第六話:透
カイジ先生から、ジンバ草をうけとる。この草で僕もなんらかの能力があるとわかるんだろうか。前の机で早くもカイトとアヤは、もう葉の上に手のひらを置いている。
「おお、なんか色かわってきたっ!!せんせーこれはなんの能力なんだ?」
カイトは手のひらのかたちに濃い赤で変色した葉を、先生のほうにこれでもかというほどつきだしている。
「なるほど、カイト君は火遁が得意なようですね。それにしても濃い色だ。将来すばらしい火遁の使い手になりそうですね。」
「火遁かー。親父と同じってことだよな。俺にもあれくらいできるようになると。わくわくしてきたぞー」
「せんせっ!私のもみて」
テンションをあげて、火遁っと手を前につきだしてははしゃいでいるカイトの横で私も私もっと今度は、アヤが葉をせんせーに向けてつきだす。僕の方からは、アヤの体で隠れてしまって何色に変色しているかわからない。
「橙色ですか。なるほど、カヤ様と同じ陽遁。兄妹そろって親の血を濃く受け継いだようですね。」
「お母様と同じ・・・習得すれば、けがしても安心・・・」
アヤも自分のジンには納得しているようだ。陽遁か。なんの能力なんだろう。知らない単語が多すぎるな。ぜひとも座学とやらをもっとやってほしい。いつのまにかこの状況にわくわくしている自分がいるらしい。こんなにも気分が高揚しているのは何年ぶりだろう。ただ単に、パニックになっていると捉えることもできると思うが、この感覚は嫌いではないな。
「おー、アヤは陽遁か!かーちゃんと一緒なんだな。おまえに扱えるのか疑問だな。」
「ふん、カイトに火遁は無理。せいぜい、お風呂がかりに重宝されるのがオチだよ。」
「なにっ、俺に火遁は無理。せいぜい、お風呂がかりに重宝されるのがオチだあ??おい、いまなんて言った!もう一回いってみろ!!」
「全部自分で言ってるじゃん」
「二人ともそれくらいにしておきなさい。さて、テン君はどうなりましたか?」
先生は絶妙のタイミングで二人の会話をとめる。会話と聞いてるあたりでは、カイトとアヤは兄妹らしいというのがわかる。よく見てみると、目がどこか似ている。
「そうだ、テンはどうなったんだ?」
「ああ、まだやってないよ」
「なんだよ、まだやってないのか?テンはのろまだなー。」
「テンは何色になるんだろうね」
カイトとアヤは、僕の前にテコテコ歩いてきて両肘を机について葉をじっとみつめている。
「はやくおけよ、テン」
カイトに促されて、ジンバ草に右の手のひらを軽くのせる。手のひらにちょっとした違和感がある。葉と自分の手のひらに薄い層があり、そこにちょこんと手を置いている感覚だ。そろそろ変わってきたころだろうか。自分ではよくわからない。
「テン君、長いことおいてもそこまで変化はありませんよ。もう大丈夫です。どけてみてください。」
そういわれて、手のひらをどける。
「っ!!!!」
カイジ先生は一瞬目を見開く。どうしたのだろうか、自分も葉を見てみる。これは、・・・なんだ。手のひらを置いた部分が色素が抜けたように、透明になっているのだ。机が透けて見えている。
「せんせーこれは何遁になるんだ?透明ってあるのか?」
カイトが僕の疑問だったことを、先生に聞いてくれた。そうだ、先生早くこたえてくれ。
「えぇっと、これは得意なジンがないということを表しています。少し珍しいケースですね。蒼い目一族は、少しばかり特異な人が出るのか。」
「得意なジンがない?それって変じゃないの?」
カイトは素朴な疑問をぶつける。得意なジンがないだと。期待していた分なにか悲しいな。それになんだ、蒼い目一族って。僕のことを言っているのか。目が青いんだろうか。
「得意なジンというか、ジンに色がついていないということで、どの忍術も万遍なく扱えるということですね。普通は、得意な忍術と不得意な忍術ができるものなんですが、この無色という状態のジンはそういうことがないんです。器用貧乏になることが多いですが、極めると凄まじい力を発揮するといいます。壱の里長は、この無色のジンらしいですね。この伍の里にも、ある程度の人数、無色のジンである人がいると聞いています。ですから、そこまで変ではないですよ。」
「ほーん、よくわかんねぇけど、別に変じゃないんだな。よかったな、テン」
カイトは、こちらを見てにかっとする。この屈託ない笑顔というのは、まぶしいな。今の僕には、できそうにない。表情の変化ができているのかも疑問だ。それにしても無色か。器用貧乏とはまた僕に似合っているな。
「ねぇねぇせんせー、これもその無色という人の特徴なの?」
そういうとアヤは、僕の右の手を指で示してくる。なんだというんだ。僕の右手がどうかしたのだろうか。ん?
少しだけ手のひらが緑色になっている。