1 神原充希
初投稿です。
連載小説として、続けていきたいと考えています。
誤字、脱字、矛盾等があればご指摘よろしくお願いいたします。
薄暗い部屋の中、キーボードをやみくもに叩く音が響いている。
「っだぁーー、くそ!なんであんなとこでいもってんだよ!」
デスクに表示されたYou are deadの文字を見ながら枕を壁に投げつけた。
「くそ、あと一勝なんだよっ」
俺が今やっているゲームは100人でバトルロワイヤルをするFPSだ、ちなみに数時間前には別のMMORPGをしていた。
「はぁ、このまま勝てなかったら降格かぁ」
このゲームでは、1ヶ月毎に勝利数に応じたランキング制度がある。
俺は常にランキング100位圏内を守ってきたが、最近全くと言っていいほど勝てていない。
「次だ!次こそ勝つ!」
俺は気合いを入れ直してenterキーを叩いた。
「にしても、毎回配置悪いよな俺。なんでど真ん中なんだよ、四面楚歌じゃねーか」
(まぁその方がキル数稼げるしありっちゃありなんだけどなー)
指の体操をしつつ、戦略を練っていたがいつまでたっても開始画面に移行しない。人がいねーのか?と思いながらスマホで時間を確認すると、アナログ式の時計に設定してある画面は日付が変わって月曜日の午前3時58分を指していた。
「あ、やべ」
今日1日pcのゲームをしていたため、スマホのゲームアプリをログインすることを忘れていた。
「あー、連続ログイン記録途絶えるかも。」
落胆しながら、最近お気に入りのカードゲームを開こうとする。ちなみに、スマホを買い換えた際に、以前使っていたスマホをゲーム用として使うことにしたのだ。
ふっ、これのおかげで効率よく周回することができる。
しかし、いつまでたっても初期画面から移行しない。
(んん?こっちもロードが進まないんだけど?)
流石におかしいと思い、俺はWi-Fiのルーターを再起動しようと立ち上がった
「はぁ、めんどくせー」
ルーターの配置変えようかなぁと考えながらテレビ裏をみると、ランプが消えていた。
「………」
線が抜けてる。あ、枕が落ちてる。
「さっき投げた枕で線が抜けたのか。ついてねーわー。」
この時点で1分以上過ぎている。ログイんするのにかかる時間は大体30秒くらい。無理だこれ。
半ばログインを諦めながらWi-Fiの電源をONにした。再起動、すぐおわんねーかなぁ。
~五分後~
「いや、まてよ。流石にかかり過ぎだろ!」
俺は軽くイラつきながらルーターをみつめていたが、起動する気配がない。え、もしかして壊れたの!?このタイミングで!?
「まじかよ。明日ってか今日でFPSのランキング決まるんだけど!?」
流石に焦りながらルーターの電源ボタンをカチカチと連打してみた。
いや、これ無理だわ。
「はぁ。」
俺は思わずため息をつきながらベットに寝転がった。
「Wi-Fi使えないとなると、ゲーム出来ねーな。どーしよ。なにしよ。」
唸りながら暇をもて余していると隣の部屋から川の清流にいるかのような音が聞こえてきた。
「あぁ、親父か。てか、このアラーム絶対眠くなるだろ。なんで起きれるんだよ。」
この時間に親父は仕事に行く。そう、仕事だ。親父が仕事にいってから暫くして母も起きる。もちろん仕事のためだ。
俺は四人兄弟の次男として生まれてきた。現在24歳だ。兄は二つしか年が変わらないが結婚し、子どもも出来ている。今あの子は一歳だ。
下には妹と弟がいて、二人とも高校生活を満喫している。年は17、二卵性の双子というやつだ。全く似てないけど。
俺はというもの、合気道をしていた兄を追いかけて、小1から大学まで合気道を続けてきた。そして、大学4回生になってから就活が始まった。
合気道で全国優勝したこともあり、色々な企業さんから声をかけてもらっていた。
けど、俺の今の状況をみてわかる通り、今はニートというやつだ。
バイトをするにも長続きせず、結局やめて一年がたつ。
そろそろ金が尽きてきたし、バイト探さなきゃなぁ。めんどくせ。
だめだ、金のこと考えたら気が滅入る。
「はぁ、タバコでも買いに行くか。」
気分転換にコンビニへ向かうとしよう。時刻をみると、5時を過ぎていた。
「うぅ、さむっ」
さすがに1月の朝方は冷え込むな。
帰ってからなにしようか。んー、たまっているWeb小説でも読むか?
「ひいっやめてください!」
ん?空耳?微かに何か聞こえたような。
気がつくとコンビニの駐車場だった。すぐ近くにあるってほんと便利だな。
呑気なことを考えながら店内をみるとなにやらナイフを持った覆面男が店員にナイフを突きつけていた。
「………なにこの状況。」
えー、どうしよ。助けるべきだよね。お、店員2がカラーボールを投げつけた!ん?それって今なの??
てか、避けられてるし。え、まってその至近距離で避けるのかよ!5メートルないぞ!
「がぁっっ。」
今のは折れたな。
絶対なにかしら武術かじってるじゃん体格といい。
あ、呑気に観戦してたけど、これ監視カメラ写ってるじゃん。あとで警察来たときめんどうじゃん。
「あー、めんどくせーなぁほんと。」
しかたがない、応戦するか。と、自動ドアの前まできてみた。あらためて店の状況を確認する
店員1はありゃ動けないな。そこまでする必要あるか?覆面さんよ。
店員2は腰抜けちゃってるし。まぁ女の子だから仕方ないか。いや、でももー少しなんか出来るだろ。
「てか、こっちに気づかないのかよ。まぁそんなもんか。」
「いらっしゃいませ」
と機械的な音声と共に軽快な音楽が鳴り響く。
「っっ!くそっ!!」
ようやくこちらに気がついた覆面は、のしかかっていた店員1から飛び上がり、ナイフを逆手に迫ってくる。
「くそがぁー!そこをどきやがれっ!!」
俺は慌てることなく突きだされたその右手を軽くいなし、腕をつかんで捻るとナイフが落ちた。
「っっ!てめぇ!」
「なんだよ、文句あんのか?」
俺は男を組伏せようと左足で覆面の右膝裏を蹴った。
「くそ、やられるか!」
覆面の左腕から裏拳がおれの顔に迫る。
「まじかっ」
まさか反撃されると思っていなかったため、思わず掴んでいた腕を離してしまった。その隙に男は店から飛び出た。
「くそ、逃がすか!」
なーんて叫んでみたけど、追いかけるのめんどくせー。行くべき?行くべきなの?
よし、諦めよう。
「あ、あの!」
「ん?」
「その、ありがとうございました。」
迷っていると、店員2が強ばった声色でお礼を言ってきた。ネームプレートが研修中になっている。若いし大学1年生かな?
「んぁ、気にしないで下さい。それよりそちらの…佐藤さん?大丈夫ですか?」
俺より少し若そうな店員1は佐藤いうらしい。
「うぅ、足が」
「はっ、救急車呼ばないと!それに警察も!」
思い出したように、あわてて電話をとる女の子
「とりあえず、応急処置しますね。なにか縛れるものと段ボールあります?」
「あ、少し待ってください!」
「うぅ、すみません。」
ぱっとみの外傷は左足の骨折だけみたいだ。膝が逆に曲がってるけど。
にしても、あの覆面ほんとやりすぎだよね?
「ふぅ、軽く固定したけど、これ治るの結構時間かかると思うよ」
「はい。ありがとうございます。」
佐藤さんは苦しい表情で礼を言ってきた。
「にしても、カラーボール。これおとせんの?。」
現状、床や商品棚などに鮮やかなオレンジ色が飛び散っている。これ靴に絶対ついてるよな?
靴はともかく、ズボンについてたらめんどくさいな。と思い足元をみるとなにやら落ちている。
「?」
手にしてみるとそれは銀色のリングに青い宝石?かなんかが散りばめられた指輪だった。
「なんだこれ?」
よくみると精巧に作られていることがわかる。不思議に思い辺りを見直すとちぎれたチェーンが落ちている。
「ネックレス?なのか?」
(いや、チェーンは安物だな。指輪と合って無さすぎる。)
(にしても、どこかで見た気がするんだけど……どこだっけ?)
んー、とりあえずレジの前に置いとこう。俺のじゃないし。
すると、少し表情が柔らかくなっている女の子が戻ってきた。
「連絡終わりました!えーっと…」
「あ、神原と言います。」
「神原さん!改めて、ありがとうございました!あ、私は早見と申します。」
「いえいえ、ところで早見さん。俺って帰っちゃだめだよね?」
「えぇ!っでも…ちょっと待ってください!」
冗談で聞いてみたが、まさか即答しないとは。だめだろ。あわててマニュアル読んでるけど。
「すいません。規則で警察くるまで残ってもらわないといけないみたいです。ごめんなさい。」
早見さんは申し訳なさそうな表情で言ってきた。
「いや、わかってたことですから笑」
「えぇ、じゃあなんできいたんですか!」
「はははは、っと、なにか暖めれるものありますか?コートとか毛布とか」
「あ、あります!」
ドタバタしながら持ってきたものは膝掛け用の毛布だった。
「これをかぶせてっと」
もらった毛布を苦しそうな佐藤さんの肩にかぶせる。顔色わるいし、シャツも胸元が破けちゃってるから、暖めなきゃね。
「よし、あとは待つだけですね。」
「はい!」
思わず引いてしまうくらい元気な返事をもらった。
暫くして救急車と警察がやってきて、事情聴取が終わった頃には7時になっていた。
「はぁ、なんか一気に疲れたなぁ、あっ!タバコ買うの忘れてた!」
予想外の出来事に巻き込まれてしまい、完璧に目的を忘れてたよ。
んー、戻ろうかな。でももう家の前なんだけど。
「なにしてんだか。」
俺は静かに玄関を開けて中の様子をさぐる。
物音1つしない。まだ起きてないみたいだ。
俺はそーっと階段を上る。と、2階からカタンと音がなりトテトテ音が聞こえてきた。
「にゃーん」
「なんだ、クロか。驚かすなよ。」
少しびっくりしたが、ペットのクロだった。
「なんだ、ご飯か?もう少ししたら母さんが起きるからそれまで待っとけ。」
抱き上げてわしわしする。癒される。
「俺は寝るとするよ。くるか?」
「にゃーん」
「なに言ってるかわからんよ笑」
俺はクロをそっと下ろし、部屋に入った。
「あー、そういえばゲーム。どうしようか。」
すっかり忘れていたが、今日の予定が狂ってしまったんだった。Web小説……気分じゃないな。
「とりあえず、ねるか。」
俺はベッドに静かに入り、そのまま目を閉じた。
「んん、今何時だ?」
唐突に目覚めたが、時刻はまだ午前10時。
起きるの早くね?
戸惑いながら改めて寝ようと寝返りをうつと微かに揺れを感じる。
「っと、地震か?それで起きたのか。俺。」
「にしても結構ゆれてるなー、3、いや4くらい?」
久々の揺れを感じながら適当に言ってみた。
「そうだ、なんか情報ないかな?」
俺はネットニュースを見ようとスマホを取り出した。
(あれ?電源落ちてる?)
昨日充電してなかったっけ?まぁいっか。後で調べよう。
「んー、避難。するほどでもないしな。寝よっと。」
俺は二度寝することを決意した。
改めて、俺の名は神原充希。現在ニートをしていて完璧な昼夜逆転生活を送っている。
人生、やりたいことも目標もなく、日々だらだらと過ごしている友達は多かったが、親友と呼べる者はいない。最高の親友だったやつ高校生の頃に行方不明となった。
そこから、俺の人生は変わってしまった。親友でありライバルでもあった友が居なくなってしまったと知ったとき、俺の中で何かが壊れた。何をするにもやる気が起きなくなっていったのだ。
あいつには助けられてばかりだった。小学4年生の頃、交通事故で1ヶ月ほど生死をさ迷った時もいつも見舞いに来てくれていたらしい。まだまだ返せていない恩があるのに、あいつはどこにいってしまったんだ。
あのときに両親は俺の扱いで揉めたらしい。詳しくは教えてくれなかったが、今でも二人は顔を合わせることが全くない。夫婦間は冷々だ。俺のやる気には負けるだろうけど。
わかっている。このままではいけないことくらい。でも自分でもどうしようもない。どうすればいいかもわからない。
俺はあの日を境に立ち止まってしまっていた。
ふと目が覚め、時間を確認する。時刻は午後3時。
「んんーーー、はぁ、なんか眠りが浅い気がする。」
もう一度寝ようと試みたが眠れる気配はない。
(眠れねぇ。)
「あ、地震どーなったんだ?」
気になってきたし起きることにしてニュースを探したが、それらしいものは無かった
あれ?夢だったのか?揺れてたよな??
まぁいっか、腹へったし何かつまむとするか。
俺はベッドから降りて伸びをした。
「っとと。」
不意に立ちくらみが起きて、転けそうになるが、そこは俺。体勢を立て直して部屋を出る。
「なんか食い物あるかなぁ。いや、ないに一票」
独り言を言いながら階段を降りる。しかし、足元がおぼつかず、力が入らない。
「んん?風邪でも引いたか?」
薬どこにあったっけ?
リビングに入るとクロが寄ってきた。
「ごはんかー?」
とりあえず、クロの餌を入れようとしたが、なんだか目眩もしてきた。
「いたたた。」
おまけに頭痛もする。だめだ、調子がよくない。
とりあえず横になろうとソファーに向かうが、途中バランスを崩し倒れてしまった。
(さすがにやべーな。)
起き上がろうとしたが、体が重く指先すら動かすことができない。あ、これ、詰んだわ。
妹達が帰ってくるのは六時過ぎ。親父もそれくらい。母さんはもっと遅い。
(だめだ、なんだか眠くなってきた。)
猛烈に遅いかかってくる睡魔に抗おうとしたが、全く歯がたたない。
(く……そ…………)
薄れ行く意識のかなクロの必死そうな鳴き声を聞いた気がした。
読んでくださってありがとうございます。
面白いと言われる作品を目指して引き続き頑張ります。