第五話:教
「我々忍には、ジンという力を利用する術がある。これらは、我々の遠い祖先がひき継いできた知恵であり、生きる道具であり、敵から身をまもり仲間を守る強さである。ジンは一人一人で特性が異なる。君たちが、身長が異なり、目も耳も口も声も何一つ同じところがないのと同じように、ジンもまた少し異なるのである。」
「はいはい、カイジせんせーせんせー」
「ジンには大きくわけて・・・はい、カイト君なんでしょう」
「俺たち下忍はいつになったら、ジンが使えるようになるの?」
「ジンはいつだって使えます。時期とコツを覚えればすぐにでも。」
僕は、青年におんぶされ伍の里という里に入った。里の中は、木でつくられた家屋が立ち並び、山奥の集落という形に見えた。そこで、追いついたカイトとアヤにいくぞと言われ、おとなしくついていくと、黒板と机、いすを野外にだした青空教室があり、あれよあれよというまに、授業が始まった。<ジンの扱い方>という授業らしい。
「じゃ、そのコツってのを早くおしえてくれよー」
「いいえ、それは基礎修練を修めるまでは教えない、つかわせないというのが伍の里での習わしです。それがなぜだかわかりますか?えー・・・では、テン君」
丸い眼鏡をかけ、やわらかい表情でこちらをみつめる先生は、いつでも答えをまってますよという雰囲気である。よりによって、僕なのか。無難にこたえておくか。
「その、・・・ジン?って力をつかいすぎて基礎ができないから」
「・・・、そうですね。それも一つの理由です。」
「おお、さすがテン。俺まったくわからんかった。」
一応当たったようだ。カイトの反応的に、僕は頭がそこそこいいらしい。
「テン君が言ってくれたように、基礎ができていないのでジンに頼るという甘えをさせないというのが一つの理由です。また、ジンの扱いは非常に難しくジンの暴発で、若いうちは身が危険になることがあるため制限されています。」
「へー、ぼうはつねー。俺はしないとおもうけどなー」
「若いうちは、自分の中のジンの存在をうまく把握できませんが、時期がくればジンの存在に気づきうまく扱えるようになります。」
カイジ先生は、言い終えると今まで座っていた椅子から立ち上がった。
「座学だけだと、つまらないと思うので少しだけ実験をしてみますか。ほんの少しだけジンを感じとれる実験です。」
「おおー、こういうところあるからカイジ先生はすきだぜー」
「実験おもしろそうだね。うん。」
「それじゃ、三人とももっと近くよって」
二人が立ち上がって近づいていくので、僕も近づかざるを得ない。それに、少し興味があった。ジンという摩訶不思議なものが少しでも感じ取れるとは、ありがたいことじゃないか。
「はい、これが何かわかるかい。アヤ君」
「うーん、わかんない。ただの葉っぱ。」
「そう、葉っぱだ。だが、ただのじゃない。私が、ジーフ山で君たちのためにとってきた、ジンバ草とよばれる植物だ。」
カイジ先生は、僕たちにみえるようにホウレンソウの葉のようなものを机の上にドンと置く。
「このジンバ草は、ふれたもののジンによって色が変化するんだ。みててごらん。」
カイジ先生は、たくさんある葉の中から一枚はぎとり自分の手のひらをのせる。すると、葉の手に触れている部分がすこしずつ青色になっていく。
「これは、私が水遁系が得意であることを示しているんだ。実際に、私は水遁系の忍術を得意としている。」
「おおー、すげぇ!手の形にくっきり青いよ!おもしれえ、俺もやる」
「あー、あたしもやるー」
そういって、二人は葉をビリビリと力いっぱいひきちぎっていき、自分の席へもってかえる。
「はい、テン君も」
ニコッと笑いながら、茎の部分をもった先生に葉をわたされる。