【0】プロローグ
「君と私は契約した。これより確かな絆が私たちを繋ぐであろう」
少年は目を開いて魔女を見た。告げた魔女は少年を冷たく見下ろした。力を貰うための契約は対価を支払い得るものである。
これは親友を助ける力を得るために繋がれた絆。そこには何ものも存在しない。少しの期待と少しの希望を内に秘めるだけで2人の関係は最初から空っぽだった。
ただ熱く苦しく、新しい痛みを知って尚。少年は運命に抗い続ける。
「さぁ、始めよう。お前を救う戦いを」
◇◇◇
悲劇は起きた。産まれてきた世界も、生きてきた世界も最初から間違っていたために少年は苦しみ続けたのだった。苦しまなければ楽であることさえも悟るほどに彼は絶望し、知った。不平等であり残酷な世界の仕組みを。
しかし奴隷だった少年も仲間を知り温かさを感じる。だがそれでも裏切られて崩れるもので。親友を失った少年の成り果ては、まるで壊れた人形そのものだった。希望を持てばそれだけ現実に打ちのめされる。孤独はそれこそ最大の悲痛だろうと。
さて、魔女は少年を見捨てない。彼女は少年を幼き自分に映したことで、感情が渦巻いたのだった。そして旅に出た少年は青年へと成長し、またもこの世界の過ちに巻き込まれる羽目となる。
大切な誰かを失わず、世界がいつでも美しくあり続けるために。自分を犠牲にしても、もう二度と自分のような悲劇を起こさない。
「ありがとう、そして僕は生きていくよ」
オレはもう大切な人を失わない。