第十話:眠
「ラワード物語の原本ですか・・・すいません。わからないですね。」
ラワード物語もわからないのに、原本などさらにわからない。
「そうか、テン君も知らないか・・・ま、いいや。見つかったら教えてね。・・・今日は、あたしもう行くね。君たちと遊んでもいいけど、あたしも忙しいから・・・」
僕とカエデさんの間には、カイトとアヤが手を広げて立っていてカエデさんをにらみつけている。そんな目線をものともしないで、カエデさんはぶら下がっていた樹から地面に降り立つとスタスタと外に向かって走り出した。
「テンはやらないからなー!!ふー、変なやつだったな。これからは、気をつけろよ。テン。」
「うん。きをつけて。」
「ありがとう。二人とも。」
「当たり前だろ。友達だからな。」
僕が小学生のころは、こんな気の良い友達なんかいなかった。中学生のころと比べると、小学生の時の方がましだったがそれは微々たるところだ。
「よし、変なおねーさんもいなくなったし、エサあげやろうぜ。」
「うん。やろう。」
~2時間後~
居鯉のエサやりを終えて、さらに十分家の外で追いかけっこをしたり、クナイ投げの練習をしてるうちに時間がだいぶすぎていた。
「もうそろそろ、日没だから帰るぞ。じゃあなテン。」
「うん。帰るね。」
忍装束をどろんこにして、二人はあの大きな門をくぐると夕焼けの里の中へ溶け込んでいった。二人を見送ると、僕はとりあえず家の中へはいった。中へ入り、廊下をあるきながらたくさんある部屋を開けて見ていく。
囲炉裏がある部屋や、竈がある台所、五右衛門風呂などの場所を確認し部屋の廊下を進んで一番奥の部屋を覗く。
そこには、巻物やら本が木で造られた本棚に所狭しと並べられていた。こんなにも、書物があるのか。本をよく読む身からしたら、宝の山だが文字が読めるのだろうか。一つ、巻物をとってみる。
<八つ星きのこの調理法>
読めるようだ。授業の時に、黒板で書いてもらった文字が読めたのと同じ感じだな。この巻物は料理本か。そうだよな、巻物だからって奥義の秘伝が書かれているわけないものな。それに、秘伝の巻物がこんな無造作に置かれているわけがない。どうしよう、やることもないし、ここの巻物や本で情報収集しておくか。
~数時間後~
ふー、歴史の話は知らない単語が多すぎてわかりにくかったな・・・忍術の基礎の巻物が一番面白かった。だが、もう今日は読まなくていいな。ろうそくだけの明かりだと、本を読むのも一苦労だ。明日また読めばいい・・・ん、明日か。僕は明日どうすればいいんだろう。いや、この体である保証もないんだ。今日寝たら、また元の引きこもりの生活に戻るかもしれない。明日になってみればわかるだろう。
もう寝よう。
何も家具がない畳の部屋で押入れから、布団をとりだし僕は深い眠りに入った。