1 天使の勇者
「おーーさーい、ちーくーーーよ」
お母さんのうるさい声が微かに聞こえてくる
正確にはうるさくはないのだがこうも朝だと夢心地だからうるさく聞こえてしまうものだ。
…やばい、眠い。とっても眠い…
………………………………
「起きなさい、寝坊助。」
「あいた!はっ…ぐ…」
不思議な声を聞き目を覚ました瞬間背中に激痛が走り口を手で抑える。どうやらベッドから背中から落ちたようだった
「はぁはぁはぁ…いっつつ!呼吸困難になるかと思った」
否、柔な私の身体のことだ。たぶん呼吸困難に陥ってはいたのだ。たぶん。
そんなことはどうでもいい。
「あ、今何時だ!?」
時計に目をやる。そこには登校時間にギリギリ間に合うくらいの時間が表示されていた
「これならギリギリ間に合うかな」
と言い急ぎ朝支度を済ませバッグを持ってドアを開ける
「いってきます!」
と誰もいない家の中に朝の挨拶をし駆け出す。
そういえば朝のあの不思議な声はなんだったんだろう…
なんて考えていたからか迫ってきている車に気が付かなかった
ブー!っと甲高い音が響き渡る。
いつもの私なら華麗に躱せることが出来たのだろう、しかし今日に限りその力は不発に終わった
…あぁ、私にも二次元のような力があればこんなこともないんだろうなぁ…
そんな夢は命と共に消えていった
◆
…あれ、ここは…
いしづくりの部屋。
あたり一面にはこだい文字っぽいものやかみさまみたいな絵がかかれていた
…よめない。
うん、一切読めない。
視力がない訳では無いけど文字は読めても文字の意味が全く理解できない感じ。読めなくてむしゃくしゃする
…誰もいないのかな
周りを見渡す、そうすると後ろの方に薄い扉があった。その扉に近づいて恐る恐る手を触れると扉が開き向こうには一本道があってその先に光が見えた
あ、光だ!とりあえず向こうに行ってみようかな
通路を抜けるとそこには蒼く光る魔法陣があった
…なんだろうこの魔法陣…少し不安だけどこれ以外何も無いや…仕方ないかな
勇気をだしてその魔法陣に乗る。そして蒼い光が包み込みまた新しい部屋にやってきた。最初の部屋とそんなに変わらない部屋だ
…また同じ部屋?
変なところはあるかなと周りを見てみる。するとまた扉があった。
その扉を開け抜けた先にひらけた部屋に出た
両隣には騎士ゴーレムのような大きな鎧を着たゴーレムがいた
…大きい…このゴーレム生きてるのかな…強いんだろうなぁ…
そんなことを思いながらこの部屋を探索することにした。
円柱が均等に並んでおりゴーレムが歩き回れるくらいには間隔があいていた。
柱や壁にはびっしりと文字や絵が敷き詰められており見るのだけでも嫌になってくる
ゴーレムの先には重々しい扉があり私の腕力ではビクともしない
他の扉を探してみる、隠し扉、というものだ。じーっと目を凝らすと重々しい扉の上に隠し扉があった。
…どうしよう。ゴーレムさんが動いてくれないとたどり着けない…
そう思って諦めてゴーレムに寄りかかったら急にゴーレムが動き出して私を手に乗せて扉の場所まで持っていった
うわわわわわっ…???…とりあえずありがとう、ゴーレムさん。
お礼を言って扉を開け入っていく
その先には黄色く輝く魔法陣がありそれに乗っかると今度は黄色の光に包み込まれ転移した
上を見上げれば青い空
下には透き通った水が
前から押し寄せる心地よい風がとても気持ちいい
向こう岸には砂浜や森が拡がっていた
…外、なのかな?
後ろを向けば石造りの薄暗い階段がある。たぶんさっきいた場所の外なのだろう
…この後どうしよう。
とチャプンと水に手を触れてみる。すると水に身体が引っ張られ
!?溺れ……あれ?
なんと水の中に入っても息苦しくないのだ。そして力を入れているわけでも力を抜いている訳でもないのにその状態を維持し続けている
…なんなのかな…これ…まぁいいかな…これで向こう岸まで泳ごう
と思いながら水の中をすいすいと進んでいく。
そして向こう岸まで泳いでいきぶるぶると身体を震わせた。
森…少し暗いな…怖いけど…頑張らないと…
と言って森の中に入っていった