第十七話:交渉
~中忍の儀 一日目夕方~
「火遁、驚炎!!」
どうぉぉぉぉおおん
「!!!」
カイトが投げた爆薬がイノシシの目の前で爆発する。
すると驚いたイノシシは方向を変えて少し変えてアヤがいる方向へ走り出す。
「ほら、こっちへおいで」
爆薬に驚き、怒ったイノシシは暴れ狂うように前へ前え地面を蹴る。
蹴る。
蹴る。
ずるっ
どしぃぃぃん
こける。
よしうまくいった。
「……草結びの術」
「さすがテンだなぁ。まんまと引っ掛かりやがったぜこいつ。」
草に引っかかったイノシシは抜け出せずにもがき苦しんでいる。
「少し土遁で強化してみたんだ。より強い草結びの術だ。」
「そんなことはいいからよ、こいつの肉さばかないのか?」
「そんなことって…はぁ、うん。肉さばき頼むよ。」
「わかったが、なんでお前がやらないんだよ。」
「いや、僕にはやることがある。」
「やること?」
「そう、そろそろくると思うんだが……調べてみるか…」
「土遁、土聞!」
印を結び、地面に手をつける。
(足元が数歩近づいてくる。まだまだ甘いな。タツ兄の忍び足に比べれば天と地の差がある。これはどこの里だ?…)
「アヤ、僕からみて右手の方向に煙玉をなげてくれるかい?」
「ん?なんで?ま、いいか。わかった」
「そうだな、あの大きな樹があるあたり」
「りょう、かいっ!」
アヤは煙玉に火をつけると思いっきり振りかぶり投げ込んだ。
よい投球フォームだ。
ぼんっ
大きな音をたて煙玉が燃え、モクモクと煙をはきだしはじめる。煙が大樹を取り囲むくらいになったとき突然、煙が勢いよく僕たちの方向へ流れてきた。
「なんだなんだ?」
カイトがイノシシを解体し終わったのか手を草でふきながらやってくる。
「あれはおそらく、風遁の一種だな。」
「風遁?」
「あぁ、そろそろ……きた」
煙の中から5人の忍び装束を来た男たちが現れる。
「とんだご挨拶だなおい。びびったぜ。あぁ?」
5人のうちの一人がけんか腰に声をかけてくる。
「あぁ、悪い悪い。変なネズミがいるなと思ってね。参の里に皆さんでしたか。」
「んだとこらぁ!」
「落ち着けトラ、まぁまて。さて…貴様よく我らがいるとわかったな。」
「お前らなのかは、わからなかったがどこかの里はくるだろうなと思っていたよ。情報がほしいんだろ?」
「ほう、伍の里のやつにしては頭が切れるじゃないか。」
「そりゃどうも。」
「なら話が早い、情報を教えてもらおうか?」
「「断る!!」」
テンが答える前にカイトとアヤが先に答えてしまった。
「なんで俺らが教えてやらなきゃいけねえんだよ!これはハンデだハンデ。」
「そう、ハンデ。」
「では、我ら参の里に教えないというのか。伍の里の分際で。」
「里とか関係ないだろ!」
「落ち着け、カイト。」
「でも、」
「参の里の者よ、交換条件で教えてやらんこともない。」
「交換条件?」
(おそらく、こういう交渉も中忍の儀のうちの範囲内なんだろうな。情報を少数の里のみに教える。その情報をとりあう。ハンデ云々は後付けであろう。もし聞いていなくても、聞いた里の行動を観察することにより魔物を倒さねばならないはずだ。その分、僕たち伍の里は有利に動ける。)
「条件は、捌の里の聞いた情報提供あるいは寝床の提供だ。」
「情報か寝床だと?」
「あぁこれでテンは寝床とか探さなくていいとか言ってたんだ」
「なるほどなぁ」
アヤとカイトがこそこそ話しているが気にしない。
「ふむ、捌の里の情報はあるがこちらは惜しい。だが寝床も…ふむ、寝床を提供してやろう。ザラキ、寝床の地図をやれ。」
ザラキとよばれた男は、懐から紙をとりだしなにやら書きはじめそしてテンに押し付けるように渡した。
「それが寝床の場所だ。洞窟で天候に左右されずに生活できる。水辺も近くだ。」
「ほう、なかなかのところだな。」
「当たり前だ。参の里が根城にするつもりだったんだ、ま、お前らがたどり着けるかは謎だがな。さぁ、情報を教えてもらおうか?」
~~~~~
「ふぅ、やはり干渉があったか。」
「すごいね、テン。どこかの里がくるってわかってたの?」
「あぁ」
「でも、参の里だけだったな。」
「いや、他の里の者もきてたと思うぞ。」
「え、うそ!気づかなかった。」
「おれも」
「おそらくの範疇だ。だが何らかの術で盗み聞きしていただろうな。」
「よかったの?」
「まぁ、問題ない。」
「え、なんで?」
テンはくっつき草とよばれる草を鞄から取り出す。この草はよく衣服につくのでくっつくのでそう呼ばれる。
「参の里のやつに情報を教えるとき、盗み聞きされないように近づいたろ?あの時くっつけてやったのさ」
「なんでそれで問題ないの?」
「そりゃ、やり返してやったからに違いないだろ」
「いや、あのくっつき草には7日間分の僕のジンが纏ってあってね。どこにいるか把握できるんだ。これであいつらの位置がわかる。」