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灰色猫とちびあるじ

灰色猫は夢を見る

作者: 昼行灯

闇に包まれたここには日の光は射さない。


それでも日が昇るほんのひと時だけ、わずかに光が射しこむ。


するすると温かな腕から抜け出し。わずかな光の中にちょこんと座る。


艶やかな毛並が光を反射して美しく輝いている。


あるじさま。あるじさま。探検の時間です。


わずかな光を掴もうと前足をてしてしと光に叩きつけながら猫が言う。


「気をつけて行っておいで。帰ってきたら探検の話を聞かせておくれ」


にゃあ! とひと鳴きし狭い隙間に潜り込み灰の中を進んで行く。




魔女の使いが現れたぞ!




あるじさま。今日は南の森まで行きました。


「ずいぶん遠くまで探検しに行ったのね。おいで、南の森の話を聞かせて」


とことことことゆっくり歩きあるじさまの前に座る。


あるじさまの手が優しく撫でながら灰を掃ってくれる。




あるじさま。今日の戦利品です。


綺麗なその実をあるじさまの手にぽとりと落とし。


前足をピンと揃えて、尻尾をピンと立てて待つ。


「これは毒が塗りこまれているわね。食べてはダメですよ」


ぺしっ!


置かれたその実を前足で払う。


戦利品の山から外れ灰の中へと落ちる。


「おいで、灰を掃ってあげましょう」


とことことことゆっくり歩きあるじさまの前に座る。


あるじさまの手が優しく撫でながら灰を掃ってくれる。




あるじさま。あるじさま。探検の時間です。


「…………おいで」


あるじさまに優しく撫でられる。


「あなたに真名(まな)を与えます。私に縛られず自由に生きなさい」


あるじさまに名前をつけてもらった。





あるじさま。あるじさま。探検の時間です。


「…………」


あるじさま...


冷たくなったその手をひと舐めし。それを探す。


うず高く積まれた戦利品の山から外れた。灰の中にあるそれを見つけ。


ひと(かじ)りして、あるじの元へ戻る。


冷たくなった手を温めるように丸まり、ねむりにつく。





灰色猫は夢を見る。


あるじさま、あるじさま。


探検に行きましょう。世界中全てを探検しましょう。


飛び跳ねながら催促する猫に、あるじが優しく笑いながら言う。


また灰だらけになって、おいで灰を掃ってあげるから。


大好きなあるじの手が両手を広げて待っている。



ぶるぶるぶるぶる! 全身を震わせ灰を掃う。綺麗な毛並に戻る。


自分で出来るじゃない。あるじが少し怒りながら笑う。


にゃあ! とひと鳴きしあるじの腕に飛び込む。


灰色猫は永遠の夢を見る。


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