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第四章

今回も割と長いですな。

がんばれ菊田君! アフター・デイズは君にかかっている!

あと、今回残酷な描写があります。ご注意ください。R15ぐらいですかね?


※ちょっとした事情があって、少し変えました。

ご迷惑をおかけしてしまい、真にすいません。

少し慌ててさっきいた大通りに出る。

音のした方に目を向けると戦車のような車(?)があった。


デカイ。

ただ、デカイのである。


果物屋がタイヤ・・・に負ける程の大きさだ。

しかも、その周りをフルフェイスのヘルメットに防護服、それに大型の銃という武装した集団が護衛する様に周りを囲んでいる。

僕はその迫力を見て驚いた。が、それより彼ら自身・・に驚いた。


ヘルメット越しに見える目や、彼らのふざけた存在感がこの世界に似合いすぎた。


周りを見渡せば、僕の目にはやっぱり終わった世界が映る。


そんな世界で生かされている・・・・・・・僕らと彼らとでは、まるで違う物を感じた。

望まぬ世界で・・・・・・生かされてるのではなく、望んだ世界で・・・・・・生きている。僕にはそうとしか思えなかった。


僕はそんな人間を見たのは初めてだった。


あまり気分は良くないが、これもまた出会いなのかもしれない。

……僕の視界が少し開けたのかもしれないな。

メグムに会ってから二度目の出会いは、疑問だらけの出会いだった。


僕は二人の様子が気になって顔を見てみる。

二人ともあまり良いとは言えない顔をしていた。

そんな中、初めに声を出したのはヒカルだった。


「なんか……嫌な感じ、だな」


抽象的だったが、確かにこれは感覚的にとても嫌になる光景だ。

ヒカルにとっての仲間になって初めてであろう出会いはあまりに皮肉な出会いだった。


数分立つと集団が散り散りになって大通りのはじに集まる人々に話しかけているのが見えた。

話が終わるたび、人々は口々に「どういうこと!?」やら「ふざけるな!」との疑問や罵声を浴びせていた。


もうすでにメグムは走って人々の輪の中に入っていき話を聞いていた。

ホントに騒がしいことが好きなんだな……分かってたけど。と、僕は切に思った。

そんなことを思っていた矢先。


メグムがこっちに走ってくる。

僕はここで初めてメグムが焦っているところを見た。

ヒカルの目の前にくると前かがみになって手でヒカルをこっちにこいと手招きしている。

ヒカルが走って行き、スピードを上げて帰ってきた。

ヒカルがくると息が切らしながら、


「ハッ……! ハッ……。やばそうだぞ! 爆弾を使ってここら一帯吹っ飛ばすって!」


は…………? 何を、言ってるんだ……!?


僕は、今の話で出来た疑問をメグムに聞く。

「……えっ? ……なんで吹き飛ばすの? 理由は!?」

僕も焦っていて良く話せないが、ヒカルも口を開けてそのままだ。

「いや……なんか探している物がここにあるから、それを探しやすくするために一度全部吹っ飛ばすって!」


……えっ?


なんだ、メグム以上のアホじゃないか。探したい物があるからここら一帯を吹っ飛ばす? 

ふざけんな。常識くらい身につけてから人に物を言えよ。


……しかし、そこまでして探したい物ってなんだ? 大体、こんなぼろぼろの世界の物だぞ。

そんな爆撃なんかに耐えられるわけないだろ。


それでも何か気になってメグムに聞いてみる。

「それで、探してる物ってなんなの?」


メグムは少し困った顔をして、


「あっそれはまだ聞いてない・・・」


メグムはこんなところでテキトーだった。


「えっ? でもどうしたらいいの? ここにいたら爆発に巻き込まれちゃうよ!」

そこでヒカルは気づいた様にメグムに聞いてきた。

「なぁ、ここら一帯って……具体的にどれくらいだよ?」

言っている途中からメグムとの距離を詰めて言い終わるころにはもう、メグムとの距離はなかった。

「えっと……」

メグムが思い出そうとすると待ちきれない様にヒカルが服を掴んだ。


僕はヒカルの顔から少しずつだが血の気がひいている様に見えた。


「なぁ、どれくらいなんだよ!」


ヒカルの疑問に対してメグムは答えられない、そう言っている様に

「悪い!!スグ聞いてくるから!」

と、険しい顔をして走っていった。


ヒカルは振りほどかれた手を握り締め、メグムの走っていった方を見ていた。が、顔を一瞬しかめてメグムの後を追って行ってしまった。


僕は一人になって、ヒカルの顔を思い出して嫌な考えが浮かんだ。

早く逃げろ、だと?

逃げたくても逃げられない人だっているんだ。

例えば、ケガをしている人。

例えば、足腰の弱い老人。

例えば、何も知らない小さな子供。


例えば、原因不明の病に冒され、床にしている誰かの家族。



それでもどうにも出来ない僕は、あの時と同じくあかい空を見て、メグムに願うしかなかった。

メグムがどうにかしてくれると思うしかなかった。



~~~~~~~~~~~~



頼むから、大きな範囲で爆発を起こさないでほしい。

神でも何でもいいから、姉ちゃんを助けてくれ。


もう、オイラから、何も奪わないでくれ。


オイラから親を奪ったこの世界は、今度は姉ちゃんを奪おうとしている。

もう、オイラには一人しかいない家族を……


足を急がせて、前にいるメグムに追いつこうとする。

足が絡まってオイラは思い切りこけてしまった。

地面に頭をぶつけた痛みは、そのまま自分の弱さに変わってココロをえぐった。

込み上げて来るものは、目から涙としてこぼれていく。

さっきの涙よりも大粒だった。

そのためか割れた地面はスグには涙を吸ってくれなかった。


オイラから全てを奪った世界は、オイラからでた弱さを吸ってはくれなかった。


この現実が、この世界が、無力な自分をせせら笑う様で、もうオイラのココロはボロボロだ。


「神様なんていやしない。誰も救ってくれないからオイラが……オイラが姉ちゃんを……!」


自分を勇気づけるために自分に言った言葉は何も出来ない現実のせいで、さらにココロを抉るだけだった。


ここで、立たないと。姉ちゃんは……!


どうにか上げた顔の先に、人が立っている。

こちらに手をさしのべて、さっき会った、賭けてみようと思えた男が立っている。


「メグム……」


名前を呼ぶと真剣な顔になって、

「確かに、神なんていないよな……。だから、オレがヒカルを救う! ヒカルの姉ちゃんがもしヤバイなら、ヒカルと一緒にオレが救う! 誰も救ってくれないなら、オレが救ってみせるから!」

涙がもう一度流れたが、この涙は生まれてから初めての嬉しい涙だった。

汚れた手を伸ばすとメグムは強く握って引っ張ってくれた。



~~~~~~~~~~~~



「ここから7キロくらいのところにオイラの姉ちゃんがいるんだ。病院の近くでまだ水のきれいな井戸もあって……それで、それで」

ヒカルは姉ちゃんのことで頭がいっぱいなんだろう、口がうまく回っていなかった。

「落ち着けよ。とにかく今は爆発の範囲を聞こう!」

……今は、そうするしか無かった。

人だかりにつくと、その人々が黙っていた。

理由はわからなかったが、話しやすかったので逆に好都合だった。

「なぁ、爆発の範囲ってどれくらいなんだよ!?」

兵士はこちらも見ずに、

「現在は7キロ~8キロとされています」


えっ……?


……最悪だ。

オレはヒカルの顔も見れず強張ってしまった。

冷や汗が背中をつたうのが分かり、やり切れなかった。

そこで、俺は気づいた。

周りの人々の目には割れた地面の土の色がうつっている。

誰もが、下を向いて暗い顔をしている。


なんで……こんなことになってるんだ?

俺はヒカルが気になって、顔を確かめる。

ヒカルの顔がおかしいくらい青ざめている。

そうだ……。まずはヒカルの姉ちゃんのことを、どうにかしてみせるさ、絶対!


「……探してる物って何ですか?」

俺は落ち着いて聞いてみた。


「すいません。関係ない方には教えられません」

本当に無機質だ。

それに、冷たい。

人としての暖かさがまるで感じられない。

そう考えると、周り全てが冷たく感じた。

オレを囲う人々は冷たかった。

なんだか、それに飲み込まれそうになって周りを見渡す。

冷たすぎる顔の中で、遠いワタルの顔を見つけた。

今は俺とヒカルを心配してるんだろう。


表情は良くないがそれでも人の暖かさを感じた。


あいつは確かに俺達を見てくれている。

なんだかわからないが、少し勇気がでた。

俺は前を見据えて、

「関係ない訳がないでしょう? それに俺はアンタらよりここらに詳しい! 探しものならすぐ見つかるはずだ!」


オレは見つける自信があった。


根拠や理由は無いけれど自信があった。


「それでも教え「教えてやれ……」……。」

話の途中で車の中から声がした。その声は低く響くように聞こえた。

男は車に目を向けず、自分の腰のポーチから紙を取り出して俺に広げて見せてきた。

「この石だ」

男はその一言しか言わなかった。

見せられた紙にうつっていた石は、どこかで見たような石だった。

それは黒く重そうな……そうか! ヒカルを追っている時に、ヒカルがつまずいた石だ!!

「すぐ持ってくるから! 爆発なんて起こすなよ!」

オレはそれだけ言って方向転換をした。

「ヒカル! 大丈夫だ! これで姉ちゃんを救えるぞ!」

ヒカルはその声にすぐ反応し、

「どうしたらいいの?」

そう、聞いてきた。

俺は生きてるヒカルの目が見れて嬉しかった。

「説明するからついて来い!」と言って俺は人混みを掻き分けて走った。

その時たまたま聞こえた男達の話に、オレは耳を疑った。



~~~~~~~~~~~~



人混みの中から出てきたメグム達の姿を見て僕は安心した。

二人はどんどん僕の方に近づいてきた。

「どうだった!? 何かわかった?」

僕は口早にそう言ってしまった。

「まぁ、何とか止められそう。オレ達がいた所にあった黒い石。あれを持っていけば爆発を止められる!」

メグムが言った言葉を理解し、さっきまで自分がいた場所を思い出す。

「あっ! あの時ヒカルの隣にあった黒い石か!」

僕は、あの吸い込まれる様に黒く輝く石を思い出す。


そう言えばそうだ。

頭にこびりつく様に覚えている。

ヒカルは僕の言葉を聞いて、「オイラが取ってくる!」

と言い、答えも聞かずに行ってしまった。


「僕達も行く?」


僕はメグムに聞いてみる。「俺達も……! いや、ここで待っていよう」

何か言いかけたようだったが、今は気にならなかった。

これで大丈夫だ。

やっぱり、メグムが何とかしてくれた。

僕はメグムを見て少し誇らしかった。



少し時間がたち、ヒカルが細い路地の奥から走ってくるのが見えた。

「オーイ! ヒカル! こっちに渡してくれ!」

と横のメグムが言った。

ヒカルは、「重いから転がすよ! 早く届けてくれ!!」

と言い、黒い石を転がした。

黒い石はゴロゴロと重い音を出してメグムの足にぶつかった。


メグムはそれを拾って車の方に走っていった。

僕はメグムの後を追うことにした。

メグムはある程度近づくと、急に立ち止まった。

僕は驚いてコケそうになってしまった。

メグムが止まると、さっき話していた男が人混みから出てきた。


「協力ありがとう。これで爆弾の使用が防げたよ」


そう、まったく感情のこもっていない礼をした。


メグムは男の顔を睨みつけ、「これが欲しかったらここから出て行け! 爆弾は使わずもって帰れよ」

といった。

僕は言葉の意味がイマイチわからず、首を傾げた。


「見つかっても吹っ飛ばすって言ってな……そこのお二人さんが」


メグムははじに立っている二人の男をあごで指した。

会話をしている男は銃を構え、銃口をこちらに向けてきた。


しかしメグムは怯まず、男から目を離さなかった。


「オレをやるのはいいけど、この町に手を出すなよ」


は……!? メグムはいいのか? そんな、自己犠牲でこの町を救うだなんて。


そんなの、ダメだ!


「メグム!? なにやってるんだよ!」

ヒカルは叫んでいた。

「面白いな……この世界でそんな目が出来るのか?」


車の中から響くような声がした。


その声を聞いた瞬間、男は確実にトリガーに手をかけた。

「メグム……!」

僕は、ここで恐怖を感じた。しかし、それでもメグムは、

「ゴメン……ワタル、ヒカル」

そう言った瞬間、男の手が動き、銃声が響いた。


その時同時に、人を突き飛ばすような音が聞こえた。


その瞬間、何か赤く、紅く、銅い色の液体が、僕の腹あたりから吹き出た。

熱く、焼けるように熱く、僕の腹が溶けたように思えた。

ぐずり、と、激しく、そして、とろける様な音と共に、


「ごッ……ふ……」


僕の体に、赤黒い風穴が開いた。


「えっ……? ワ……ワタル――――――――――――――!!」



熱い。

熱く、熱く、

そして、冷たかった。




腹の辺りを軽く触ると、生暖かい液体を感じた。

手を見ると真っ赤だった。

見たことも無いような、真っ赤な真っ赤な赤だった。


おお!

ワタル君がピンチに!

一体どうなってしまうのか!

ドキドキハラハラの展開です!

お楽しみに!

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