第7話 ともだち
~六年前 とある森にて~
「おいアスタ、今日も始めようぜ」
アスタに勝負事を提案するフーマ。ノネとサラにすらまだ会っていない時、二人はどこにでもある村で育ち、決して裕福とは呼べるものではなくとも、毎度一対一の勝負をしたり、モンスターを倒したりと、幸せな日々を送っていた。
そんなある日、村の近くに強力なモンスターが目撃されると言う情報を受け、当時ランク一位の上級剣士サラと、上級剣士という肩書きこそないが、最強剣士ノネ。
この二人がモンスター討伐の為、村を訪れた時、アスタとフーマに出会った。
「なぁフーマ、あの二人剣士だよな?」
「ん? あぁ、ノネとサラな」
「フーマ知ってんの?」
「いや、俺はと言うか、剣士を目指してる俺達じゃなくても、誰もが知る有名人だろ。ランク一位のサラに、最強と言われてるノネ、逆になんでアスタ知らないんだよ」
「へぇ~」
「ここまでくると、アスタは天然ってより、世間知らずだな」
「失礼な……まぁ否定はできないけど」
「だろ? にしても、そんな二人が何の用だろうな?」
「あの二人じゃないと、対処できないモンスター……とか?」
「そんな奴いたか?」
話していると、木剣を握っているアスタとフーマに、ノネとサラは興味を抱き、話しかける。
「君たちは、村の子か?」
「ノネさん」
「おや少年、私を知ってるんだな」
「有名人ですから」
アスタとノネの会話を聴きながら、フーマは思った。人から聞いたことを、さも知ってたかのようにドヤるアスタを見て、なにをドヤっているのかと。
「こんにちは、私はサラと言います。貴方のお名前は?」
「フーマって言います」
「フーマ君、いい名前ね」
「ありがとうございます」
「礼儀正しいのね、フーマ君」
「あいや、そんなことは」
「謙虚なのね」
「意外ですか?」
「まぁ、年頃の男の子にしては、ね」
「そうですか。あの、聞いてもいいですか?」
「えぇ、なんですか?」
「今回来たのって、モンスター討伐ですよね? そんなに強いんですか?」
「具体的な事は話せませんが、まぁ手を焼いているみたいです」
「ギルドが手を焼くって」
冒険者ギルド、言わば剣士と言う職業を登録するハローワークの様な場所。
だが中の雰囲気は方苦しくなく、誰でもウェルカムな飲み屋的な場所。
そんな冒険者ギルドには、一般剣士から上級剣士を含め、何百人と存在している。
頂点にいるノネとサラを除いたとて、腕のたつ剣士はいる。
だが、そんな中にも関わらず冒険者ギルドは、頂点の二人を指名し依頼した。
「なぁ、ノネってそんなに強いの?」
「おま! アスタ! 流石に敬語使えよ!」
年上のお姉さんに失礼と感じたフーマは、アスタの頭を下げさせる。
「ちょ! フーマなにすんだよ!」
「お前だよアスタ! 流石に敬語!」
そんな二人の事を、弟の様に見ていたノネとサラ。
微笑ましいと感じていると、森の奥から、獣の叫びが聞こえた。
ノネとサラは標的のモンスターと感じ、剣を抜く。
「フーマ君、アスタ君をお願いね」
「あ、はい」
ノネとサラは気づけば目の前から消え、十一歳の子供では、到底追いつけない速さで、向かって行った。
「すげぇ……」
「なぁフーマ」
「ん?」
「見に行かないか?」
「アスタ……それはバカだって」
「あの二人の邪魔はしないよ、あくまで遠くから見るだけ」
「そう言う問題じゃ……第一俺らは」
「あー、聞こえなーい」
フーマの正論を聞きたくないアスタは、森の方へと走り去ってしまった。
アスタは見たくて堪らないのだ、最強剣士がどんなものなのか、そんな純粋さが、アスタを動かす。
「おいアスタ! あー……怒られる……」