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第4話

ほぼ全容を現しかけた機体からは蒸気があがり、そこから発せられる熱気で室内の温度が急上昇していた。だがおかしなことに、機体の状態を示すメーターの値は正常値を保ったままで、どこも高温だとは示していない。室内の温度センサーと空気センサーが室内の異常を感知し、自動抑制装置を起動させる音がする。

救急隊とレスキューはこちらにもう向かっているはずだ。彼らの到着までに自分たちが何をすべきかと必死に探し、2人はそれぞれに搭乗者の無事を祈っていた。


4時12分。この時、レスターは時計を見たので、彼はそれをはっきりと覚えている。

小枝が折れるような乾いた音が連続的に鳴り響き、と思うと、地響きのような振動とともに青白い鈍い光が部屋を一瞬にして包んだ。それまで何度か天井の蛍光板式照明がちらついていたが、そのとき、瞬時にして停電になった。同時に、突風に似た空圧に吹き飛ばされた二人は、それぞれ違う方向に尻餅をついて床にあおむけに倒れた。運良くそのおかげで、彼らは機体から大量に発散された、焼けるほどの蒸気に体をあてられずに済んだらしい。

何が起こったのかよくわからなかったが、彼らはお互いに呼び会って無事を確認した。

頭の上で鳴り響く警報と空気・気温制御センサーが作動する音を聞き、視界をふさぐ蒸気と煙を体内に入れないよう、2人はただ必死に、部屋上空に漂う熱い空気から自分たちの身を低くして守り続けた。

機体の不気味な青白い閃光はいつまでも明るく室内を照らし、彼らはいつまでも立ち上がることができずにいた。レスターは宗教を軽視していてお祈りなどしたことがないが、とっさに思いつく神々の名前を全てつぶやき、死ぬ思いで祈り続けた。


どれぐらいの時間が過ぎたのかはわからない。

肌に触れる温度が低くなりはじめ、隣室から様子をうかがうレスキュー隊のメンバーを確認できるまでの視界になってやっと、レスターはこれで自分たちも救出されるのだと知った。というよりも、そのときまでには、耐熱・防護服を着た数人のレスキュー隊員が床にしがみつくように這いつくばった二人を見つけ出しており、特殊な搬送用バッグを用意してくれていた。

まさか、マーシャ救出のために呼んだ隊員たちに自分が救出されるとは・・・。

自分の体が複数の手で持ち上げられ、その先に、切削機などの大掛かりな装置を持って部屋へ入ってくる他の隊員たちを見たレスターは、思わず、十字を切った。

煙と熱風でぼろぼろになっていた彼ら2人はようやく、安全な室外へと救出された。そのときには、機体内に閉じ込められている彼女の救出活動も始まっていたはずだ。しかし、あの酷い有様の事故機の中で彼女が無事で生還しているとは、とても思えなかった。彼の人生の中で始めて味わった予想を超えた移動器機の事故だった。機器に異常を示す前兆もなく、不可解極まりない事故。


一体、何が起こったんだ・・・?

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