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14 釣りと出会い

目標まであと1話です。

 ホブゴブリン討伐を達成してから一週間ほど経ち、あれから新たに7つの依頼を達成した。

 次に受ける依頼を達成すると昇格試験を受けることができ、合格すれば晴れてEランクとなれる。




 しかし、俺たちは依頼を受けれないでいた。



「申し訳ありません。私たちの不手際です。」

「いえ、アイシャさん達は悪くありませんよ。依頼を独占するパーティーが悪いんです。」


 通常であれば、ギルドの常設依頼があるため、依頼が枯渇することはないのだが、今回に限ってそれすらも無くなっていた。

 どうやら漆黒の翼だとかふざけたパーティーが全ての依頼を受注してしまったようだ。

 

「さて、今日はどーしよーかな~?」

「…はぁ、これで依頼を受けれないの3日目ですよ?お金はまだまだ余裕がありますが、流石に見過ごせません。」

「まぁ、そーゆーときもあるって。明日の朝一番にギルドに行けば依頼もあるよきっと。」

「……レヴィはバカなので覚えてないかもしれませんが、昨日もそう言って当日寝坊したのは誰でしたっけ。」

「うぐっ………ひゅーひゅーー、」

「……はぁ、本当に疲れます。」

「まぁまぁ、依頼はなくても素材を売れるみたいだし、また狩りにでも出掛けようよ。」

「……その素材すらも消えたなどと訳の分からないことを言ってなくしたのは誰ですか。」

「…………知らん。」

「あなたのことです!」

「ひゅー、ひゅー」

「吹けもしない口笛なんかしないでください。で、またアルフの森に向かうんですか?」

「うん、ちょっとやりたいことがあるからね」

「全く…わかりました。行きましょう。」




 俺達はアルフの森の中程にある湖に向かっていた。

 そこは2日前に見つけた場所で、見張らしもよく、中々気にいっている。



「とうちゃーく」

「……のんきですねぇ。」

「さて、ではここで勝負をしたいと思います!」

「……また突然ですね、勝負ですか?」

「そう、勝負だ!どちらが大きい魚を捕まえれるかのな!」

「……まぁいいでしょう」

「罰ゲームは、負けた方が今日の晩飯奢りで!」

「奢りもなにも、私たちのお金は共同のものですよ?」

「こらそこっ!いちいち突っ込まない!こういうのは雰囲気を楽しむの!」

「はぁ、わかりました。方法は統一するんですか?」

「何をしてもオッケー!」

「了解しました。では、始めましょう」

「おぅ!俺は向こうの岩場でやってくる!」

「そんなにはしゃがなくても。この辺りの魔物は弱いとはいえ、十分に気をつけて下さいね」

「おう、フレイもな」

「…はい。気を付けます。」

「?やたら素直だな」

「気にしないでください。では、始めましょうか」




 俺は岩場まで行き、フレイから見えない位置まできたことを確認すると、早速覚えたての固有魔法を使った。


「魔力探知を使って、反応があればアルゴの糸で作った釣竿を垂らすだけ!簡単だな~」



 魔力探知はクリーパーと呼ばれるBランクの大型蝙蝠から、アルゴゥの糸はCランクの蜘蛛型魔物からそれぞれ吸収したものだ。

 魔力探知は言うまでもないが、アルゴゥの糸はガルムの炎並みに使い勝手がよく、糸は最大200メル(メートル)まで伸ばすことができ、その強靭な糸はボアウルフを引っ張っても千切れないほど。どれ程かというと、フレイが割りと本気で斬れば断ち切れるくらいだ。

(これでは斬ることのできるフレイを褒めてるみたいだな。)

 この糸は強靭なだけでなく、魔力の質を少し変えるだけで粘性がでたり、ピアノ線のように硬質化することが出来るのだ。罠に最適である。

 ちなみに糸は指先からシュルシュル出てくる。どこかシュールだ。某蜘蛛男のように手首からは出ないのであしからず。


 今回釣りに使うため、粘性と剛性を合わせた強度に設定してある。



「まっずっはっ♪餌をくくりつけて~」

「後は垂らすだけ~♪」


 釣りは釣れなくても楽しいし、何時間でも出来そうな気がする。



「お、早速反応がきた!」


 しかし、いっこうに竿がしなる気配はない。

(バレたか?)

引き揚げてみると、見事にエサが無くなっていた。






よく考えたら針つけるのを忘れていた。







「今度こそよーし。」


 俺は固そうな岩を更に固めて作った釣り針を先端に取り付け、改めてエサをくくりつけて投げ飛ばした。

 ちなみにエサはバッタのようなものだ。


「お、食いついた!」

「んん、そこそこ重いな。……せーのっ!」


 釣れたのは手のひら2枚分の鮮やかな黄色い魚だった。


「食えるのかな?まぁ、これで泳がせしてみるか。」


 泳がせ釣りとは、生きた魚をエサにして大型の魚を狙う方法である。今回は背中に針を通して釣りをすることにした。




 しかし、あたりは一向に来ない


(んー、だめかなぁ。)


 一時間ほどたち、諦めかけていたが、魔力探知に一際大きな反応が現れた。



「っ!大物!絶対逃がさねぇ!」


 俺はアルゴゥの糸を追加してエサの周辺に2メルほどの長さのものを投げ入れた。

 実はこのアルゴの糸。繋がっていなくてもある程度遠隔操作出来るのだ。

(これで、魚が暴れてもしっかり縛ることができるし完璧だな!)


「よーしよし、そのまま近づいてこい。そーだそーだ。エサは目のまにあるぞ~、食いつけ!ほら!」


 少し危ない人になっていたが真剣である。


「お、おぉぉ?」


 すると竿に反応が。


「きたっ!」


 俺はすかさずアルゴゥの糸を遠隔操作。粘性を最大限に上げ、勘で獲物がいる辺りをやみくもに動かす。

 上手く捕まえることが出来たのか、竿は強烈なしなりを見せた。


「よしっ!今だ!!」


 俺は全力で竿を引き上げた。


「うぉぉぉっ!やばい、持っていかれる!!」


 まるで獣人族(ワービースト)の力が如く、強烈な引きをみせる大物だ。


「くそっ負けねぇぞ!」


 俺は足元の岩を操作して変形し、体を固定させる。


「もう少しっっ!うぉりゃーー!!!」


 水面に美しい水色に輝く、大きな影が見えてくる。大きさは俺と大差ないほどだ。


「でけぇ!絶対釣り上げてやる!!」




 激しい格闘の末、釣り上げたものは透き通るような水色の髪をした女の子(・・・)だった。




「へ?」





「うぅぅ、酷いです。レミにこんなことをする人族(ヒューマン)はやっぱり残酷なのですっレミをどうするつもりですか!売るんですかっ!それとも食べちゃうんですかっ!ひぃぃぃっレミは美味しくありません!!」

「…………その、」


 がんじがらめになりながら、未だに魚を掴んで離そうとしない女の子は、下半身が魚の所謂、人魚だった。

 怯えながらもまるでこの魚は私のものですっ!とばかりに離さない。


「………なんかごめん。」

「ふぇ?謝られた??ふふん、何で謝られたのかは分かりませんが、レミは寛大なので赦してあげます!」


 アルゴゥの糸をほどいてあげながら謝ると、レミは無い胸を反らしながら偉そうにしている。



「レミにこの美味しそうなお魚をください!赦してあげるので当然です!ところで、あなたは誰です?」

「…はぁ。俺はレヴィ、ただのレヴィだよ。魚は……まぁ、迷惑料がわりだな。やるよ。」

「やったのです!今晩は久しぶりのご飯なのです!!」


 レミは大喜びではしゃいでいる。が、陸に揚げられた魚の様で、かわいそうになってきた。


(あー、忘れてた。そろそろ時間じゃん。)



 フレイとの釣り勝負はそろそろ終わりである。このまま釣果ゼロだとバカにされるのがみえている。


(仕方がない。事情を説明して、中止にしてもらうか。)


「レミちょっと頼みたいことがあるんだけど。」

「なんですー?」

「あのな…………」





「フレイー、調子はどうだー」

「戻ってきたんですね。レヴィ、こちらは順調ですよ」


 フレイに近づいていくと、蔦で作られた篭の中に大量の魚が。しかも既に血抜きまでしてある。

 中には、俺が泳がせていた魚よりも大きいものまで。


 (………普通に負けてたな。)


「どうしたんですか?ぼーっとして。手ぶらに見えますが、まさかあれだけ息巻いて行ったのに釣果ゼロとは言いませんよね?」

「そのことなんだけ「呼ばれて飛び出てレミさんじょー!」まだ呼んでねーよ!!」


 まだ呼んでもいないのに、水面からレミが跳び跳ねた。

 打ち合わせでは、呼んでから出てきてもらうはずだったのだが……


「…………この子は?見たところ人魚族(マーメイド)のようですが…それにしても珍しいですね、人里近くに稀少な獣人族(ワービースト)である彼女がいるなんて。」

「この子釣り上げた。」

「………今なんと?」

「だからこの子釣り上げた。」

「あの警戒心の高い人魚族(マーメイド)を釣り上げた!?」

「なになにー?レミの話をしてるのー?まーぜーてっ♪」

「お前は少し黙っててくれ」

「まさか。いえ、どうやらそのようですね。利発な種族でもバカは………」


 フレイは同情するかのような視線をレミと俺に向けてきた。


「ちょっとまて、なんで俺まで見つめてくる。おい、………こら無視すんな!」

「ところでレミさん?初めまして。私はフレイと申します。」

「フレイ?フレイ!レミはレミだよ~。よろしくっ!」

「で、レヴィはどうするおつもりですか?」

「どうするって、どうもしないけど?」

「わぁぁぁ~、お魚がたくさん!食べていいー?」


 まだ返事をしていないのに魚を掴んで食べ始めた。なかなかどうして、器用に身だけを食べている。案外上品なようだ。バカっぽいのに。



「はぁ、仕方がありません。それらは差し上げます。で、レヴィ。釣り上げた(・・・・・)とおっしゃいましたが、詳しく聞きましょうか。」

「えっと、実は……」





「…………なるほど。レミがバカだということがわかりました。」

「もぐもぐっ、うぇうぃをふぁかにしてふなー」

「わかったから食べながら話すな。」

「…はぁ、そういうことでしたら仕方がありません。今回の勝負はお預けということですね。」

「おう、なんか悪いな。」

「おきにならさずに。私が勝っていたことはほぼ確実の様ですし、些細な勝負に熱くなるほど子どもではありませんから。」

「ありが………ちょっとまて、それは俺が子どもだと言いたいのか?」

「さて、帰るとしますか。」

「おい、無視すんな」


 フレイは手早く道具を片付けはじめていた。

するとレミが………


「えぇー、帰っちゃうのー。」


捨てられた仔犬のような目で見つめてくる!


「はい、さようなら。レミさん」


だが、フレイには効果がないようだ!


「うぅーー。あ!レミもついていく!」

「お前なぁ……知らない人についていくなと教わらなかったのか…」

「?レヴィとフレイは友達だよ??それにお魚くれた人に悪い人はいないもん!」


 どうやら友達認定されていたらしい。



「はぁ、わかりましたよ。ついてこれるなら勝手にしてください。ところで、どうやって湖から出るおつもりですか?まさか、私たちにおぶっていけなどと言うつもりではありませんよね?」

「へっへーん。」


 レミは無い胸を反らす。


「レミは変身できるもーん♪」


 レミの下半身が淡く光ったかと思えば、そこには驚いたことに2本の足が生えていた。


「「…………」」


パンツ穿いてなかったけど。





「らーんらーんらんっ♪おっそっとっ♪おっそっと~♪」

(はぁ、この子どうしよ。)


 レミはご機嫌なのか、鼻唄を歌いながらついてくる。無駄に美声なのが腹立つけど。


「ところでレミ。その変身は解けないのか?」

「ふんふーん~…んー?解けないよ~」

「そういうものなのか?」

「光の上級魔法の変身は常に魔力を消費しますが、レミの使った魔法はどうやら固有魔法のようでして、こちらは一度変身してしまえば魔力を使うことはありません。」

「なにそれ万能じゃん。」

「そこそこです。種族的に近しいのモノや簡単なモノでしたら変身することは出来ますが、例えば龍種など、明らかに違うモノには変身することが出来ませんから」

「ふーん。そんなものなのか。」

「はい、そんなものです。」






 俺達は宿まで戻ることにした。途中、ギルドに寄って依頼を探したが、相変わらず依頼は無かった。


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