第十夜
美桜は黒月に問いかける。貴方は何なのか?そう疑問に思って。どうか嫌わないでそう願いつつ。
その言の葉に黒月は怒るでもなくむしろ微笑み告げる。
「私は神のようなものなのかもしれません」
「わからないの?」
その問いかけに黒月は困ったように其れでも微笑んだ。そして言の葉を紡ぐ。
「ええ分からないのですよ」
「人の祈りに応えその祈りを叶えることもできる」
「だけれど私はずっと長い刻を独りでいました」
「その長い刻の中で人々に祀られこの家をもらいました」
「だけれどその存在を同じくしたものはいなかった」
「だから分からないのです」
「自分が何者なのかもそれすらも……」
黒月は微笑みながらそう告げた。だけれど泣いているようでそれが哀しくて彼を抱きしめる。
その行いに黒月は抵抗しなかった。むしろ安心したようにその身を委ねてくる。
その事実に心が震える。そして黒月を強く強く抱きしめる。
ごめんなさい。ありがとう。生まれてくれて。そう伝えたくて。
そして黒月の眦からは滴が零れる。その事実に黒月は気づかない。
黒月の目を両手で美桜は覆った。そして告げる。
「泣いていいよこうすれば見えないから」
「だから今は泣いていいよ」
その言葉に黒月は静かに頷きかえすとただ静かに涙を流した。
愛しい。愛しくてたまらない。美桜はその想いを深めた。
この人が幸福になればいい。そう祈って。




