輸送船
とある船内。廊下の小窓から貨物室を見下ろす彼の顔は険しさを増すばかり、そして通りがかった船員に彼は声をかけた。
「あの、あの」
「ん? どうした。ああ、お前、新人だな。聞きたいことでもあんのか?」
「はい……あの、ここの管理方法ですが大丈夫なんですか?」
「んー? 大丈夫って?」
「いや、せっかく見つけた新種をあんな雑に纏めて……」
「おいおい、はぁ……まあ、息巻くのは良いがもっと肩の力を抜けよ。改善案なんか出しても給料増えるどころか上から煙たがれるだけだぞ?」
「いや、そういうわけでは……ただ、過密すぎないかと……」
「問題ないさ。国に着くまでそう時間はかからないし、一応歩けるだけのスペースはあるからな」
「そうでしょうか……でも、あそこ、明らかに死んでますよね……?」
「んー? ああ、はははっ確かにそうだな。弱い個体だったんだろう。ま、自然淘汰ってやつだな」
「あとあと問題にならないでしょうか……。ほら、倫理委員会から何か言われたりとか」
「ははははっ! 利益優先! お国のためなら許されるのさ。他の国も動き出してるしな。乱獲上等。こいつらのためでもある」
「え、彼らのため? それはどういう……」
「ん? こいつらもな、おれたちの保護下に入り、種を存続させられるってわけよ。共生関係ってやつさ」
「ああ、はい……でも」
「なんだよ。まだなんかあんのかよ」
「はい……。管理方法が雑というのは、もう一つ意味がありまして、ほらあれ、あそこのあいつです。さっきから観察してたんですけど、他の個体よりかなり頭が良さそうで、ほら顔つきも。あれがみんなを先導し、反乱を起こしたりとか……」
「ああ、大丈夫だ。積み込む前にちゃんとその辺は叩き込んであるし、前にも似たことがあった。ほら、そいつの周りのやつの顔を、よーく見てみろ。お、とくにあいつだ」
「え……? あ、え!?」
「な。問題ないだろ? ああして周りの連中が勝手に殴り出すんだよ」
「でも、な、なんででしょうか?」
「さあな。おれは生物学者じゃない。ただの輸送船の乗組員さ。殴って整えるんじゃないか? 頭をさ」
「ストレスですかね……凶暴な生き物ですね……」
「ちゃんと首輪をつければ平気さ。チキュウ産のニンゲン。こいつはまだまだ売れるぞぉ」