入学試験 3
砂利ついたお昼を食べ終えた後。
ようやく実技試験の時間となった。
会場は校庭だ。
一に基礎能力試験。
二に特色能力試験。
複数の試験官により同時進行中である。
終えたものから帰ってもいいが、残って周りの実力を窺ってる者が多い。
「「あの人の雷魔法すごかったね...」」
受験生間での品評会。
会話の節々に、属性名称が使われている。
魔法には区分があるらしい。
火・風・雷・土・水・光・闇・無
だったけか。
だが、試験の対象ではない。
シンプルに世界に干渉する力を審査するらしい。
なんかカッコイイからという理由で、属性区分が生まれたんだと。
「「ぉお...」」
ひときわ歓声が絶えない時間もあった。
あのお嬢様の出番の時だ。
空には水泡の数々。
丸みを帯びた水泡は、形を変えて棘状に。
棘となった水泡は、硬さを変えて氷状に。
かと思えば、最初の状態に戻り。
今度は無数の水泡が凝集し、一つの水泡となる。
そのまま大きな氷の棘となり。
最後は粉吹雪となって散っていった。
なるほど。
これが一流レベルの基準なのか。
覚えておこう。
「次は受験番号×××、ケイン!」
「はい」
名前を呼ばれて前に出る。
ざわついた空気が消え、静寂が訪れた。
平均レベルはこれまでの見学で把握済み。
基礎試験はこれに合わせる。
特に理由はない。
いや、その方が面白くなる予感がした。
「「なんか、普通だね...」」
さて、問題は特技のお披露目だ。
基礎試験よりもこちらに重きが置かれている。
失敗すれば、不合格が一気に近づく。
「では、私は脱糞魔法をおみせし 」
「真面目にやりなさい」
「はい」
間髪入れずにやってくるツッコミ。
はて、どうしたものか。何をお披露目しようか。
「では、疑似召喚魔法 マ・オウ をお見せします」
「一応聞いておきますが、危なくない魔法ですよね...?」
「はい。魔王のそっくりさんを召喚する魔法です」
「...よろしい。やってみせなさい。許可します」
「サモン マ・オウ!!」
みるみるうちに暗雲が立ち込め、辺りを暗く包み込む。
闇雲から一閃のイカズチが落雷。
凄まじい雷鳴に皆の身体が条件反射でぶるりと震える。
現れたのは人の姿。
威厳のある顔つきに、立派な黒い双角。
線は細いが圧倒的な存在感。
どうやらご健在のようだ。
「はい、こちらがマ・オウさんのそっくりさんです」
「あ? お前はなにをいってい」
「マ・オウのそっくりさんです」
困惑の表情を浮かべた魔王だったが、状況を理解した様子になる。
そんな魔王に耳打ちで段取りを仕込む。
「それでは、マ・オウさんにインタビューをしたいと思います。 自己紹介をお願いします」
「24歳、学生です」
「彼女とかはいるの?」
「今はいないです」
「ふ~ん」
一時の沈黙が流れ。
「ちなみにカンチョウをすると怒ります」
カンチョウのポーズをとってみせる。
刹那、黒い波動が魔王から円状に放たれた。
「...」
これ以上は許さないという、意思の表れだったようだ。
顔を合わせるのが恐い。
「はい、人語を喋るマ・オウのそっくりさんでした。お帰りになって構いませんよ」
「一つ貸しだからな...」
黒霧となって霧散した魔王。
ちなみに24歳というのは本当だ。
「ケインさん、本物じゃないですよね...?」
「ええ、マ・オウのそっくりさんです」
俺の特技お披露目は無事成功に終わった。