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第20話

 二日後の朝9時過ぎ、ホテルのベッドに寝ていたレスターは突然の電話で起こされた。その日は調査活動も休みである土曜で、彼は昼近くまで眠っていられるはずだった。

「フレッドマン?」

 低音のよく響く声がレスターの名を呼んだ。その第一声で、電話をかけてきた相手がケンジントン・テックの事務局長だと認識できる。

「はい」

 レスターは頭上に振り返り、寝ぼけ眼で時計を見た。午前9時7分。

「・・・・・・どうしたんですか、事務局長?」

「休みのところを悪いね。緊急の件があってね」

「ええ」

 電話の表示をふと見ると、テック・事務局となっていた。

 休日出勤してんのか。

 彼は欠伸をかみ殺しながらベッドから半身を起こした。彼の部屋は全体が遮光されていて、真っ暗だ。

「今、テックからかけてるんですね?」

「ああ、そうだ」

 電話の向こうで、事務局長が何か言うのをためらっているような間が続いた。

 レスターはベッド脇のタッチボタンを押し、窓の遮光モードを解除した。部屋の窓は灰色からアイボリーに段々と色を変え、次に半透明となり、最後に透明になった。彼の六角形の部屋に明るい朝日が窓越しに差し込んできて、彼は目を細めた。

「何か・・・・・・あったんですね?」

「フレッドマン。今日、学院まで来てもらいたんだができるか?」

「今日、ですか。何かお話でも?」

 レスターがさぐるように尋ねると、まあな、と曖昧な言葉が返ってきた。

「午前なら行けると思います」

 レスターがそう続けると、電話の向こう側から安心したような吐息が聞こえた。そしてその直後、やや固くなった事務局長の声がレスターにかけられた。

「マーシャ・オブライエンの家族が、君たちと学院を相手取って提訴した」

 レスターは病院で出会った彼女の兄が食ってかかるような態度だったのを思い出し、はっとした。

「提訴って、例の事故の件で?」

「そうだ。あの事故のことで、ロバートソン教授と君、学院を訴えたんだ。昨夜、正式な訴状が届いた」


 ついに、動いたか。

 彼は事故の当日から漠然と想像していた裁判沙汰が自分の身の上にふりかかるのを、夢の中での出来事のように感じていた。

「教授には別途で連絡を入れるつもりではいるが、君とは直接話したい。詳しいことはこちらで話すから、オフィスまで来てくれるか?」

「ええ。もちろん伺います」

 体調を崩して自宅で療養生活を送っているロバートソン教授を思い、レスターは神妙に返答した。

「管理室には君が来ることを伝えておく。テックに入る際には正門でなく、南ゲートから入ってくれ、フレッドマン。正面口には、報道陣が押し寄せてる」

「わかりました」


 彼との応答を遮断する直前にレスターはベッドから飛び降りた。電話を切り、クローゼットに向かいがてら、部屋のテレビをつける。テレビは報道専門のチャンネルに設定されている。

 報道陣が押し寄せてる、だって?

 レスターがクローゼット内の服をあれこれと探している間に、部屋のスクリーンに今日のニュースが羅列されていった。

 “ケンジントン・テック前です”

 女性レポーターの声が耳に飛び込んできて、レスターはスクリーンを見た。見慣れた学校の正面玄関が画面に大きく映し出されている。ぴったりと閉じた正門は多数の報道陣を外に閉め出し、フラッシュの光を浴びて白く光っていた。玄関周辺にはその騒ぎで出動したらしい警察車両が二台停まっている。学院関係者は誰ひとりとして、そこには見えない。

 映像であらためて現状を知ったレスターの足が、否応なしに重くなった。シャワーを手早く浴び、用意しておいた服に着替えた彼は、ホテルを出た足でケンジントン・テックに直行した。

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