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第三章

今回は長いですね……

更新です。



僕は今メグムの少し後ろから大通りを歩いている。


良く見るとメグムはダボダボで体に合わない服を着ていて、上に羽織はおっている物に至っては長すぎて地面をひきずるほどだ。


滅びが始まった世界だが、服は変わらず滅びなかった物の一つだ。

だから、せめて服だけは、とオシャレをするものもいる。

まぁ、たいていの人々は何かあった時のため動きやすい格好をしているか、鎧の様なゴツイものを着ているやつもいる。


メグムの格好をもう一度見る。

そう考えるとメグムはどちらにも当てはまらない格好をしている。

さっきから会話もあまりなかったのでそれも含めて聞いてみることにした。


「なぁメグム。なんでそんな格好してるの?」

メグムは首だけこちらに向け、服の肩の辺りを引っ張って答えてくれた。

「えっ?変かな?」

僕は疑問で返されたので、

「いや、別に変じゃないけど……」

と、あまり考えず答えてしまった。

「そっかぁ? ならいいや」

メグムがそのように切り返してきたので、その後の言葉が見つからず会話は終わってしまった。

理由を知る事も出来ずにまた無言になったから、この無言がさっきより嫌な感じがした。


何かないか、何かないか、くそう僕の語彙ごいのしょぼさめ……と頭の中でなにか会話できる言葉を探していると、


「オイ! まてー!!」


という怒鳴り声が聞こえた。

僕は打開策がいいタイミングで飛んできたような気がして大袈裟に反応する。


「おっ! 怒鳴り声が! 何かあったのかな!?」


メグムは大袈裟でも何でもなく素のままで僕と同じくらい反応した。


「何かなきゃあんな声出さないよな! 行こう!」


メグムがのってきてくれたので、僕も大袈裟に

「よっしゃ! 行こう!」と答える。


僕が答えてすぐにメグムは走り出した。足の速さがいつもより早い上に目がキラキラしているのが後ろからでも分かる。

大通りから細い路地に入り、路地にばらまかれた機械の様に見えるゴミを器用によけ、二本ほど奥の大通りに出る。

大通りにでるととても一回見ただけじゃよくわからない光景が広がっていた。大通りにいる全員が下を向いて何かを探している。

「……!?」「……!?」

二人して驚いて一度顔を見合わす。

二人は例にならって下を見る。

「……」「……」


何かあるのか?


そう思い、顔を上げて叫んだであろうオヤジを見る。

顔が怒りで赤かったためにすぐわかったが、

そのオヤジも下を見ている。


なんだこれ。なにがあったんだ。本当にわからなくなってきた、その時。


「そっちに行ったぞぉ!」


と声が響いた。

叫んだ男の(ゆび)が、している先はこちらに向いている。


……うん?


行ったぞ! ということは、動くなにかなのか?

もう一度、怒り狂って今にも襲いかかってきそうなオヤジをみる。コワイ。


オヤジの後ろにはざっと広げられた木の台に、林檎やみかんなど果物が並べられている。

そうか……わかったぞ!


オヤジの店の果物をネズキング…………いや、ネズミか何かに取られてそれを取りかえそうとしてるんだ。

なら下にいるはずだ……と思った時、横を通りすぎる何かを感じた。


その一瞬だったが、僕は今日二度目の風をあびた。


メグム同様の、気持ちのいい風のような気がした。


「まぁてまてまて~!」


僕がそんなことを考えていると、メグムはすでに逃げたそれを追っていた。

ハッと正気に戻って、自分も追おうと思い後ろを向く。


なっ!!?


メグムが平然と追っているのはネズミではなく|G(黒くて憎いあいつ)でもなく、人だった。

「ちょっ……ちょっと待って!!」とりあえずメグムを呼び止める。

「えぇっ……なんでだよ? 逃げちまうよー」

メグムは足踏みをしつつ、焦った顔をこちらに向けている。

「いやまってよ! えっ何? 人じゃん! どうやってあんな……!?」


僕は驚きでオロオロしてしまった。不覚だ。

「いや人だけど関係ないだろ!? 果物泥棒を捕まえるぞ! スピードアップ!」


そういうと、さらにスピードを上げ、そのままメグムは走っていってしまった。


「えっ!? あ~もう!」


僕は考えることをすべて放棄した。


とにかく追いかけて……って速っ! なにあのスピード!

……しかし、僕たちが追いかけている人もかなり速かった。

それこそ|G(かさかさ動くあいつ)を思わせる手と足を使ったいい走りっぷりだった。


「スゲー速さだなー! ネズ公爵の後はG皇帝かよ! 今日は変なのに良く会う日だな~!」

……?

メグムが変なことを言っている。が、ネズ公爵はメグムが勝手につけたあだ名だ。

しかも1番変なのはメグム本人だということをわかっていない。

さて、どこからツッコミを入れようか? と、考えていると。


|G皇帝(果実泥棒)がこちらに走ってきた。


「えっ? こっち来てる!?」

僕はメグムに顔を向けた。そこで見たのは、

「よっしゃ捕まえろー!」

と言って、両手を振って喜んでいるメグムだった。

僕は両手を広げてしゃがみ込む体勢になった。

しかし、G皇帝はその横を軽くかわして過ぎさっていった。


「あぁー!?」


メグムは大袈裟なくらい大声を上げた。が、これはメグムの普通のテンションだ。

「何やってんだよワタルー!」と、言われ、僕はとっさに

「いや、すごい速さだったんだよ」とあっさり返していた。

そんなやり取りをしていると、G皇帝は少したったところでターンをキメていた。

どうやら行き止まりだったらしい。


G皇帝はそのまま体勢を整えメグムに向かって走って来た。

「なんだよ~今度はこっちにか? そう簡単に抜かせねーぞ!」

そう言って近くの岩を掴んでいた。

「メグム!あの速さじゃそんなのあたんないよ!?」

と、そういいつつG皇帝に指をさした僕に、

メグムはニヤッと笑いながら「いいのいいの」とか言っている。


……あ~全然わかんねぇよ!

なんだよもう、と思い考える事を放棄した。最近よく放棄するな、考え。


「よっしゃいったれ~」


キャラ崩壊もなんのその。今はG皇帝を止めてもらうためにメグムを応援することにした。

僕の声につられ周りの人々も「いけー!」とか「やっちまえー!」とか思い思いにヤジを飛ばしていた。

そしてG皇帝がメグムに近づき、後数メートルとなった時!


メグムは持っていた岩を自分の足元に思いっ切り投げた。


ドズンッと重い音と共に地面がめくれ上がった。


普通の地面なら人が持てるほどの岩くらいではめくれ上がらない。が、この世界の地面はもろすぎた。

土の壁はすねほどになっていてG皇帝を驚かせていた。

G皇帝はしりもちをついて両手で体を支えていた。

メグムはニッシッシッシー、とふざけた笑い声をしていた。

「どーだ! 土壁大作戦!」

と、僕に笑いかけてきた。

僕は正直あっけにとられ、驚いた顔をメグムに向けるしかなかった。

メグムは僕の顔を見て満足そうな顔をしてからG皇帝に向き直った。

「どうだ! 観念しやがれ!」

そう、メグムは睨むような目をしてG皇帝に言い放った。


G皇帝は服からぶどうや桃をボタボタと地面に落とし始めた。焦りからか手は震えていた。

「おぉー? 意外に素直だな。それが終わったらオヤジさんに謝れよ!」

メグムが笑顔で言い終わると、ちょうど盗んだ果物を全てだし終わったようだ。

「なんでこんな事したんだよー?」

と、メグムは聞いたがG皇帝はその質問を無視して追ってきたオヤジさんに頭を下げ、僕たちが出てきた細い路地に走っていってしまった。

「オイッ! 待てよー!」

と言ってメグムも走っていってしまった。


僕は二人が行ってしまった細い路地を見た後オヤジさんに形だけのお辞儀をして後を追った。

路地に入るとG皇帝を追いかけるメグムの背中が見えた。

走り出そうとした時背中にオヤジさん達のお礼の声が聞こえた。


数年ぶりの人からのお礼に少し顔がほころんだ。

追わなければいけないことを思い出し、僕は軽い足取りで走りだした。



~~~~~~~~~~~~



「待てよ~!」

俺が追いかけるとG皇帝は焦って思い切り走っていってしまった。

それでも焦っているからスピード的にはそうでもない。

結構走ると追いつきそうになったが、そこでワタルを置いてきてしまったことに気づき、後ろを向いた。

ワタルは何故か笑顔で下を向いていて意味がよく分からなかったので放っておく事にした。

前に向き直ると誰もいなくなっていた。が、スグそこに曲がる道があったので曲がったんだろうと思った。

曲がり道に入るとG皇帝がこちらを向いて走っていたが俺を見たとたん黒い石に足をぶつけて転んでしまった。

俺はスグそこに走り

「大丈夫か?」

と手を差し出した。

G皇帝は俺の手をとらず座ったままこちらに向き

「お前! なんなんだよ!? 果物ならもう全部返したぞ!」

と叫んできた。

俺は別に果物をまだ隠しているとなんて思って無かったから「ちげーよ。なんで果物を盗んだかを聞いてないから追ってきたんだ」

正直に答えた。

G皇帝は顔をしかめたが、

「腹減ってたから盗んだだけだ!」

と、ふて腐れたように答えてくれた。

だけどぶどうや桃じゃ腹は膨れないだろー。

「嘘つくなよ。ぶどうなんかじゃ腹一杯になんかならねーもん!」

ふふん、強気で答えてやった。すると、

「っ! 別にお前に関係ないだろ!」

返ってきたのは、別に理由があることを認めるような言葉だった。

「関係あるよ! わりーことしたお前を止めたのは俺なんだから」

そう返してみる。

「そっそれは……そうだけど……」

と、黙ってしまった。

それにしてもさっきから素直な反応ばかりしてくる。

こんな素直なコイツが盗みをしなければいけなかった理由がますます気になる。

少し、間をおいて。



「……姉ちゃんに食わせたかったんだ……」



「……えっ……?」

と俺が話した時丁度ワタルが走ってきた。



~~~~~~~~~~~~



前を見るとメグムの姿はもうなかった。

「ヤバイ~! 見失ったぁ!」

この道は先が長いから真っすぐ走っていたなら見えるはずだ、でも今は見えない。

と、いうことはどこかで曲がったということだ。

「7つ……」

今ここから見えるだけで曲がり道は7つあった。

僕はどうすることも出来ないので見ながら進むことにした。

最初の曲がり道は機械のようなゴミだらけで進める様子じゃなかった。

二つ目の曲がり道は人は少しいたがメグムの走る姿は無かった。

三つ目の曲がり道を覗くと、すれる程長い服をきたメグムが見えた。その奥に、泥棒も。


急いで走っていくと、何故かメグムはいい表情をしていなかった。

どうしたのか聞こうと口を開くと、それをメグムに手でふさがれた。

そしてメグムはG皇帝に視線を移した。

G皇帝が何か話してくれるという事に感づいて僕は耳を傾けた。


「オイラには姉ちゃんがいるんだ。姉ちゃんは変なもんが落ちてきたから出てきたっていう新しい病原体に体をむしばまれたんだ。そのせいで、後一週間ともたない命なんだ。だから、最後に……姉ちゃんが好きだった桃を食べさせたかったんだ。」


G皇帝が話し終わると、メグムの手がどいたので僕は疑問を口に出した。


「なぁ、お父さんとか……お母さんに買ってもらうとか。そんな手はなかったの?」

僕はその暗い過去に触れ、驚きもあった。だから、声が震えていたかもしれない。


「父ちゃんと母ちゃんなら死んだよ。変なのが落下した時の衝撃で。あの衝撃で死んだのは数名だった。けど、その中にオイラの家族がいたんだ。もう、意味わかんないよ! 宇宙なんて関係ない、遠い世界の落とし物のせいで!! なんでオイラがこんな目に合わなきゃいけないんだよ!!」


最後の言葉は、叫ぶ様だった。


目の下に涙を浮かべ、あの|狂おしい日(世界の終わり)に突然変わってしまった、誰ひとり望んでない、世界を嘆く様に。


それでも、言葉は切れなかった。

「なんでオイラ以外は……! なんでオイラの大切な人達は……! オイラの周りにいてくれた家族や友達だってなくした! それなのにオイラはこうやって生きてる! オイラを残してみんないなくなって……こんなの……なんで……?」


ぽた、……と。

涙が頬を伝って地面に落ちた。

地割れを起こしている地面は、涙をすぐに吸い込んでった。

今自分の目の前にいる同年代の少年の周りにいるのは、家族や友達ではなく終わっている世界だということを見せ付けるようだった。


この少年の涙を拭ってくれる温かい存在は、もういなかった。


僕は涙を見た瞬間悔しくなっていた。

僕は、自分の手で名前も知らない泥棒少年の涙を拭った。泥棒少年は何も言わず、涙を流しつづけた。


「ワタルも泣いてるじゃねーか」


そう言って僕が気づかず流していた涙をメグムが拭ってくれた。

僕らは涙を流すことしか、今はできなかった。


それから泣きつづけていると、最初にメグムが泣きやんだ。

それに続いて泥棒少年も泣きやんだが、僕は泣き止むことができなかった。

結局泥棒少年の肩をかりてどうにか落ち着いた。


僕が泣き止むとすぐにメグムが、

「なぁ。まだ名前聞いてなかったよな? 俺の名前はメグム! そっちがワタルってんだ!」

と、さっきまでの涙はなんだったのか分からなくなるほど明るく聞いた。

「オイラの名前は、ヒカル」

やっぱり素直だな。僕は思ってしまう。


メグムは話を切り出した。

「なぁ、こんなこと言うのは悪いけど。お姉さんは長くないんだろ? ……もし良かったら、お姉さんのことが終わったら俺達と行動しないか?」

メグムはヒカルの顔をあまり直視せずに言った。

ヒカルは顔を少し曇らせ、

「というか……おまえらは何してるんだ?」

と、聞き返してきた。

メグムは僕に言ったように、「この世界のまだ終わってないところを探しに行くんだ。」

さらに明るく、そう言った。

ヒカルは不思議そうな顔をして。

「言っちゃ悪いが、そんなことか? 時間が勿体ない気がするぞ。」

と、あまりいい反応ではなかった。


メグムはここで初めて、ヒカルの顔を直視した。

そして、まっすぐにヒカルの顔を見て言った。

「いや、勿体なくない。これは絶対お前ら二人に必要だ。お前らはこの世界が終わってるって思ってる。でも……そう思ったままなんてダメだ! このまま全て終わっちまったらお前らはこの世界のいい部分を知らないことになる。俺に少し時間をくれ……! 絶対に見せるから! お前らがその両目でずっと見ていたいと思えるようなものを見せるから! もう一度言う! 俺と一緒に来てくれ!」

……かっこいいセリフだ、本当。

僕は答えはもう決まっていた。メグムの言葉を聞いて確信した。

見れるはずだ。僕が見ていたいと思える物のある世界を。

僕はキッパリ、「ああ、これからもヨロシク」

そう言った。

ヒカルの方を向くと、何かに当てられたような顔していたが、スグに、「オイラに、絶対! 見せてくれよな!」

と、メグムの目をまっすぐに見て言った。

やっぱり早く進みたい。

この足を一歩でも多く動かして見てみたい!

たぶん今のヒカルもそう思ってる気がする。


ふいに、ガタガタガタガタ、と耳障みみざわりな音がした。これは何の音だろう……?

まるで、そう、戦車のようだ。ザラついて、ギラつくような不快な音だ。

メグムがこっちを見て、「よし、見にいこう!」そう言ってすぐに走っていった。

僕はヒカルと顔を見合わせて、ふっと息をつき、メグムの後をついていった。


何かある気がする。


それがいいことか悪いことかはわからない。

けど、今の僕達ならどんな出会いも楽しめる気がした。




むむ、ほんとに最近かっこいいな、これ。

……バトルになればいいなぁ……(中二病)

なれば俺もちょっとは力になれるのに……

それが残念なことになったら目も当てられないけど。



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