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第三夜

哀しそうに微笑むあの人に何も言えなかった。


そして名前を知りたい、そう強く思った。


そして言の葉は零れ落ちる。



「名前を教えてください貴方の名を」



其の問いかけにあの人は僅かに首を傾げると


花を思わせる笑みを綻ばせた。


そしてあまやかにあまく囁く。



「私の名は     と言います」



その答えは名の部分だけ音にはならなかった。


どうして?そう困惑しているとあの人は困ったように微笑んだ。


そして私を見据えるとかそけき声で密やかに囁いた。




「貴女が私に名をつけてくださいませんか?」


「私が?」


「ええご覧のとおり私の名は秘されていますから」



其の提案に頷くと私は思案した。そして浮かんだ名を告げる。



「黒月。貴方は水月黒月」


「其れが私の名ですか?」



こくんと頷く。そしたらあの人は嬉しそうに微笑み。私に問いかけた。



「貴女の名は何というのですか?」



其の問いかけに戸惑った。私は長く名を呼ばれてはいなかったから。


確か昔呼ばれていた名はこうだったはず。




「美桜。望月美桜というはずだよ」



其の言葉にあの人は淡く微笑みそして私を其の腕の中に閉じ込めた。


そしてあまくあまく歌うように紡ぐ。



「美桜」



何故だろう?名を呼ばれただけなのにこんなにも心が満たされるのは。


嬉しい嬉しい。愛しい好き大好き。だけれどそう告げる心には気づかないふりを私はするのだ。


失っても耐えられるように。この幸福を今は噛みしめて。

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