第六夜
二人は互いに惹かれていく。
今はただ其の温もりに癒されて……。
黒月は泉から帰ると美桜が眠る寝室へと向かった。今だ深く眠る美桜に黒月は安堵した。
そして微笑む。水月と人の姓を与えられ其ればかりか名まで与えられたことに歓喜して。
黒月は美桜の傍に近づきその身を横たえた。本来眠りを黒月は必要とはしないけれど
同じ夢を見られることを願って其の瞳は閉じられた。
美桜はぱちりと其の瞳を開けた。見た夢は何処か優しかった。
そして傍ですやすやと眠る黒月に気づいた。微笑ましくて笑みが零れた。
だけれど人形であったあの日々にこんな幸福は得られなかった。
この幸福も何れ失う。そう想うとその双眸からはぽたぽたと涙が零れていた。
どうかこのことに気づかないでそう願う。だけれど其の願いは打ち砕かれた。
「哀しいのですか?」
黒月はこちらを見据えそう囁いた。
その言の葉に答えることはできなかった。
「美桜」
「其の哀しみを私にも分けてください」
「二人で背負えばもう貴女は独りではないから」
その言の葉にまた涙が零れた。今度は嬉しくて。
黒月は美桜を抱きしめた。今はただ互いの温もりが何よりも愛しかった。
愛しいと互いの心が伝う。一人はその温もりを求めたがゆえに。
もう一人はその温もりを渇望するがゆえに。今はその想いが互いに伝わっている。
そのことが救いだった。