第一章
えーと、お友達のなんで、なんていったらいいんだろ?
ええ、と、がんばってくれい、菊田君。
2039年、この世界は銅色に染まっていた。
世界中どの国もただの腐ったゴミ山に成り下がり、
建造物も乗り物も、ただでかいだけの箱だった。
生きている人々の目は何も写してなどいなかった。
いや、まるで何も考えたくない、そういう風に世界を拒絶するように死んでいた。
そう考えていない、いや、考えられない(・・・・・・)死人のほうがまだ、
生きていた、と感じられた。
地面はぼろぼろと崩れていて、この地に生を感じさせるものは何一つなかった。
空は赤かった。
しかし、夕日の赤さとは程遠く、錆びたような銅というほうが正解だった。
僕は、この世界に生まれたことに意味があるとは思えなかった。
生まれてから6年。
たったそれだけの時間でこの世に生きる意味などない、そう思っていた。
いや、生きる意味を、失っていた。
そんな世界で、しかし僕は生きていた。
僕は今日、細い路地に座っていた。
路地の脆いコンクリートに、背中を預けて座っていた。
鉄臭い、錆びた臭いが鼻をつく。
しかし、生まれたときから嗅いでいる臭いだ。
この町に、この臭いに慣れていない奴なんかいないだろう。
と、いうより。
この臭いが世界の臭いだった。
コトリ、という音がして、手の中に何かが入る。石だった。
石に気をとられ、そっちを向いた突端、
背中の壁がぐらつき、もたれかかっていた壁が崩れた。
ゴス、という音と共に、ばらばらと壁が落ちてくる。
しかし、落ちた途端に煙になって、崩れていく。
「ゲホッ! ごほっ……」
そのまま倒れていたので、煙が入ってきてむせた。
しかし、激しくダルかったので、ダラリと倒れていた。
視界を四角形に切り取ったような形で、天井のないふきぬけのビルから空が見えた。
相変わらずの銅い空が見えて嫌になった。が、それよりも、この脆弱で脆く、穴だらけの世界が嫌になる。
世界がこうなったのにも、理由があった。
人は宇宙の無限の可能性に惹かれ、宇宙に手を広げた。
未知を求め、宇宙を探索したのである。
そんな中。
あるひとつの惑星で、ラグビーボールのような黒く鈍重に輝く結晶を見つけた。
それを見た人々は、その結晶に惹かれ、魅入られた。
その結晶は全部で6個あり、形も大きさも様々だった。
人は、人類の進化の可能性を見つけたような、そんな気分になった。
その結晶を地球に持ち帰ろうとした最中。
探索機クエストは小惑星メガロに衝突。
クエストは木っ端微塵になった。
その後、地球の一点にクエストのものであろう落下物があった。
それが落ちた瞬間、
世界の風化が始まった。
「あぁ……」
僕たち人類は、この世界が崩れ去っていく瞬間を待つだけだった。
手で目を覆い、僕はすべてを諦めたかのように、静かに目をつぶった。
どうでしょう。
皆さんの感想をいただけると嬉しいです、だそうです。