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第四夜

唇を噛みしめる。何れこの幸福なひと時も消え去るのだとそう思うから。


あの人は私を腕の中に閉じ込めたまま放そうとはしなかった。


そして哀しそうに私に微笑みかけた。そして密やかな声音で告げる。



「ああそんなに噛みしめないで傷ができてしまいますよ?」



私の唇を黒月は優しく指先でなぞる。


その感触がくすぐったくて噛みしめていた唇からは力が抜けた。


其れを見ると黒月は嬉しそうに花が綻ぶ笑みを私に見せた。


黒月が嬉しそうだと私も嬉しくなる。胸の奥がポカポカと温かくなった。


抱きしめる温もりがあまりにも心地よくていつの間にか私はまた眠りへとおちていた。


優しく頭を撫でるその掌に心地よさと愛おしさを感じながら


今度の暗闇は怖くはなかった。





黒月と名付けられた麗人は愛おしそうに美桜を抱きしめていた。


そしてベットへと美桜を横たえた。美桜の頭を黒月は撫で続ける。


まるでその行いは美桜を癒すかのように行われる。



「君はずっと苦しんでいたのでしょうか?」



「そんな世界など滅びればいいのに……」



「だけれどそのおかげで君はこの世界にまた堕ちたのですから喜ばねばなりませんね」



「今はただ君を愛おしんで君の傷を慰撫しなければいけませんから」



あまくあまく囁かれた言の葉は切なさと喜びに満ちていた。


そうこの麗人はずっと待っていたのだ。少女が再びこの世界に堕ちてくるのを


ずっとただひたすらに永い刻をずっと待ち続けていた。


そして少女はかの人の傍らに今はある。そして彼には少女を放す気などないのだから。





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