第一夜
死んだはずの少女は見知らぬ場所で目覚める。
見目麗しい麗人と出会い。
其の温もりに癒されながら…。
今思えばあの人と出会えたことは何よりの幸福でそして何よりもの不幸だったのだろう……。
今終わる私が思うのはそんな取り留めもないことだった。何も望みを持たなかった哀れな人形のそんな結末に泣く者は誰独りとていはしなかった。
そして意識は闇に溶ける。ぶつりっ。
目が覚める。どうして起きれるの?そう不思議に思いながらの目覚めだった。
ふわり。目の前にあったのは美しいとわかる性別はわからないけれど人物の長い濡れ羽のような黒い黒い長い髪。思わず言葉が零れ落ちた。
「きれい……」
其の人は振り返った。そして私を見据えると微笑みあまやかな声音で囁いた。
「きれいなのは君のほうですよ」
「目が覚めましたか?彷徨い人よ」
其の言の葉に私は縫いとめられた心地になり唇を戦慄かせた。
美しい麗人は微笑みをたもったまままた囁く。
「怖がらせてしまいましたか?」
「だけれど此処には貴女を傷つけるものはいません」
「居たとしても私がその存在を否定します」
「だからどうか泣かないで」
言われるまで気づかなかったけれど私は涙を流していた。
泣きたくなくて声を押し殺す。だけれど嗚咽がもれる。そんな私をあの人は抱きしめた。
「怖かったのですね」
「もう大丈夫ですよ」
「今は好きなだけ泣きなさい」
「其れが今の貴女に必要なことなのだから」
そして私は泣き疲れ眠ってしまった。意識はまた闇へと溶けた。
「眠りましたか……」
「君は覚えていないでしょうけど」
「私はずっと君を覚えていたのですよ?」
「君のことをずっと」
あまやかにかそけき声で囁き告げると壊れ物に触れるように優しく愛しき存在を抱き上げた。
そして寝室へと運んだ。物語は今だはじまったばかりーー。




