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桜紅初恋(オウコウ・チューリエン)1月24日番外更新☆  作者: 白師万遊
══⊹⊱••❖火鬼外伝❖••⊰⊹══
30/134

第零集:神は君だけ(前)

 

 下界(げかい)鬼界(きかい)狭間(はざま)にタリアと(ほむら)はいた。

 タリアの「ちょっと出かけてくる」に焔が付いてきた結果だ。


 「――タリア、いったいこんなところに何があるの?」


 自ら好み進んで行く場所ではない。タリアも知っているだろう。

 文龍(もんりゅう)の一件が脳裏に甦る焔は(いささ)か気分が悪かった。


 きょろきょろ周囲を見渡しながら呟くタリアが何かを発見する。


 「んー……、ないな。昔はよくあったんだ……、あっ! あった! あれだよ焔、こっちに来て!」


 「タリア急がないで、転ぶと危ない」


 タリアに左手を引っ張られる焔は導かれるがまま付いて行った。すると一本の木の下に辿り着き、タリアは繋がる手をするりと解いて座り込んだ。


 「――これは三百幸石(さんびゃくこうせき)だよ」


 焔は瞠目(どうもく)する。綺麗な四角錐で積まれてある石があった。


 「――――」


 「焔は知らないのかな? 三百の石を積んで願い事を唱えると、天上界の神に願い事が届き、叶えてくれる。そんな願掛けがあるんだ」


 「……へえ」


 タリアの説明に焔は相槌を打ち、下唇(かしん)を噛んだ。俯く焔はタリアの声に耳を傾けている。


 「三百幸石の起源は定かじゃないが、四界(しかい)の者しかやらない。下界のように祈りの場は極端に少ないし、何より四界は神々が嫌いだ。きっと三百幸石を行う者は、嫌いな神に祈願したくなるほどの事情があり、こっそりやっているんだろう。願いは皆平等に届けてあげたい。私は下界に降りた際、たまにこうやって彼らの願いを天上に導いている」


 そう言って、タリアは能力で天灯(てんとう)をパッと取り出した。三百幸石に右手(みぎて)(ひら)(かざ)し、込められている願いを丸い光に形成して、天灯の紙袋内に優しく慎重な手つきで入れる。本来天灯は油を燃焼させ空気の過熱を行うが、願いの灯火(ともしび)はそれ以上の熱を感じさせた。

 

 タリアは立ち上がり、広い空間に移動する。


 「――届真願天(かいしんがいてん)


 願いが天に真っ直ぐ届くよう告げ、タリアが天灯を天上に放った。純真無垢な眼差しで空を見上げるタリアの横顔は神々しい。


 タリアは焔が見つけた空虚を埋めてくれる存在だ。見返りを求めずに自分を助け、信じ、許し、愛してくれる。焔はタリアに出逢い生きていく意義を見出した、触れば崩れそうな尊く儚いタリアを守るためだ。


 『――どこかにね、いるよ!! 火鬼(ひおに)のお兄ちゃんを助けてくれる人!! それでね、火鬼のお兄ちゃんが助けてあげたい人!!』


 焔はタリアを背中から抱き締める。


 「――焔?」


 「……本当にいた」


 焔はとある昔、小鬼(こおに)に言われた言葉を思い出していた。それは彼が天上皇(てんじょうおう)に封印されるきっかけとなった五百年前に(さかのぼ)る話だ――。

最後まで読んで頂きありがとうございます(*'ω'*)

プロローグなのでちょっと短いです!

今日から外伝少し続きます、楽しんで頂けたら嬉しいです。


感想、評価、レビュー、ブクマ等、とても励みになります<(_ _)>

また次回もよろしくお願いします!

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