第二夜
かそけき光は確かにこの胸に宿っていた。
だけれど少女は其の光に今だ気づくことはなかった。
闇から引き上げられる。呼ぶ声がする。懐かしい声がする。
目を開けると其処にはあの人がいた。
そして私に微笑み言の葉を紡ぐ。
「彷徨い人よ目覚めましたか?」
「よく眠っていたようですね」
其の言葉に頬は一瞬で朱に染まる。
顔が熱い。見られたくない。
だから顔を隠そうと動くと
腕の動きを封じられ縫いとめられた。
そしてあの人は微笑むのだ。
とても愛しそうに微笑んで。
そしてまた呪縛の言の葉を私に告げる。
「隠さないでください」
「どんな貴女でも見たいのですから」
「こうされるのはお嫌いですか?」
動けない私に顔を近づける。
そして咄嗟に目を閉じた。
温もりは頬をかすめた。
くすくすとあの人は微笑み
歌うように紡ぐ。
「何を期待したのですか?」
「彷徨い人よ言えますか?」
目をつむり続けることで私は返答とした。
微笑ましそうにあの人はまたくすくすと笑った。
そして腕を解放されても私は動けなかった。
人形であったあの日々ではとても望めないものを見た気がして。
瞳がまた潤む。おかしいな。こんなに泣き虫じゃなかったのに……。
そのことに気づいたのかあの人は私の頭を撫でた。
「寂しいのですか?」
「でも君はもう戻れないのですよ」
「君の世界から捨てられたのですから」
行いが優しいのにあの人は平気で残酷な言の葉をその声音で囁く。
かすかな声で私は囁く。
「わかっています私は死んだのだから」
その言の葉をあの人は逃さなかった。
そしてあの人は哀しそうに微笑んだ。
私はこの温もりに愛しさを覚え始めていた。
そして其の心に私はまだ気づかない。