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蒼き英雄  作者: 雨宮結城
第二章 過去編
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第8話 最強

 ノネとサラがいると思われる場所へと向かうアスタとフーマ。


 「アスタ、やっぱ戻ろうぜ」


 「なんだよフーマ。最強剣士の戦いだぜ? レアすぎるだろ」


 「それはそうだけど……」


 フーマ自身も、気にならない訳ではない。むしろ気になる故に、アスタに強く説得ができない。


 「しかしあの二人速すぎだろ。見当たらないし」


 そんな時、どこからか視線を感じる二人。


 「なんだ?」


 「やっぱ戻ろうアスタ」


 「いやでも……」


 「あの二人が戦う相手だぞ。俺らじゃ何秒立っていられるか。いやむしろ足でまとい……」


 足音も呼吸音も、感じなかった。だがハッキリと、認識した。自分達の後ろに、ノネとサラではない別の《《なにか》》がいると。


 「お……まえ……たち……は」


 不気味な気配に話し方。アスタとフーマは動けなかったが、瞬きと同時に、二人は物陰に移動していた。


 「あれ……」


 「俺たち移動してる。なんで」


 場所が変わり困惑するアスタとフーマ。


 「全く……二人共大丈夫ですか?」


 「サラさん。俺たち」


 「フーマ君なら、分かってくれたと思いましたが」


 「ごめんなさい、サラさん」


 「まぁその話は後で。《《アイツ》》はノネが対処します」


 《《なにか》》の正体は、人の形をした魔物。まだ慣れていないが言葉を話し、そして少しの知恵がある。


 そんな怪物(モンスター)の目の前に立っているのが、最強剣士ノネ。


 「お……まえ……て……き」


 「……」


 自分達が相手になる所か、恐怖で固まっていた敵に、物怖じしないノネの姿を見て、改めて凄さを痛感するアスタとフーマ。


 「……」


 動かないノネ。どんな勝負をするのか、気になっている二人だったが、勝負は呆気なく、気づけばノネは、怪物(モンスター)を斬っていて、モンスターは時間差で少しずつ消滅していった。


 「今……」


 「見えたのか?アスタ」


 「いや、全く」


 完全に消滅する怪物(モンスター)。アスタ達の方へ歩いてくるノネ。


 「アスタ、フーマ、無事か?」


 「はい。あの、ノネさん」


 「ん?なんだフーマ」


 「えっと、ごめんなさい」


 「謝るなら、もうこんな真似はするなよ?」


 「はい」


 先程のノネとは違い、プロの風格を感じたフーマ。


 「で、お前は?」


 「えっと……俺は」


 「また、やるのか?」


 「え……」


 「アスタ、お前が強い者に興味を持ち、その強さを知りたいのは、私もそうだから分かる。だが、それで友達が死んだら、どうするんだ」


 「!……それは」


 「運が良く助かっただけで、本来なら死んでいた。友達を巻き込んでな。そんなのが、アスタの望みか?」


 「違い、ます。ごめんなさい」


 強く厳しい言葉だが、フーマはもちろん、特にアスタには強く響き、自分が取った行動を深く反省した。


 行動には結果が伴う。自分の行ないが、一分一秒の未来に何をもたらすのか、なにも考えずにした行動がいかに危険か、思い知った。


 「ノネさん」


 「ん?」


 「俺が剣士試験に受かったら、で……いや」


 「なんだ?」


 「剣士試験に受かって、貴女やサラさんの様な、強く立派な剣士を志します。そしていつか、俺も誰かの助けになりたい」


 剣士試験に受かったら、弟子入りし近くで学びたい。そう考えていたアスタだが、アスタはその言葉を口にはせず、自分で考えて、自分で戦場を駆け巡りながら、ホントの強さを探す決意を固めた。


 「ま、剣士試験にも落ちるようじゃ、私への弟子入りなんて、夢のまた夢だしな」


 「さすがに言いかけただけに、バレてましたか」


 「当たり前だ、でも口にしなかったな」


 「俺は、自分の力で、自分だけの剣士を目指します」


 「いい答えだな。アスタ、一つ聞くが」


 「なんですか?」


 「君は、力を何の為に使う。敵を倒す為?己の自己満足?それとも」


 「俺は、守りたい人の為に、力を使います」


 「子供のくせして、大人の回答だな。全員救う、とか言わないのか?」


 「ほんのさっきまで、そう思っていました。でも俺は弱い、誰かを救えるの前に、自分すら守れない、だから」


 「だから強くなる、か?」


 「なにか、変ですか?」


 「別に、変ではない。だが一つ言っておく」


 「なんですか?」


 「アスタ、お前は救える命しか救わないのか?」


 「何が言いたいんですか?」


 「それは至極職務的な回答だ。もちろん間違っている訳ではない。でもな、お前だからこそ言う。さっき自分が弱いと言ったな?」


 「言ったけど、それが?」


 「弱いと、誰かを助けちゃダメなのか?」


 「え……いやそんな事は、でも」


 「もちろん、お前は弱いし、助ける前に、自分の身すら危うい」


 「なら」


 「お前は、次にフーマや大切な人が危険にさらされ、絶対に敵わない相手と遭遇したら、どうする?勝てないから逃げるか?」


 「……」


 「難しいか?」


 「そりゃあ」


 「まぁ、私の考えもあるし、確かにイジワルを言った。だがアスタ、きっとお前なら」


 「俺なら?」


 「内緒」


 「え!! そこまで言ったなら」


 「お前なら、きっと分かる」


 ノネの言葉の真意は、この時のアスタにはまだ早かった。だが、ノネは心の奥底で感じていた。


 アスタは、権力や犯罪などの(けが)れに(おぼ)れることのない、志の強い剣士になると。

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