第十四話:到着
~二日後テイネル山道中~
「そういえば、タツ兄、隠れんぼで僕が土聞をしたときに全く察知できなかったんだけど、ずっと僕の後ろにいたの?」
テイネル山に向かう道の途中で、タツ兄に疑問だったことを聞いておく。
「あぁ、ずっといたわけじゃないぞ。だが、半径5m以内にずっといたな。テンが、土遁での土聞をしたときは樹の上だな。印の動きでわかるぞ。だが、二回目の時は危うく気づかれるところだったな。あれはなんだ初めてみたぞ。印無しでの忍術は。」
「なるほど、樹の上では土聞は効果ないんですね。勉強になりました。印無しでの忍術は、僕の蒼い力と言えばわかってもらえますかね。まだ把握できてないんです。」
「ほう、蒼い力か。面白い能力だな。再生の能力なのか。わからないが、よい力だ。」
「ありがとうございます。」
「無色のジンでもあるしな。・・・将来、いい忍になりそうだ。お、そろそろ中忍の儀の会場だ。」
そう言いながらタツ兄は、僕たち三人にわかるように大きな声を出し、指を前方に向けてさす。
「おぉーあれかー!!」
前をみると、ほんの小さな集落が見えてくる。円形に、二十の小さな住居が建っていて、その中央は広場になっている。そこには、すでに何人かの人たちが集まっていて座り込み食事をとっていた。その中の一人が、僕たちに気づくと立ち上がり、こちらに歩いてやってくる。
「これはこれは、伍の里の方たちですな。こちらへ。」
ニコニコして、腰の低いお爺さんが一つの小さな住居の方へ手をゆったりと向けている。
「おい、ドン。その恰好はなんだ。足腰がそんなにしっかりした爺さんがいるか。」
「お、やっぱりタツにはばれたか。」
べりべり
そのお爺さんは、顔に手をかけると皮膚をはがしていく。頭まではがすと、その下には、目つきは鋭いがニコニコすることで愛嬌をだしているのが逆に怖い青年の顔があった。腰もまっすぐにすると、どこにでもいる忍者の姿になった。お爺さんとしか見えなかった。すごい変装術だ。だけど、タツ兄は気づくんだな。
「お、伍の里は3人か少ないな。ま、がんばれよ。」
「おう、がんばるぞ。おれたちは、絶対中忍になるっ」
「そうかそうか、元気があっていいな。」
「ドン、話すのはあとでいいだろ。まずは、小屋に案内してくれ」
「んだよ、つれないな。わかったよ。ここだ」
ドンと呼ばれた青年は、僕たちを小屋へ円形に立ち並んだ20個の一つに案内する。小屋の中に入ってみると、畳の10畳ほどの部屋がひとつだけであった。入口と部屋ひとつ。おそらく、この中忍の儀ようの簡易的な小屋なのであろう。
「隣にも伍の里用の小屋があるが、お前らは少ないから一つでいいよな」
「あぁ、かまわないよ。一つで十分だ。ところで、試験は例年通りだよな?」
「おう、そうだ。説明しても良いらしいが、アドバイスは厳禁だと。」
「アドバイスする気などないよ。」
「おう、頼むぞ。それじゃ、準備できたら広場に集まってくれ。あと、漆の里と拾の里がくればすぐにでも中忍の儀を始めるらしいからよろしくな。」
「わかった。」
青年は、そういって部屋をでていった。
「では、準備をしながら聞いてくれ」
「はーい。」
「はーい。」
「わかりました。」
自分たちの荷物を点検しながら返事をする。
「まず、このテイネル山についてだが、魔物がでる。この山は全ての里に接しておる。山を我ら十の里で囲んでいるわけだ。さらに、定期的に魔物清掃をしているから強い魔物はそう多く存在しない。だが、下忍レベルの魔物なら多く生息している。数が多すぎるため清掃しきれないんだ。そんな中で、君たちは任務を遂行する必要がある。」
「なるほど、魔物を倒すのが試験の内容ですか?」
「お、魔物なら俺の火遁で一発だぞ。」
「いや、魔物を倒すのが内容ではないな。このテイネル山にいる、ある魔物の巣に十の巻物が置かれる。その巻物を各里で一個ずつとってくるのが内容だ。もちろん、里対抗なため、人数による補正はしっかりある。その巻物をとるのが、任務であり、早さと魔物への対処能力やサバイバル能力が試される。試験期間は一週間だ。」
「巻物をとったら、戻ってきてもいいんですよね。」
「あぁ、いいぞ。ちなみに、俺が受けた時は三日間かかった。」
なるほど、中忍の試験にはちょうどいい内容だな。おそらく、食べていくための野草や魔物や野獣への知識、その巣をつくるという魔物の発見、魔物を対処しての巻物の奪取、休憩時の安全管理など全ての能力が問われてくるわけだ。楽しみになってきたぞ。