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第32話 最弱魔族転生(未完結編)



 −2−


 よく分からない白い場所を経由し、俺は再び産まれた。

 最弱種族のゴブリンとして。





 正直なところ、やり直しが出来るのかと喜んだ。

 あまりにも後悔が多い人生をやり直せるなら、それ以上の希望は無い。

 俺は次こそは失敗しないと誓った。




 結論から言えば、やり直しは出来なかった。

 そんなに都合の良い話が、そうそう幾つも落ちているはずがないのだ。


 そもそもの話、これを二周目とは表現したが、それは決して一周目の焼き増しでは無いようだった。


 後に理解したことだが、この世界は全く同じ舞台の上、全く違うキャストで、似たようなストーリー(歴史)を繰り返している。


 いや、繰り返しているという表現は正確では無いのだろう。文字通り、やり直しているのだと思う。

 いわゆるタイムリープでは無く――連続した時間の中でうわものを変えず、中身だけを入れ替え、一から再開しているのだ。


 そもそも俺からして、完全に別人として生まれ変わっていた。時間を繰り返しているのであれば、同一人物として再開するはずだろう。

 産まれた時代も違えば、出自も違う。名前も顔も何もかもが違う。

 完全に別人として産まれたのだ。


 同じ点といえば、ゴブリンであることと記憶を持ち越していることくらいだろうか。


 あとは『略奪』と自分で名付けたスキルが使えるくらいだ。

 倒した相手の性質を奪い取れるチートスキル。これのお蔭で随分と命を拾った記憶がある。


 だが、それも明らかに弱体化していた。

 前世で手に入れた性質は使えたが、新規に何かを獲得することは出来なくなっていた。


 まぁ……正直、全てどうでも良い話だ。


 俺がどうなろうと、彼女達が同じように生まれ変わっている可能性があるのならば、何だって構わない。


 俺はその希望だけを胸に、彼女達を探す旅に出た。


 その旅は生涯をかけて行なわれたが、報われることは無かった。





 −3−



 二周目の世界は、俺の死によって滅ぶことは無かった。

 俺が死のうと、世界は何事もなく続くらしい。

 では、前回のアレはいったい何だったのだろう……?


 俺の疑問に答える者は何も現れず、再び白い場所を経由して、三度目の誕生を迎えた。前回の死から一年が経過していた。


 ゴブリンの寿命は精々五〇年といったところだ。

 平均寿命でいえば三〇年も無いだろう。


 ご多分に漏れず、俺の二周目も二五年ほどで人間に殺されて終わった。

 勿論、彼女達を見つけることは出来なかった。


 今にして思えば、一周目は魔王の加護で魔力だけは分不相応に高かったのだ。

 それを失った俺は、本当に脆弱なゴブリンでしかない。

 略奪した性質も、魔力不足による弱体化で大して役には立たなかった。


 三周目では、もう少し慎重に探索しなければならないだろう。





 −4−



 また、殺されて終わった。

 勿論、彼女達は見付からなかった。


 やり方を変える必要があるかもしれない……。


 脆弱なゴブリンのままで、この世界の隅から隅までを探すのは困難だ。

 以前は仲間達が沢山居たが、今は一人なのだから。


 もう一度魔王になれれば……もしかしたら。





 −5−



 前回は、主に魔王や勇者というものを調べることに生涯を費やした。

 あとはこの世界の歴史についてか。


 一生涯をかけて分かったのは、魔王が世襲制であることくらいだった。

 親子間での世襲ではなく、どうにも魔王という代物は、魔王を倒した魔族に引き継がれる性質があるらしい。

 もしくは、誰にも引き継がずに魔王の寿命が尽きた場合に限り、産まれたばかりの赤子に受け継がれることもあるようだ。


 一周目の俺は間違いなく後者だろう。

 つまるところ、運だ。


 もう一度運に頼るのも一つの手ではあるが……この生まれ変わりがあと何回続くのか保証が無い以上、前者の手段を模索する必要がある。


 勇者以外には傷付けられない魔王を倒す、などという不可能を可能にしなければならない。


 しかし、絶望する必要はない。

 実際のところ、魔王は膨大な魔力で事実上突破不能な防御力を持つだけで、決して無敵の存在ではない。

 どこからともなく補充される魔力を遮断し、魔力を枯渇させれば倒すことは可能だ。

 そうでなければ、防御を上回る火力を瞬間的にぶつけてやれば良い。

 これはかつて魔王だった経験と、前回の調査で分かったことだ。


 限りなくゼロに等しい可能性だが、これに賭けるしかないだろう。





 −6−



 魔王に会うことすら出来ずに死んだ。

 頭のおかしなゴブリンとして、配下の魔族に軽く倒されたのだ。


 ゴブリンとしては限界に近いところまで鍛え、略奪を上手く使ったとしても、その程度だった。


 絶望的に弱すぎる。


 単純な強さ以外で勝たなければいけない。


 そうしなければ、彼女達に……。











 −64−



 事態に進展があった。


 二周目の開始からニ〇〇〇年ほどで、世界が滅びたのだ。

 今度はあらゆる生き物が影に飲まれる光景を目にした。


 そして次に目を覚ますと、また世界が一から始まっていた。

 舞台だけはそのままに。


 誰も、その異常に気付いていない。


 そもそも同じ人物が産まれることは無いのだから、異常に気付くはずもない。


 ドラゴンの女王やエルフの長老といった配役は概ね同じように存在するのだが、噂に聞いた限りでは見た目からして別人だった。

 俺と同じく中身は同じ可能性もあるのだが、ただの怪しいゴブリンには会う方法が無く、確認のしようもない。




 何度繰り返しても、俺が魔王になる手段は無いのかもしれない。


 それ以前に彼女達が、繰り返している可能性が……。





 ――もう、彼女達の名前が、思い出せない。






 −127−



 何度も死に、その度に通る白い場所。

 何度も通るからこそ理解できたことがある。


 あの場所は恐らく死後の世界だ。


 混濁した魂の坩堝(るつぼ)で、意識が混ざり合う感覚を思い出す。

 あそこで死んだ者の魂は分解され、新たな魂として再構成されている。


 なるほど、同一人物が産まれないはずだ。

 魂の段階からして、別人になっているのだから。


 恐らく自分は例外なのだろう……何故、例外だったのかは、もう忘れてしまった。


 やはり、あそこを通る度に魂の一部を失っているようだ。


 もう、何のために魔王を倒すのかも思い出せない。


 ただ、もう残骸と化した魂が、全てを削ぎ落とし純化した欠片のような想いだけが、こびり付いて消えない。


 ――倒さなければならない。


 何を?


 ――……。







 −???−


 何度も繰り返し、最弱のままで敵を倒す術を模索した。


 かつて――いつだったかは思い出せないが――魔王より略奪したものがあることに気付いてからは、少し楽になった。

 やはり弱体化していたが、自分には絶対命令権が残されていた。

 ゴブリン共にしか使えず、抵抗されることが多々ある程度の力だが、今の自分には最も有益な力だ。


 何度も繰り返し、学んだ。


 効率的にゴブリンの王になる術を、ゴブリン共を狂信的に従わせる手段を、効率的に彼らを増やす方法を。


 そして、いつしか――何度世界が滅びたかも忘れるほどに繰り返した時に気付いた。

 歴代のゴブリンの王が、殆ど自分であることに。


 もはや、ゴブリンの王という概念に成り果てつつある自分に、気付いた。


 個人というものが消え失せた頃に、やっと準備が完了したと理解した。


 あとは実行するだけだ。




 ――倒さなければならない。


 何を?


 ――もう、忘れた。


 だから、この世の全てを滅ぼせば良い。

 そうすれば、倒せるはずだ。


 もう理由など覚えていないが、それを成し遂げなければいけないことだけは覚えている。


 もう決して繰り返さないように、全てを終わらせよう。


 あの白い場所――世界樹を破壊すれば、きっと全てを終わらせられるはずだ。




 肉の一欠片、血の一滴まで……何も残さずに。





毎度ご高覧頂き、誠にありがとうございます。

過去話はこれにて終了となります。


概ねの世界観と、敵がどんな存在かは説明できたかなと思っています。



これでやっと次話からは、令嬢と魔王の話に戻ります。

最終局面をお楽しみに!

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