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序章 僕と彼女の
月明かりに照らされた天文部の一室。
そこで彼女はこう言った。
―「私は幾度も、星々の嘆きを観測してきた」。
彼女の頬には、涙が一筋、伝っていた。
その涙は反射した光を受け、まるでこの世のものでは無いように思える程綺麗に、透き通っていた。
僕は何も言えず、ただただその場で見惚れていた。
彼女はそんな僕を気にも留めず、微動だにもせず、ただただ其処で佇んでいた。
あの時、何か言っていれば良かったのだろうか。そんなこと、今となってはもう解るはずもなかった。
―――此れは、僕と彼女の、僕たちの為の記憶。