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『エリィ、お願いがあるんだけど』
何だよ。またろくでもないことじゃないだろうな。
『ろくでもないことばっかりお願いして悪かったねっ! そもそも、エリィがちゃんとしてくれたら色々お願いしなくたっていいんだよ。この間だって……』
あーあー、うっせー。
『エリィってばいっつもそう。ボクの言葉ちゃんと聞いてくれない! 身体大きくなっても、小さい頃と全くかわらないよね』
お前も昔からうるさいよな。言っておくけどな、俺は人生の中でお前の声を一番良く聞いて……
『よく言うよ。ラリーと話しているときの方が楽しそうなくせに。いいよね、親友って』
男の振りしてたお前とは親友のつもりだったよ。
『嘘つき、ペットか何かくらいにしか思っていなかったくせに』
それはお前が……
『いーんだ、ボクはどうせ気まぐれなお坊ちゃんに飼われていた子猫ちゃんなんだもん』
少し黙れよ……
『………んっ、……』
ざまぁみろ、………キスしてる時だけは静かだな。
『………馬鹿っ!! ムードが全くない! しかも煙草臭いって何度も言ってるでしょ! キスの前くらい煙草止めてよね、朴念仁!』
それに惚れたの誰だよ。
『う、うるさいなぁ。エリィだってボクのこと好きなくせに』
そんなこと、いつ、誰が言った?
『昨日の夜、エリィが言った』
知らねぇよ、ハゲワシにでも聞いたのか?
『そうだよ、ハゲワシさんがエリィがどんなにボクのこと大好きかって教えてくれたのっ!』
はいはい、嘘はいけませんよ、ミス・フリーダ?
『ミ・セ・ス! ミスター・コールは物覚えが悪くていけませんねぇ』
じゃあ、覚えるまで教えてくれるのか?
『しょうがないなぁ。お姉さんが教えてあげるよ。その代わり、お願い………ううん、約束して欲しいことがあるんだ』
……何だ?
『あのね、エリィ……ちゃんとご飯食べて』
食べているじゃないか。
『違うの、ボクがいなくても、ちゃんとご飯食べてって。この間ボクが友達と出かけた時、君、せっかく用意したのに何にも手を付けて無かったじゃない。あれ、止めてよね』
悪かったよ、お前の作った飯、無駄にして。
『そうじゃないの! ……心配になるじゃん。エリィ、ボクいなくなったら餓死しちゃいそう』
腹が空けば何か食う。餓鬼じゃねーんだから。
『子供だよ。エリィは。ボクがいないと何にも出来ない。器用だし、何でも出来るくせに、なーんにも出来ない』
……矛盾してるぞ、それ。
『エリィのことだよ。矛盾だらけの男。ろくでなし』
最後のは普通に悪口だな。
『でも、大好きだよ』
……お前、煙草臭いのは嫌じゃなかったのか?
『それに惚れたって言ったでしょ』
お前も矛盾してる。
『だからいいんじゃん。……大好きなんだ、だから、ボクの知らないところでお腹空かせてたり、倒れたりしてたら嫌。だからさ、ボクがいなくても、ちゃんとご飯食べるって約束してよ、ね?』
………嫌だね。
『えー、何で』
約束しない。お前が俺の側にいれば良いんだ。
『……ボクが友達と旅行とか行きたいって言ったらどうするの』
だったらその時約束する。それまでは死んでもしない。
『わがまま』
それに惚れたの誰だよ。
『ボクだね。……もう、しょうがないな。じゃあ、一生側にいるしかないね』
約束するか?
『うん、ボク一生、エリィの側にいるよ』
………嘘つき。
エドの、嘘つき。