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Realizeー果てなき世界の物語ー  作者: 神木ひかり
第1章 腐敗した世界の魔女狩りは
21/64

【20】新たな協力者

そこに立っていたのは紛れもなく、大幹部の1人であるアレン・トーマス・グリバードという男そのものだった。2人とも思っていたよりもずっと冷静にその状況を飲み込んでいた。焦って何かを騒ぎ立てることも泣いて懇願することもなくただただ、彼に視線を向けているのみ。


「やっぱり、シルヴィアが魔女でライトが仲間という組み合わせか……」


だが呟いて自分の口にあてていた煙草の煙を吐きだしたアレンには、殺気も何もありはしなかった。彼はそう言ってシルヴィアとライトを目で促して部屋を抜ける。2人も観念してその後に続くのだった。


「お前らがそういうんだと、結局はエイジとトオリの2人にも疑いがかかるわけなんだがアイツらは?」


全員集めてお説教、なんて話は、しでかした事柄の重みと合っていない。ここからどうなるかなんて知ったことではなかったが、最悪の場合ライトもシルヴィアも手荒くなったとしても逃げるつもりだった。だから、彼らにとって今の現状が怖いという感覚には陥っていなかった。2人のことをどうするものかと考えていて、最終的には聞き込みされるのであれば同時の方が楽だろうという思考にたどり着いたシルヴィアはアレンに彼らの居場所も教えた。


「シルヴィア、お前今何考えてる?」

「ここは、彼の指示に従いそのままついていくべきだと思う。だって妙だもの。彼に私たちを捕らえる気がないように感じるのだけど、それは私だけなのかしら」


それは、自分も感じていた。アレンのあの雰囲気とあの言いようはオレたちを捕らえる意がないような、そんな気だ。


「ああ、そうかもな」


アレンが監視室の扉に手をかけ開いた時には既にエイジもトオリも最後の1人に取り掛かっていたところだった。


「ふぅん。よく順序だてて準備してるじゃん」


ニヤリと笑ったアレンを横目にフンとそっぽを向くシルヴィアは、未来の未来を見据えていた。記憶改竄に終了した2人が、元の現実に戻ってくると案の定口を開いて驚きを隠せずにいた。


「あー、アレンさん。おはようございます」


挙動不審に目を泳がせながら、エイジが普段と同様にアレンに挨拶を送るのでトオリは彼のスネを力強く蹴る。


「アレンさんとヴィア、ライト……これはどういうことですか?」


状況理解が早かったのは、トオリの方でエイジは骨にまで響いた痛みにハッと我に返って今の状況を飲み込み始めた。本能的に未だにエイジは、現実逃避を試みているのか。


「アレン、さん?」


冷や汗浮かばせながらの苦笑いは、ただの醜さしか残さない。トオリはそれを知っていたからシルヴィアを信じてアレンに問いかけたのだった。


「んま、いいや。連行オーケー?」

「オーケー」

「……」


トオリが彼の言葉に頷くと同時にエイジは顔を曇らせていた。それを解くのもライトの仕事で彼はエイジの肩をぽんと叩く。


「大丈夫だ」


コソリと囁かれたその言葉にエイジも頷き、4人は黙りきったまま静かに歩くアレンのあとに続いた。



◇◇◇



「んじゃ、始めようか。事情聴取を」


しかし、連れられてこられたのは牢獄ではなくアレンの一室だった。どっしりと1人がけソファに腰を下ろしたアレンは煙草を灰皿に押し付けて4人の顔を観察するように眺めた。


「一つ聞きたいのですが、よろしいでしょうか?」


そんな緊迫した空気感で口を開いたのはシルヴィア。彼女が何を言いたいのか大体分かっていたアレンはそのままシルヴィアに静止をかけなかった。


「お前の本来の言い様で構わないが?」


それを聞いたシルヴィアもふぅと一息ついて普段のあの大人びた雰囲気へと空気感を変化させた。


「では、そうさせてもらおうかしら。堅苦しい言葉遣いも私にはくどいものでしかないから、そちらの方が気楽でいいもの。聞きたいことが多すぎて、何から話せば良いものか悩むけれどそんなことで話を止めるのも癪だから。簡単に、質問をさせてもらおうかしら。まず、なぜアナタは私が魔女であると推測したの?その理屈から述べてもらいたいと思うのだけど」


座っているシルヴィアとトオリの後ろに立っていたエイジとライト。部屋を見回す中でライトは、ある疑問を心の中に浮かべていた。


「今の現状と、どちらの方が優勢なのか分かってそれを聞いているのかと問いたくなるが。まぁ、ここは一つ穏便に。俺もお前らと対立しようと思っているわけではないからな」


そこまでいってようやく、分からなかったパズルのピースがハマったように感じた。彼は本当に対立の意思がなく、魔女に対しての敵意がないのだ。そして以前言っていた「悪と正の見極めを間違いなく図る」という言葉。アレンの中での俺たちはまだそのラインに踏み込んでいないということなのだ。


「面白いことを言うのね」

「そりゃ、どーも。で、話の続きだが。俺は、昔に魔女が天使と契約したところを間近で見させてもらったことがあるんだ。その時起きた現象が、異常も異様に。なんと身体もろもろ爆発したんだ。それは衝撃的な光景すぎて記憶にくっきりと残っているんだが、その背景にライト。お前がそっくりだったんだよ」


不意に目線を向けられてたじろぐライトにそのままアレンは言葉を繋いだ。


「悪魔を身体に持つ人間たちは、天使との契約時に皆共通して生命力を無にさせられる。通常運転の場合は、天使の力は目に見える形として外に白い光を放出させる。だが、それが悪魔の人間だと出ないわけ。それは白と黒の両方が一定のバランスを持ってぶつかり合うためだ。だから、何も変化が起きない時が1番危なくそいつ自体が悪魔の契約者であることを指すんだわ」


そこまで話したアレンは、次にシルヴィアへと顔を向ける。


「そして、その同時刻。誰も知らないその情報は不安と困惑をそこに浮かべるはずだ。しかし、1人だけそこに平静に何やら1人で呟く少女がいた。その現象が当たり前かのように捉えて、そいつは何やら笑っていたんだよ」


そこから推察される結論を述べるアレンは、前のめりに彼らをじろりと見て次に繋げた。


「そして、今お前らが持つ結晶石は魔女特有の魔道具である。その結晶石はそれぞれの妖術をそこに留めており、いろいろな事に活用できるように彼女らが発明した逸品なんだよ。すなわち、お前ら2人が魔女と近しい人間。または魔女であることを推察されるわけだ。んで、見ている中でシルヴィアがコンタクトをつけていることに気づきお前が魔女であるという結論に到達した。魔女も、契約者も能力仕様の際にどこかに見える異変が出るものだからな」


そこまで言われたシルヴィアとライトは、お手上げ状態で俯いた。しかし、シルヴィアはそれを嘲笑うかのように笑みを貼り付ける。


「アナタは私たちの正体を掴んだ。それで、どうなるというのかしら?悪いけどこちらも全力で逃げさせてもらうし、まずアナタには敵対の感情がないように見えるのだけど」


だから、答えた。ライトももう開き直ることがベストに感じてシルヴィア同様にアレンを伺った。


「ハハハハ、ハハハハハハ」


突如として漏れ出た笑い声に4人は、眉を潜めて警戒する。するとアレンは髪をかきあげて面白そうに潜入者たちを眺めるのだった。


「お前らに悪意はないようだな、話していてわかるもんだわ。結局、俺がここにいる目的は組織内の正義感に沿った行動がしたかったわけではなくて、俺自身の正義感を全うさせたかったからだ。それで俺の考えだとお前らは何かを見つけるためにここに来たと言ったところで……お前らは誰かを殺すとかそういう悪意があるわけではないことがわかった。これは、俺の考えだが間違いか?」


今までの行動からして、疑惑も他言していない。場所を移して自分の部屋にかくまったのも4人の安否を気にしての行動。アレンの行動は全て彼らを思ってのものがあった。


「アレンさん、俺たちはどうなるんすか?」


エイジがトオリの頭上から投げかけた質問は、将来が左右される大事なものだ。そんなこと言ったとしても、結局は自分が選んだ道だったのでそこまでの後悔はなかったが。


「処罰。と言いたいとこだけど」


冷たく放たれたその一言にさすがに顔を歪めたエイジとトオリは、アレンの言葉に目を見開いた。


「俺と協力してくれたら何もなしでいいよ?」


それは、ライトとシルヴィアにも向けられたもので4人は少しの時間黙り込んだ。そして、その静止を破ったのはライト。


「どういうことだよ……アレン、お前の考えは一体なんなんだ?一応はお前は、ここの大幹部の1人でそういう責任だって背負っているはずだろ?」


ライトが思ったままを口にするとアレンは、ニヤリと笑って資料室での資料の話を持ちかける。


「お前ら2人は、あの資料を見たろ?俺たちも探してるんだわ。あの魔女大量虐殺の犯人をさ」


その瞳は偽りで染まっていない。


「目星は着いている。だが、証拠がないから動けないんだよ。さすがにあの殺し方は俺らの方でも問題視されていてこれを任せられていこれを知っているのは、俺だけなんだが。この組織内の規定違反を俺たちも捕まえようとしているんだよ」


そこで一旦区切ったアレンは、真剣にこちらを伺うようにしている4人に穏やかな口調で話した。


「また、魔女狩りの中もその殺しが相次いでいるというわけだ。定期的に殺されていく狩人たちは後を経つことなく、痕跡残さず死んでゆく。それの調査を任された俺も立場上は、自由に動くことが難しい。しかし、見つけなければならない」


アレンがそこで人差し指をたてた。試験の時に挑戦状を出てきた時と同じ表情で彼は回答を求めるのだ。


「お前らが求めていることは予測不能だ。しかし、俺の手足となって代わりにいろいろ調べてくれる。だから、俺がお前らの正体を黙る代わりにその暗殺者たちの足取りを掴んでくれないか?」


出された案に、シルヴィアは考えた。3人が彼女を見る理由は彼女が1番思考が早く経験を持っているから。シルヴィアは、間を空けたあと含み笑みを浮かべた。


「面白いことを言うのね、アレン。とんだ考えをしているわ。でもその案は非常に有益だ」


どちらの目途も含んだそれは、敵対関係の彼らであってもおいしい策だ。そこにはさし伸ばされた手があった。3人は悟ってこれから起こる未来を見た。


「もしも、俺がここで告発した場合お前らがここから免れることは難しいだろう」


アレンも4人の逃げ道を塞いでいく。彼は、最初からその案を考えていたのだろう。だからそれに乗ることも悪くない。


「いいわよ。裏切り者の探索に協力する代わりに私たちのことを内密に。不思議な協力関係を結びましょうか。あくまで私たちとアナタでの取り決めね」


小首を傾げてそれに応えたシルヴィアとアレンは視線を交わし、握手を交わした。


そういうことか。コイツ面白いことを考える。1人後方で納得したライトは、アレンを冷たく見ているのだった。

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