ライトはそこでハッと自分が何を言っているのだろうと気恥しさを感じて。


「いや……なんでもない。なかなか弱々しくなってたかもな」


目を泳がせて、シルヴィアと何か言い訳を探してみるがそういう時に限って言葉は出てこないものだ。シルヴィアが何を思ったのかクスリと笑ったのでやはりチラリと視線を戻してしまう。


「最初から君、弱いでしょ?何、格好つけているの?今更どうこうできることじゃないし。君が格好よくないことなんて、私知ってるから。それを口ごもった時点でアウトでしょ」


言われるがまま、ライトは彼女の言いようを聞き取った。そんなのは分かっているのだが。それでも、悪魔につけ込まれると思考が反転してしまうようで。ライトは少し不貞腐れたような態度をしてしまう。


「そうですね、オレそこまでかっこよくないですもんねー」

「そうよ、だから大丈夫。君はまだ15というガキなんだから」

「はぁ、ババアはババアでいろいろ達観してるもんな」


ガキ扱いされるのは癪だから、呆れも含めて少しの反発を見せてみる。だが涼しい顔に変わりはないようだ。


「ていうか……」


そして、眠っていたために夢の延長線上でも見えているのかと思っていたが突っ込まずには居られなかった。自分の錯覚(?)について異議を唱えてみることを決意したライト。既に眠りからは覚めていて、それはどうやら実態があるらしい。目の前に存在していなかったはずなのに彼女らはちょこんと座っていた。


「そいつらは、なんだよ?」


大きな瞳がこちらにずっと向いているのだ。視線がずっとはずれない。長い金髪を下ろした2人の少女。1人は紫、1人は碧翠のゴスロリ風の洋服を着た人形のような少女たちだ。シルヴィアの隣にちょこんと座ってずっとこちらを見ているのだった。


「今までずっと、無視られていたので私たちのこと見えていないのかと思いました」

「忘れられているようで私は悲しいですね」


2人の小さな口が動き、可愛らしくこちらに首を傾げてくる。ライトは驚きながら少し引き気味に言葉を繋げた。


「えっと……」


シルヴィアに助けを求めるように彼女に振ってみるとシルヴィアがキョトンとしたように見つめ返してきた。


「彼女らは私の使い魔。と言ったところかしら?知っているはずよ。だって君と彼女らは1度顔を合わせているはずだもの。記憶にないだけで」


動いた唇に、少女たちも同調して頷く。10歳くらいだろうか。それでも小さな小さな少女たちの瞳には鋭い尖った眼光が見えた。

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