第1話 剣士
剣士、彼らは剣の達人にして、人類の希望。
モンスターと戦う真っ当な剣士もいる一方で、金儲けや名声目的で戦う者もいる。
剣士は自由な職業だが、それが故に真っ当な剣士が全体の何割を占めているかなど、一般人はもちろん、同業者でさえ分からない。
剣士にはランクが存在し、一から三の最強ランク、その他上級剣士ランクにランク外剣士。
最強剣士ランクは中でも特に優遇され、選ばれた極僅かな者しかなり得ない。
そんな中で、最強のパーティーと呼ばれているのが、アスタ含む四人が所属チームだ。
幼なじみで構成された彼らが最強と呼ばれているのは、上級剣士が三人もいる上に、その中の二人がランク二位と三位が所属している事実にある。
・アスタ ランク外剣士
・ユキ ランク二位の上級剣士
・ミユキ ランク外上級剣士
・サオリ ランク三位の上級剣士
「ただいま」
「あ、おかえりアスタ」
「ユキ達も今帰ってきたのか?」
「うん、クエストが早く終わったからね」
「そっか」
「アスタ、大丈夫?」
「え……まぁ、うん」
「無理はしないでね。 辛い時はボクも手伝うから」
「俺は大丈夫だよ、でもありがとう」
「……」
ユキはアスタが何をしてきたのか、知っている。今までどんな思いをしたのかも、ユキだけが知っている訳ではないが、幼なじみの中で、ユキが特にアスタを気にかけていた。
ユキがそこまでアスタを気にかけているのは、共にすごした時間と過去の出来事が関係していた。
四人がパーティーを組む前、まだ剣士にもなっていない五年前。
アスタとユキ達が始めて会った日、それはこの世界の残酷さをさも表す事だった。
五年前、ユキとサオリが十二歳、アスタとミユキが十一歳の頃、ユキ、ミユキ、サオリの三人は、犯罪剣士に家族を殺され、拐われた。
それまで優しい家族の元で育っていた三人、笑顔が絶えない戦いとは無縁の人生を送っていた。
そこにユキ達目当ての誘拐犯が現れ、邪魔な家族を皆殺しにしたのち、気絶させ拐った。
連れてこられたアジトには、ユキ達の他にもたくさんの少女がいた。
年齢が十歳から十六歳とバラバラではあったが、攫われた彼女達は洗脳教育を徹底され、誘拐の手伝いや人殺しに様々なご奉仕と、良いように弄ばれ、壊れていった。
逃げたくても、逃げようとした少女がどうなるのか初めに見せつけられ、逃げることもできなくなっていた。
おぞましい日々が続き、十人以上いた少女達が、他殺や自殺を含め、ユキ達しかいなくなったある日、アジトに乗り込んだ者達がいた。
それこそが、当時最強と呼ばれたノネにサラ、そしてアスタだった。




