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桜紅初恋(オウコウ・チューリエン)1月24日番外更新☆  作者: 白師万遊
第二幕:~.。.:*✽桜紅の結び✽*:.。.~
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第十三集:報告


 天上界(てんじょうかい)外城(がいじょう)、神々が天地(てんち)を行き来する中央往来(ちゅうおうおうらい)()を使い、ハオティエンとウォンヌは天上界に昇ってきた。

 中央往来(ちゅうおうおうらい)()は四角形の断面を持ち、上方にいくにつれて徐々に狭まった、高く長い直立の石柱(せきちゅう)だ。先端部分は四角錐になっていて、金の薄板(うすいた)で装飾されてある。


 「じゃあな、ウォンヌ」


 「ああ」


 ハオティエンと別れたウォンヌは五事官(ごじかん)が務める五法殿(ごほうでん)に足先を向けた。

 五法殿(ごほうでん)芥子色(からしいろ)釉薬(ゆうやく)が塗られた薄手の平瓦(ひらがわら)が特徴的だ。裏は(はす)の花の形をかたどった庭園がある。床は石床(せきしょう)で、表構えは三階建てと大きい。


 五事官(ごじかん)鬼界(きかい)狐界(こかい)狼界(ろうかい)鹿界(しかかい)下界(げかい)、の五界(ごかい)すべての界事(かいじ)を担う天上界で最も忙しい官職(かんしょく)だ。

 五界(ごかい)に関した会議、猟奇(りょうき)事件や怪奇(かいき)事件の解決、神員(しんいん)配置、転仕、神材(しんざい)育成、処遇管理、安全性管理、能力や成果の評価制度の運用、任務能力に関する事柄、現場支援、格官職(かくかんしょく)との連携及び指導に助言、昇給昇格、等々(などなど)、幅広い業務を請け負っている。進捗(しんちょく)管理能力や臨機応変(りんきおうへん)な対応力が欠かせない大変な任務内容だ。(ゆえ)にウォンヌは五事官(ごじかん)を志願せず武官(ぶかん)になった。


 「――ウォンヌ、お疲れ様です」


 途中で中級三神(ちゅうきゅうさんしん)神官(しんかん)界事(かいじ)を司る男神(おがみ)五事官(ごじかん)(おさ)ウリと邂逅(かいこう)する。既視感(きしかん)を覚えた。ウリに予知能力はないが、こちらが出向く(たび)に待ち伏せされては疑いたくもなる。


 「お疲れ様ですウリ様、偶然ですね」


 「いえ必然です。アナタが来る頃合いを見計らい待っていました」


 硬直的(こうちょくてき)でない柔軟な思考が推測の的中率を上げているに違いない。優先順位を明確にし物事を論理的に考える。さすがは五事官(ごじかん)(おさ)だ。


 ウリは五事官(ごじかん)の服装規定、長袍(チャンパオ)を着用している。亜麻色(あまいろ)のロング丈だ。ゆったりとした袖口(そでぐち)白襟(しろえり)との二重襟(にじゅうえり)で、(そで)は折り返しカフス白袖(しろそで)になっている。ビンテージな立ち(えり)で胸元に並んだ三つ葉のチャイナボタンは金色だ。両サイドにスリットが入っており褌衣(ズボン)は白、花柄が刺繍された布製の靴を履いている。滑らかな曲線を描く靴先は丸い。

 

 容姿はパッチリの金目に上下長い睫毛、細い鼻筋に小さな小鼻、目元に濃い(くま)がある。あどけない、ベビーフェイスの顔立ちだ。髪は金色、髪型は前髪を眉上で、後ろ髪は首付近で、切り揃えられていた。所謂(いわゆる)おかっぱ頭の髪型だ。両耳に縦二十センチ、横五センチの神札(しんさつ)のピアスが吊り下がっている。息子ウォンヌとお揃いであった。


 「……遅くなり申し訳ありません」


 「いえ、(つい)でです。お気になさらず。報告は簡明(かんめい)にお願いします」


 簡潔(かんけつ)な語呂だ、無駄がない。てきぱきした口調でウリに促され、ウォンヌが本題に入る。


 「はい。柳緑村(りゅうきょくむら)()ける討伐(とうばつ)案件の結果ですが、彷魂(ほうこん)(あやつ)り人間三十六名を殺戮(さつりく)した主犯の四混種(しこんしゅ)ケッキ死亡、青銅面具(せいどうめんぐ)彷魂(ほうこん)全浄化、首謀者(しゅぼうしゃ)緑鹿(りょくじか)――四混種(しこんしゅ)を創り、人間クリシュナを殺害した万季地(まきじ)緑鹿(りょくじか)――(ばく)の協力で逃亡、以上になります。こちらに詳細をまとめました」


 ウォンヌはウリに数枚の書類を手渡した。受け取るウリの溜め息は深い。


 「ありがとうございます。はあ、緑鹿(りょくじか)は逃げましたか」


 「……完遂(かんすい)に至らず、すみません」


 「主犯格は天罰が下ったのです。悲観せず、皆さんの無事が第一ですよ。鬼界(きかい)三災鬼(さんさいき)狐界(こかい)三毒狐(さんどくこ)狼界(ろうかい)三厄狼(みやくろう)鹿界(しかかい)二凶鹿(にきょうじか)は折り紙付きの(あく)です。彼らは神々を滅ぼす強さがある、力量は天上界の上位神(じょういしん)に相当します。僕たちは互いを干渉しない不文律(ふぶんりつ)で天地の均衡(きんこう)を保っている要素がありますが、近年、表立って彼らが下界を(おびや)かす所業は座視(ざし)するに忍びないですね……はあ」


 確かに数千年の歴史上、三災鬼(さんさいき)三毒狐(さんどくこ)三厄狼(みやくろう)二凶鹿(にきょうじか)が自ら下界に(おもむ)き、人間を襲う事例は少ない。大抵は下っ端に計画を実行させ、自分は高みの見物だ。

 気紛れなのか、意図的なのか、どちらにせよ見過ごせない。


 「……悔しいですが、万季地(まきじ)鹿力(しかりょく)に勝る孤魅恐純(こみきょうじゅん)の一撃がなければ、僕かハオティエンのどちらかが消滅させられていたかもしれません」


 (ばく)万季地(まきじ)を連れ撤退した要因のひとつに、火鬼(ひおに)の存在もあったはずだ。


 「天の導きはアナタ方ふたりを生かした。それもまた実力のうちです」


 「……はい」


 ウリに諭されたウォンヌは頷かざるを得ない。天の導き、(すなわ)天帝(てんてい)天上皇(てんじょうおう)御心(みこころ)でウォンヌとハオティエンは助かった。断じて「孤魅恐純(こみきょうじゅん)のお陰」ではない。しかし事実、不快だが、そう言った経緯になっていることは(いな)めない。ウォンヌは緑鹿(りょくじか)火鬼(ひおに)を脳裏に浮かべ、和弓(わきゅう)の威力を上げるべく、このあと精極殿(せいきょくでん)に寄って鍛錬しようと心に決めた。


 疲労困憊(ひろうこんぱい)気味のウリが、目頭(めがしら)を親指と人差し指で摘まみ聞いてくる。


 「タリア殿に怪我はないんですよね?」


 「はい」


 ウォンヌは二つ返事をした。話が切り替わり若干、空気が和らいだ。


 「ご婚約の件は? 三百年後の人言(じんげん)(まこと)で?」


 「……まあ、認めておりました」


 「タリア殿に先日、口頭(こうとう)ハッキリ(・・・・)、僕は訊ねそびれました。恋人は目視(もくし)で確証が……、婚約は確たる証拠が?」


 「天上皇(てんじょうおう)が三百年後、タリア様を火鬼(ひおに)に嫁がせる証、菊結(きくむす)びのタッセル――」


 「俺は認めん!!」


 突如(とつじょ)、ひとりの男神(おがみ)が会話に割り込んでくる。序列四番目の神官(しんかん)、戦いを司る神、武官(ぶかん)(おさ)アレスだ。あからさまに機嫌が悪い。


 身に(まと)黒軍衣(こくぐんい)はウォンヌと同様の形状で、靴も黒い長靴(ちょうか)と一緒だった。これが武官(ぶかん)の服装規定になる。二人の軍衣(ぐんい)で異なる箇所は金色の肩章(けんしょう)、ズボンサイドを囲む緋色(ひいろ)(ふち)黒軍帽(こくぐんぼう)の鉢巻と天井部のパイピングが緋色、この三点だ。腰に差す軍刀の刀帯(とうだ)(つか)(さや)も緋色で統一されてある。


 容貌(ようぼう)は小顔のすっきりとしたしょうゆ顔だ。瞳と長い睫毛は黒、目元に沈着した(くま)は今日は比較的薄い。黒髪の長髪は頭部の高い位置で束ねられている。ハオティエンに瓜二(うりふた)つなアレスは正真正銘、彼の父親だ。


 「うわ!! 何ですかアレス武官長(ぶかんちょう)、いきなり!」


 「清浄潔白(せいじょうけっぱく)なタリア様が可哀相だ。口八丁手八丁くちはっちょうてはっちょう火鬼(ひおに)に騙されてんだろ?」


 天上皇(てんじょうおう)に忠義が厚いアレスは、天上皇創りし最後の男神(おがみ)上位神(じょういしん)タリアを渇仰(かつごう)して止まない。タリアと孤魅恐純(こみきょうじゅん)の噂も(かたく)なに信じていなかった。


 「まあアレス武官長(ぶかんちょう)に同感です」


 相手は三災鬼(さんさいき)火鬼(ひおに)だ。即刻、火鬼(ひおに)と絶縁してほしい願望はある。


 「今日は愚鈍(ぐどん)じゃねえな、ウォンヌ」


 「今日()、ですが」


 「――って、何かお前(ほこり)っぽくねえか?」


 アレスがウォンヌの肩を叩いた。砂埃(すなぼこり)が舞い、潔癖症のウリがスススと後退る。(ばく)の能力、砂蟻地獄(しゃぎじごく)のせいだ。


 「……放っておいて下さい」


 「はーん? 神兵(しんぺい)が情けねえ、ハオティエンは?」


 「更に酷いですよ」

 

 「ハッ、ざまあねえな」


 アレスは鼻で笑った。語法(ごほう)の欠如は今更だ、息子ハオティエンが指摘しても直らない。


 「じゃあ僕は、そろそろ失礼します」


 ()(かく)いまはお湯を浴びたい。清潔にしたい。消毒したい。ウォンヌが(こうべ)()れ挨拶をしたが、アレスがウォンヌの首に腕を回し引き止める。


 「おいウォンヌ、待て」


 「嫌です。ちょ、武官長(ぶかんちょう)、ゥオ()ッ!!」


 「タリア様と火鬼(ひおに)別離(べつり)させる案を練るぞ」


 「いまですか!? 僕は――」


 「タリア様奪還の会、結成だ。来い」

 

 アレスは強制的にウォンヌを引き摺って行った。ウリは(ひじ)(じく)に綺麗な所作(しょさ)で手を振っている。そして二人の背中を見送りながら「ストレスですかね、やはり」などと独り言ちていた。

 

 

最後まで読んで頂きありがとうございます(*´Д`)


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また次回もよろしくお願いします<(_ _)>

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