表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
桜紅初恋(オウコウ・チューリエン)1月24日番外更新☆  作者: 白師万遊
═════⊹⊱❖黑の章❖⊰⊹══════
129/134

第五集:軋み始める


 天上界内城(ないじょう)、上空に天地、宇宙、万物の創造主、天上皇(てんじょうおう)と直接の拝謁(はいえつ)、接触ができる聖域の場所、善悪と汚れのない聖天(せいてん)()はあった。

 聖天(せいてん)()は十二枚の翼を持つ、天上皇(てんじょうおう)創りし上級三神(じょうきゅうさんしん)上位神(じょういしん)しか、辿り着けない天と宇宙の狭間(はざま)にある。

 宙に浮く薄い円形の土台、床は大理石だ。円の(ふち)に添って描かれた天上皇(てんじょうおう)御言葉(みことば)は均等で精密、中央に(ほどこ)されてある天上皇(てんじょうおう)の左目の彫刻は立体的に(くぼ)んでいた。


 惑星や銀河が圧倒的な存在感で煌く蔵藍(ツァンラン)の本源的な真如(しんにょ)虚空(こくう)界に、神秘的な白いベールがかかっている。一列に並んだ上位神(じょういしん)を見下ろす輪郭の(かす)んだ玉面(ぎょくめん)の正体は天上皇(てんじょうおう)だ。


 召集されたすべての上位神(じょういしん)、長男エル次男ルキを始め、十二人が拱手(きょうしゅ)している。

 

 「――父上、如何様(いかよう)なご要件でしょうか」


 十二人は突然、天上皇(てんじょうおう)に呼び出され、現状を把握していない。


 「――新しい(しゅ)を創った、皆に紹介しよう」


 「――――!?」


 天上皇(てんじょうおう)御言葉(みことば)は唐突で上位神(じょういしん)は一様に驚いた。刹那、周囲が光閃(こうせん)する。全員が一瞬、(まぶた)を瞑り、ゆっくり開目(かいもく)した。


 上位神(じょういしん)の眼前にひとりの男が直立している。白い一枚布で体を巻いていた。眉目が端正な相貌(そうぼう)で、二重瞼(ふたえまぶた)の茶色い虹彩(こうさい)に短髪の髪、翼はない。身長は凡そ175㎝弱だ。


 「――名はアダムだ。地面を由来に末尾(まつび)に血の語根(ごこん)を読ませた名になる。お前達に似せ、地上の土で創った」


 「……地上、大地の土で創ったのですか?」


 天上皇(てんじょうおう)の紹介は簡略で、エルが問い直す。厳顔(げんがん)は硬い。


 「――ああ。地上を下界とし、お前達と異なる種族、人間を住まわせる。アダムは人間の祖先となる一歩、私の計画のひとつだ」


 天上皇(てんじょうおう)天声(てんせい)が七色に響き渡った。彼の壮大()つ無限な知恵、思想、計画で我々生物は支えられ、導かれ、森羅万象は流転する。


 「計画計画ってなジジイ!! 下等なモン造りやがって!!」


 ルキが柳眉(りゅうび)を逆立て、天上皇(てんじょうおう)に噛み付いた。


 「落ち着けルキ……ッ!!」


 「何でお前は落ち着いてんだよ!? エル!! 土で創った人間だあ!? ハッ、ふざけんじゃねえぞジジイ!!」


 ルキの右隣にいるエルが(なだ)めたが、双子の片割れの怒りは収まらない。そんなルキを意に介さず、自己完結した絶対的で永遠なる真理の天上皇(てんじょうおう)は、栄光を与えた上位神(じょういしん)に命令する。


 「――私が前途を祝したアダムに跪拝(きはい)せよ」


 「…………ッ」


 上位神(じょういしん)天上皇(てんじょうおう)以外に(ひざまず)くことはない。天上皇(てんじょうおう)の次に崇高で能力と地位が高い神だからだ。上位神(じょういしん)天上皇(てんじょうおう)の命令に従えば事実、アダムは自分達以上に寵愛(ちょうあい)されし被造物と認めたも同然となる。

 

 上位神(じょういしん)が生まれた理由は天上皇(てんじょうおう)を尊重するためだ。自然の摂理、宇宙の法則、天上皇(てんじょうおう)下命(かめい)に彼らは背けない。


 エル、ラファフィル、シリス、クロス、キッド、シュトリアと両膝を突いた。女神達三人も続き、タリアも膝を曲げるが、寸前で右隣に立つ人物、ルキに腕を掴まれ阻止される。タリアを射抜いた黒い点の瞳孔(どうこう)は鋭い。白銀の睛眸(せいぼう)は毒々しい憤懣(ふんまん)で渦巻いている。


 「綺麗で尊い神魂(しんこん)を灯すお前が、臭い土の(たましい)()(つくば)るな」


 「私も御免だよ、父さん。私は聖なる炎、アダムは単なる土だ。跪拝(きはい)はあんまりだろ。お前達は父さんに文句のひとつも言えないのか?」


 ルキの発言に上位神(じょういしん)の三男、リイガウが同調し、低声で天上皇(てんじょうおう)諫言(かんげん)した。雄黄(ゆうおう)漢服(かんふく)上衣下裳(じょういかしょう)上衣(じょうい)(ほこり)を指先の(こう)で掃い、(まぶた)を半眼に上位神(きょうだい)を見据えている。リイガウの反撥(はんぱつ)を無視したそれぞれの片顔は、確固たる()への忠誠心で満ちていて、リイガウは小さく舌打ちした。


 エルがルキを見上げ、白い漢服(かんふく)の袖口を引っ張る。


 「ルキ、タリアと座れ。リイガウも、父上に歯向かうな」


 「エルお前ッ、上位神(じょういしん)の誇りはねえのかよ!? アイツは威光のない土人形だ!!」


 「ルキ、ね、父上を困らせちゃだめだ」


 タリアもエルに加勢した。ルキの手首を掴み、跪拝(きはい)を催促する。けれどルキはふたりの手を振り払い、天上皇(てんじょうおう)とアダム、上位神(きょうだい)達に背を向けた。


 「俺は無理だ」


 「私も賛同しないね」


 天上皇(てんじょうおう)の命令を拒んだ神はいない。ルキ、リイガウが天上界の純白な歴史に漆黒の汚点を残してしまう。


 「――私の可愛い子等(こら)達よ、私は違背(いはい)()しとしない。追放されたいか」


 「なにが可愛いだよジジイ、笑わせんじゃねえ。お前の愛情の一番はソイツに移った、俺は御免だ。追放したきゃ勝手にしろ、テメエの脅しで俺の意思が変わると思うなよ」


 「私も賛成し兼ねるね、私が悪いんじゃねえ。父さんが私の愛を裏切ったせいだ」


 「待て!! ルキッ、リイガウ!!」


 エルが呼び止めたが、ふたりは場を去ってしまった。

 アダムの誕生で上位神(じょういしん)兄妹弟(きょうだい)達の、一本の道が枝分かれする。誰も想像していなかった、悲して苦しい、切ない未来の現実だ。

おはこんばんは、白師万遊です( ³ω³ )

最後まで読んで頂きありがとうございます!


感想、レビュー、評価、いいね、ブクマ、フォロー等々、

頂けると更新の励みになります(*´˘`*)♡


✄ - - - - - - - - - -✄ - - - - - - - - - -✄

今年ももう半分が過ぎ去ろうとしています(こわい話)

まだまだ正月気分が抜けない白師ですが、

今日ものらりくらり笑顔で無理せず自分らしく頑張りたいです( ˙︶˙ )

皆さんの一日が笑顔で溢れますように(*´∇`*)


また次回の更新もよろしくお願い致しますm(_ _"m)ぺこ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ