表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
桜紅初恋(オウコウ・チューリエン)1月24日番外更新☆  作者: 白師万遊
═════⊹⊱❖黑の章❖⊰⊹══════
128/134

第四集:手製の贈り物


 「――エルお前、日に日に器用になっていくな」


 「――まあな」


 頷くエルの手元を覗くルキは感心している。興味津々な眼差しだ。


 ()(こく)正刻(せいこく)、ルキとエル、タリアの三人はエルの宮殿、正風殿(せいふうでん)にいた。エルはタリアが着ている撫子色(なでしこいろ)漢服(かんふく)上衣下裳(じょういかしょう)の太い長春色(ちょうしゅんいろ)の帯に、紐を用いて作った手製の中国結びを(くく)りつけている最中だ。飾り紐は紫薇花(ツーウェイホワ)色の前掛けと同じ長さで、連なった質の良い六種の(ぎょく)薔薇石英(しょうびせきえい)翡翠(ひすい)黄玉(おうぎょく)が輝いている。中央に透かし彫り細工された桜の花は金属製で精巧だ。垂れる(ふさ)は白い。


 取り付けられた希少価値のある高価な贈り物は優美でタリアに似合っていた。


 「ありがとうエル、大事にするね」


 「ああ」


 「――で、俺の分は?」


 ルキがタリアの右肩に左腕を乗せ、低声でエルに訊ねる。にっこり浮かべた笑顔は黒い。


 「ない」


 エルは臆せず断言した。果然(かぜん)の返答だ。


 「っんでだよ!! 俺も欲しい!!」


 「欲しいってお前、飾り物は好きじゃないだろ」


 エルの見解は正しい。ルキはあまり好んで飾り物は付けない。

 

 「タリアと揃いは別だ!」


 単純明快な理由だ。ルキは柳眉(りゅうび)(しか)め、エルを睨んでいる。その隣でタリアは苦笑していた。ルキの駄々は意見が通らない限り(しず)まらない。タリアは無論、双子エルや上位神(じょういしん)兄姉弟(きょうだい)達が既知する事実だ。


 「……はあ、わかった。時間をくれ」


 エルが溜息を吐き承諾した。主張の相違は大抵、口喧嘩に発展する前でエルが根負けする。双子の性質は釣り合いがいい。


 「っしゃ、ありがとなエル!」

 

 「良かったねルキ、エル、ありがとう」


 ルキの喜ぶ姿にタリアも礼を告げた。にこにこ、顔周りで小花を飛ばしている。もちろん幻視(げんし)だ。実際に舞ってはいない。

 

 「おいエル、俺タリアが可愛すぎて到頭(とうとう)、幻覚が見え始めた」


 「案ずるなルキ、俺も花々が見えた」


 「…………?」


 ふたりに直視されるタリアは小首を傾げていた。きょとんと両目を丸め、パチパチ(まぶた)を瞬かせる仕草も愛らしい。


 「あ~……、タリアに俺も何か作りてえな……。エル、俺が作れるのあるか?」


 エルに問うルキの言葉で、名案が(ひらめ)いたタリアが提案する。


 「ねえルキ、アライアに作ってあげて」


 「あ? なんだタリア、俺の手作りは嫌か?」


 ルキの不機嫌を含んだ語調は刺々(とげとげ)しい。


 「嫌じゃないよ。でもアライアはルキの許嫁(いいなずけ)、恋人でしょ? きっと喜ぶよ」


 ルキは先日、女神アライアから告白を受け、自分の許嫁とした。タリアもルキ本人に聞いて知っている。祝言は来月、一カ月後だ。


 アライアが嬉々としてタリアに報告した記憶は新しい。


 「勘違いするなタリア、俺とアイツが許嫁で結婚しても、俺の寵愛(ちょうあい)畢生(ひっせい)お前にある。お前にしない贈呈はアイツにしない」


 「…………」


 絶対だ、と鋭い語気で足されるタリアはルキの趣意(しゅい)を読めず黙ってしまった。彼の真意を汲み取り理解できる者はエルだけだ。


 「ルキ、簡単なものを教えてやる。タリアとアライアにそれぞれ、作ればいい。俺はタリアにお前と揃いの飾りを作らせる」


 「成立」


 ルキがエルに右手の親指を立て、あっさり首肯した。とんとん拍子で決まり、タリアは呆気にとられる。桜色の瞳が困惑で揺れていた。


 「え、成立? 私はいいけど、ルキはいいの?」


 「ああ。タリア、しっかり作れよ」


 ルキの判断は謎だ。しかしエルが目線で「承允(しょういん)しろ」と言っているため、タリアも深くは詮索しない。


 「……うん、頑張るね。ルキのも楽しみにしてる」


 「任せろ」


 力強い返事をしたルキが数日後、恵愛(けいあい)するタリアに贈進(ぞうしん)した物はタリアの漢剣(かんけん)を彩る、手の込んだ飾り宝具、宝飾品(ほうしょくひん)であった。一方のアライアは鈴と(はす)が装飾されてある扇形の意匠(いしょう)が細かい耳飾りだ、先端に連結された水色のフリンジはアライアが司る典雅(てんが)をイメージしたらしい。

 因みにエルがタリアに贈った中国結び、飾り紐はタリアの手業(てわざ)でエルとルキ、三人のお揃いになっている。


 タリアの粋な計らいでエルが大層、悦喜(えっき)し、涙し、ルキに笑われタリアが焦ったことは――語るまでもない。

 

おはこんばんは、白師万遊です٩(*´︶`*)۶

最後まで読んで頂きありがとうございます*ଘ(੭*ˊᵕˋ)੭*


感想、レビュー、評価、いいね、ブクマ、フォロー等々、

頂けると更新の励みになります(*´∀`*)( ˃ ˂ )


また次回の更新もよろしくお願い致します(๓´˘`๓)♡

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ