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Realizeー果てなき世界の物語ー  作者: 神木ひかり
第1章 腐敗した世界の魔女狩りは
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【18】2人の関係

彼女が腕を組んで、こちらを睨んでいた。掴まれた襟をそのまま引っ張られ、ここまで連れてこられたライトは椅子に座らせられていた。目の前で話を進めるのはシルヴィア。


「いい度胸ね。私たちに迷惑をかけるのは、よして欲しいのだけど。分かっているのかしら?」


シルヴィアが自分の襟を掴んだまま近づかせ顔がドアップに映る。ライトは後ずさりを試みるも、それも叶わずということか。苦笑いを浮かべながら、硬い表情を無表情にしたままでそのままスルーしてみるものの。


「別に、何かお前に迷惑がかかるか?」


シルヴィアはウンザリとして今にもふらりと倒れるかのように大きくため息を吐くのだった。


「当たり前。私たちへの注意が厳しくなり自由な行動が取りづらくなるわけで。それも監視が緩まることなんてないのだから、今問題を起こすことなど以ての外なのよ?」


口調は静かなのに、嫌に鋭く刺さるのは何故だろう。するとトオリが呆れたように補足を加えてくる。


「新入隊員の1年目は、絶対の裏切りがないように監視が付けられる。それは全員に等しく行われ、どんなに弱くとも1年は保護されるいわば安全圏内の存在であるということです。ここの組織はそれほど過保護でそれほど秘密主義ということってなわけなんで」


それにライトは、目を泳がせながらもう1人の青年に助けを求めた。だがそちらは沈黙のまま。


「結局、私の1番の心残りは食事なのだけど。君のせいで私の食事が中断された。全くもって不愉快だわ」

「いつも、怒っているとシワが増える。お前は怒るより笑う方が華があると思うからもう少し笑った方がいい」


正直な気持ちをそのまま伝えたつもりだった。まぁ話を逸らしたかった意図もあったのだが、その言葉は彼女にとっての地雷のようなものだったらしい。ライトの腹部にシルヴィアからの拳が帰ってくる。


「余計なお世話よ」


未だに156歳のばばあにシワなどの言葉は禁句なのだろう。言って後から気づいたライトは、複雑な心情でシルヴィアを見た。すると、そのままトンとライトの額に指をついたシルヴィアは言葉を繋げた。今度は真剣味を帯びたもので。


「明日、決行する。君たちの部屋にいくから、朝5時に出てきなさい。ここの心臓部と呼ばれている資料室に潜入するからそこんとこよろしく」


囁かれてそのまま離れた彼女は、そっと含んだ笑みを浮かべた。それが彼女の素であるから、ライトもそれに頷いて答える。


「了解だ。それと、少し悪目立ちをしてごめんな?」


了承と謝罪の意を込めてライトは、シルヴィアたちを見た。そうして、満足そうに頷いたシルヴィアはそのままくるりと背中を向けて足を運んだ。


「じゃあ、また明日。もう遅いし、私たちは行くとする。明日の話はエイジに聞いといてちょうだいね」


トオリを引き連れ、シルヴィアたちは嵐のようにその場を後にしたのだった。誰もいなくなった休憩所の壁を見てライトはずるりと姿勢を椅子に委ねた。


「エイジ、お前見捨てたな?」


エイジは苦笑いを残しつつ、ライトの椅子に軽く腰かけて正論を振った。


「監視は行動を、見ているんだ。能力の中にはそういうことに特化したやつらもいてそちらに向けられる人間がいるということだ。イコール、俺たちの監視の視はビンビンに張り巡らされてるっつうわけ。だから、シルヴィアの言い分は正しいし。まずの話2人を連れてきたのオレだから。ホントに世話をかけますよ。あのままだったらお前ホントに注目の的だからな?今でももう手遅れな感じはするが……」


思い出したようにエイジが呆れたようにもの言いをするので、ライトもさっきの1件を思い返してみた。あちらからふっかけられた喧嘩でありながらもただの暇つぶしとして受け入れてこういう結果を招いたことに変わりはないのだ。ライトも確かにダメだったかと反省の色をうかがわせた。


「あの、オーベンという男。なんだったんだか……」


ライトが発した疲労感をエイジが補うように答えを渡した。


「オーベンは、俺の5歳年上の同期だ。俺らの時代は簡単に、ここの組織も入れたもので弱くとも受かるものだった。実際ここにいるのは天使との契約に成功した数少ない少数だが、それでも今よりは人数が多かった。んま、そういう訳で全員は自分を特別だと思っててそれが高いプライドと自己意識を確立しているわけだわ。だから、言い方が悪くなるけど。お前みたいな新人でそれプラス自分の弟よりもでしゃばったようなやつが、ムカついてくるってわけなんじゃねぇの?」


エイジの説明を聞いて納得するライトも世間知らずと言うべきなのか。当たり前にプライドが高ければそれが折られた時の衝撃は大きいということだ。


「つっても、2人は優雅に食事してましたからね?」


エイジが、呆れるように女子陣の様子を思い出して言ったのを見てライトも何となくは想像出来て苦笑する。


「そういえば、明日。資料室に行くとか言っていたがどういうことなんだ?」


よし、と立ち上がって自分たちも自分の部屋に戻ろうと廊下を歩き始めながらライトはエイジに質問してみた。


「資料室とは、大幹部以上の人間が入れないとされる部屋でここの情報全てを保管している場所だ。魔女の情報、魔女狩りの情報、犠牲者、犯罪者、その他諸々全てを記録した厳重に警備された一室というとこだな」


ライトはそこで彼女が言った潜入という言葉に合点がいった。しかしながらもその手段は難しいはずだとエイジを見つめると彼は分かりきったように次に話を進めていく。


「そんで、その警備を振りほどく方法が本物の魔女狩り側の俺たちの役目というわけだ」


そして、人差し指を上げて得意げにエイジはドヤ顔を貼り付けた。


「俺たちが監視室に睡眠煙を巻き一時的に監視を止める。その一瞬にお前らがそこに到達し情報を入手。簡単なようで難しくありながら繊細さが必要となる作戦というわけだ。1歩間違えれば俺らもお前らも牢獄にぶち込まれるというわけだからな」


笑いながら言っていてもエイジの言うことは大真面目に2つの危険を有する。そして、ライトはエイジに笑顔を向けた。ここは謝罪ではないと感じたからだ。


「協力感謝する。お前らも危険だから気をつけろよな?一応は見つかれば俺たちの仲間として扱われるわけなんだから」


それを聞いたエイジは、何を言ってんのかとキョトンとした表情で聞き返した。


「何言ってんだよ、俺らもう仲間で十分じゃねぇか」


彼のこの友好的な姿勢はとても見習うべきものだ。しかしながらどうやっても複雑な心情が表情に浮かんできてしまう。自身にとってのポーカーフェイスとは感情を秘めることと同様で重要な事なのに、そういう時だけは正直なのだった。嫌になってぎこちない笑みを浮かべたもののエイジは、察知したように離れた。


「ま、いいや。ゆっくりな。俺はお前のことが好きだから」


真正面から言われた言葉にライトは、胸を貫かれたような衝撃を受けた。


「最初は興味本位だったし、会ってまだまだ時間はないけど俺は、お前のそういう不器用なとことかなんだかんだ言っても相手に優しいところとか。好きだなって思うよ」


そんな言葉を真顔で言う彼にライトは自分の顔が紅く染まるのを感じた。普段はチャラチャラしているのにこういう時は真面目に言ってくる彼にライトも手を顔で覆った。


「ちょっと待ってくれ、馬鹿だな。お前……」


その様子を見てニヤリと笑ったエイジが被せるように連続で言い繋ぐ。


「照れてやんの」

「うっさい、お前が小っ恥ずかしいこと言うからだろ!?」


戯れとともに自分の部屋についたライトは、ベッドに直行しボスりと枕に顔を埋めた。


「ド直球に言ってくんな」


それを聞いたエイジもまた、自分の言葉を思い出して照れていたのだがライトはそれに気づかなかった。


「さてと、お前には聞きたいことが山々あるんだが。1番気になるのはお前とシルヴィアとの関係だな」


唐突に発せられた新たな発言に枕に顔を埋めていたライトがバサりと起き上がって表情を歪める。


「なに?」


そんなライトにお構い無しにエイジは、椅子に座ったままこちらを眺めて何か企んだような笑みを浮かべていた。


「お前らデキてんの?」


その言葉を聞いて、固まったライトは数秒間息をするのも忘れるのであった。



◇◇◇



「ヴィア、あなたたちデキてんですか?」


こちらでも少々厄介事になっているようで、シルヴィアは口に含んだコーヒーを漫画のように口から吹き出した。表情はいつも通りなのに眉がぴくぴくと動いているのは彼女が動揺している印だろうか。


「何を言ってるのか分からないのだけど、もう1度言ってくれるかしら」


シルヴィアは、普段を装いトオリに選択肢を迫っていた。だがそんなことで屈する彼女でもないようで。気になることはむず痒さを引き起こすのだろう。


「ヴィアとライトは付き合っているのですか、と言ったのですが……まさか付き合っていませんよね?確認の意味を込めて質問しただけであって。わ、私は2人が付き合っていないことを知っているのですが……」


モゴモゴと口を動かすトオリにシルヴィアは机に肘をついて顔を起き、ふぅんと何かを察してトオリを見た。


「付き合ってたらどうなのかしら?」


それを聞いた瞬間に飛び跳ねた心臓を抑えてトオリは、静かに。だが異様なまでにいらだちを覚えた。


「ど、どうもしませんよ」


動揺は隠しきれないものであり、シルヴィアには突き抜け状態。部屋でもう1度食事を取っていた彼女らは、食べ物を喉でつっかえてしまう可能性があったので食べなくて良かったねと言うべきか。


「はぁ」


そして、シルヴィアは単刀直入に答えを発した。


「なぜ、そのような考えに達したのか分からないけれど。断じてそれはありえない。むしろ、彼と私の関係はウィンウィンのものであって絶対にそれがそこから発展することなど起こりはしないから」


目を瞑ってシルヴィアは面倒くさそうに手をひらひらさせた。全否定の意味をそこに映してトオリはそれでも疑惑の念を消さなかった。



◇◇◇



「俺がシルヴィアに助けられて。それで俺と彼女の目的が一致したことをきっかけに一緒に旅をしている関係であってそれはないから」


エイジの問いかけにライトは精一杯に否定した。なぜ、自分がここまで動揺していてここまで全力で否定しているのかは定かではなかったが、そうしないと居られなかった。エイジは、何かを感じたように腕を組んで自分の考えを述べた。


「そういうのっていつかは変わると思うんだよね、不変というのはありえないことだし。ライトだって歳を重ねれば痛いほどそれを痛感する。気持ちは色々な方向へと曲がり行き着く先まで行くんだから。まぁそれはさておき、今はゆっくりと。この時間を大切にするんだな」


エイジに言われてボスりともう1度横たわったライトは、その言葉を心の中でリピートした。彼女とどうこうなることなど。この先、あんな過去がある限り絶対にありえないのだと。



「「あくまで、協力関係はずっと同じ距離感を保ってだから」」

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