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桜紅初恋(オウコウ・チューリエン)1月24日番外更新☆  作者: 白師万遊
═════⊹⊱❖黑の章❖⊰⊹══════
127/134

第三集:三番目でいいなら

 

 (いぬ)(こく)正刻(せいこく)、太陽が沈んだ天上界上空は立体的な天の川銀河で煌いていた。宇宙(うちゅう)(じん)(まと)まった天体、高湿の赤い散光星雲(さんこうせいうん)や、惑星の光源の影で浮かんだ黒い暗黒星雲(あんこくせいうん)が隣接している。幻想的で神々しい光景だ。


 「――お、若い星あるじゃん」


 ルキは十二枚の翼を使わず星々を眺めながら、天上界内城(ないじょう)、東南の夜道を歩いていた。内城(ないじょう)外城(がいじょう)を見回り、上位神(じょういしん)の身辺や宮殿の警戒と警備を担う神々、巡邏官(じゅんらかん)の少ない道を選び、辿り着いた場所は蓮包殿(れんほうでん)だ。控えめな青色の屋根瓦と高麗門式(こうらいもんしき)冠木門(かぶきもん)が特徴的な宮殿になる。木造建築で雅趣(がしゅ)に富んだ角楼(かくろう)がふたつ(そび)えていた。


 外壁に施されてある極彩色の装飾は巧緻(こうち)美事(みごと)だ。床は磨かれた石床(せきしょう)が敷き詰められてある。


 「――呼び出してごめんなさい、ルキ」


 宮殿の主人、上位神(じょういしん)アライアに出迎えられた。典雅と優美を司る女神だ。

 

 アライアは二重瞼(ふたえまぶた)薄花色(うすはないろ)睛眸(せいぼう)、美眉で水分が豊富な唇、目縁(まぶち)は水色の化粧が上品に施されてあった。婉容(えんよう)な顔立ちは美しい。

 薄花色(うすはないろ)の長髪はハーフアップで団子状に結い、玉石藍(ユーシーラン)のリボンで結び、外巻きと縦巻きにふんわり巻いてある。

 服装は天空(セレストブルー)色の漢服(かんふく)襦裙(じゅくん)だ。衿元(えりもと)が右前の短い上衣(じょうい)(チョゴリ)鮮やかな青(ダックブルー)の腰紐、下裙(したも)はウエストスカート状を着用していた。靴は襦裙(じゅくん)と同色の布靴を履いている。左右にあしらわれた蝶々の刺繍は手縫いで華美(かび)にない。


 187㎝と背丈は高いが、ルキは204㎝と長身だ。並ぶとアライアが小さく見えた。


 「いや、構わねえよ。お前の蝶々は好きだし」


 ルキはアライアの能力、蝶青届美(ちょうせいかいび)の伝達を受け、いまに至る。蝶青届美(ちょうせいかいび)はアライア自身の伝言を霊光(れいこう)した青い蝶々が特定の相手に届ける、一種の通信手段だ。役目を果たした後は消散する。神力(しんりき)で操った儚い命を灯らせる蝶々は決して痕跡を留めない、優れた才幹(さいかん)だ。


 「……ありがとう」


 「――で、何の用だ?」


 首を傾げるルキは両腕を組み、本題を促した。アライアは両頬(りょうほお)を桃色に染め、目線を彷徨わせている。


 「え、と……」


 「……? 煮え切れねえな、なんだよアライア?」


 ルキはぐずぐずした態度が嫌いだ。アライアもルキの性質を十分、理解しており、意を決して気持ちを言葉にした。


 「……ッ、私ルキが好きなの!!」


 「ああ、俺も好きだ」


 「違うわよ!!」


 「……あ゛? 好きじゃねえの? なぞなぞか?」


 すぐさま否定され、ルキは困惑気味な様子だ。わざと誤魔化しているわけではないルキに、アライアはしっかり丁寧な口調で告白する。


 「私は、……ルキを、兄以上の、ひとりの男神(おがみ)として愛してるの!! 将来はル、ルキのお嫁さんになりたい!!」


 「……ああ、成程な。勘違いしたすまねえ」


 「謝らないでよ……ッ!!」


 真っ赤な表情のアライアは珍しい。ルキは暫し黙考(もっこう)し、「じゃあ」と沈黙を破った。


 「俺と結婚するか?」


 突然の求婚にアライアの美声が裏返る。


 「……へあ!?」


 「お前、俺の嫁になりてえんだろ?」


 確かにアライアはつい今し方、前言で告げていた。間違ってはいない。


 「な、――りたいけど!! まだ恋人じゃないし、急でしょ……」


 「俺は上位神(じょういしん)兄妹弟(きょうだい)を愛してる。お前が俺の嫁になりてえなら、俺はお前の願いを叶えてやりたい。恋人期間は正直、面倒くせえ。一カ月後の結婚でどうだ?」


 「……いいの? 私は嬉しいわよ、どんな形であれルキと結婚できるんだもの」


 数世紀の片思いだ。無論、相思相愛が理想であるものの、天上皇(てんじょうおう)に創造された上位神(じょういしん)で兄妹のふたりの間に根幹を成す愛はある。ふたりだけの愛は、悠久の時間の中でゆっくり育めばいい。


 「じゃあ決まりだ。でも条件がある」

 

 「条件……?」


 アライアはルキの語尾を反復させた。「ああ」と継いで言明(げんめい)する、闇夜を切り裂くルキの眼光は鋭い。


 「俺が愛する一番はタリアだ、二番目はエル、お前は三番目になる。物事の優先順位もタリアが一番だ。生涯、順番は絶対に変わらない。タリアと天秤に掛けれる神はいない。上位神(じょういしん)も含めあらゆる状況に限らずだ、飲めるか?」


 「飲めるも何も、私の優先順位の一番だってタリアよ。それにエルとルキの関係性は既知の事実でしょ。今更よ。飲むわ、その条件」


 一体全体、如何(いか)なる過酷な条件かと身構えたアライアの肩の力が一瞬で抜ける。タリアはアライアの唯一無二の存在だ。発言に偽りはない。同じ炎で生まれた双子の片割れエルと、ルキが互いに特別なことも上位神(じょういしん)で知らない者はいない。当たり前で驚きのない前約に、アライアは躊躇わず承諾した。


 意思の強い女神だ。ルキは真っ直ぐで揺るがないアライアの眼差しに微笑する。


 「ジジイには俺から伝えておく、話は終わりだな?」


 「え? ええ……」


 「じゃあ俺は帰る。おやすみ、アライア」


 「…………!?」


 ちゅ、と可愛い音が響いた。刹那の口づけをし、ルキは十二枚の翼を広げ飛んだ。驚愕するアライアはルキが触れた自分の口元に指先を当て、独り()ちる。空間に落ちた声音は溜息交じりでか細い。


 「……配慮がないわね。こっちは初めてのキスなのよ、まったくもう……」


 連ねる文句は夜空に吐かれた。けれど念願の夢が現実味を帯び、口端は弧を描いている。平然を装い強気でいたが内心は振られる不安もあって怖かった。しかし自分の勇気のお陰で一カ月後はルキの花嫁だ。アライアは高鳴る鼓動の抑えが効かない。


 「ぼうっとしていられないわ……ッ、相談に乗ってくれたエシュネに報告しなきゃ! ああっ、お礼に何かいるわね!! 褒美よ褒美っ、何がいいかしら!」


 今夜はきっと興奮が冷めず徹夜になる。アライアは喜びを胸に宮殿へ戻ったのだった。

おはこんばんは、白師万遊です(*´︶`*)♡

最後まで読んで頂きありがとうございます!ぺこぺこ

すべての読者様に感謝……( ;ᵕ; )


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頂けると更新の励みになります(ღˇᴗˇ)。o♡


また次回の更新もよろしくお願い致します( *´꒳`*)੭⁾⁾

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