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桜紅初恋(オウコウ・チューリエン)1月24日番外更新☆  作者: 白師万遊
═════⊹⊱❖黑の章❖⊰⊹══════
126/134

第二集:タリアが一番


 (ひつじ)(こく)正刻(せいこく)――、天上界外城(がいじょう)内城(ないじょう)と比べ騒がしい。中級三神(ちゅうきゅうさんしん)下級三神(かきゅうさんしん)の神々が各々(おのおの)の任務で往来している。外城(がいじょう)上級三神(じょうきゅうさんしん)上位神(じょういしん)下位(かい)の神の居住する宮や、彼らが課せられた責務を全うするにあたって与えられた宮殿などがあった。


 地上と天上を繋ぐ中央往来(ちゅうおうおうらい)()外城(がいじょう)にある。


 中央往来(ちゅうおうおうらい)()の形状は四角形の断面を持ち、上方に向かい徐々に狭まった高く(そび)え立つ直立の石柱(せきちゅう)で、先端部分はピラミッドの四角錐になっていて頂点は鋭い。金の薄板で装飾されてあり、総重量は数百トンに及んだ。


 神々はこれに触れるだけで天光柱(てんこうちゅう)()わば金光(きんこう)に包まれ地上に降りれた。加えて太陽の光の影を利用し、日時計の役割も果たす、優れた方尖柱(ほうせんちゅう)だ。抽象的な感覚で外城(がいじょう)表象(ひょうしょう)とする神は多い。


 天上皇(てんじょうおう)の次に清らかで美しい上位神(じょういしん)の神は通常、余程の要件がない限り外城(がいじょう)に来ない、崇高で偉大な存在だ。

 特に光を司る上位神(じょういしん)ルキは中々、内城(ないじょう)を出ないため、下位(かい)の神々は彼を拝謁(はいえつ)する機会は少ない。しかし今日は違う。彼自らが外城(がいじょう)へと(おもむ)き、歩き回っていた。

 

 下位(かい)の神々はルキの動向を遠目で窺っている。


 「――チッ、どこ行きやがった……」


 舌打ちを打つルキは苛立った様子だ。下位(かい)の神々は彼の威厳ある態度に畏怖の念を抱き動けずにいた。


 刺々しい空気は張り詰めている。


 けれど、そんな緊張感を意に介さない者が現れた。


 「――ルキ?」


 万物を創造する天帝(てんてい)天上皇(てんじょうおう)が創りし最後の男神(おがみ)上位神(じょういしん)タリアだ。


 ぱっちりとした二重瞼(ふたえまぶた)を瞬かせている。澄んだ虹彩(こうさい)、長い上下の睫毛は桜色だ。鼻根(びこん)鼻背(びはい)鼻尖(びせん)の形がいい。神体(しんたい)が陽の差し具合で時折、銀の金属粉を(ちりば)めたかのように煌いていた。真珠の如く上質で滑らかな肌は白く手足は細い。緩やかな腰椎(ようつい)前弯(ぜんわん)、立体感なお尻、理想的に(くび)れた反りのない腰は女性らしい印象があった。全体的に華奢(きゃしゃ)で背丈は165㎝弱ある。


 黄金比率の顔立ちは天上界、随一と謳われ、崇められていた。


 服装は浅血牙(チェンシュエヤー)色の漢服(かんふく)襦裙(じゅくん)だ。衿元(えりもと)が右前の短い上衣の(チョゴリ)竹月色(チューユエスー)のねじられている腰紐、下裙(したも)はウエストスカート状で可愛い。

 白い(なが)襦袢(じゅばん)を内側に着ている。手作業で施された桜刺繍が散らばる襦裙(じゅくん)はシースルー素材だ。桜色の布製の靴を履いていた、靴先は丸みがある。


 桜色の長髪はハーフアップで結い、白いリボンで縛っていた。風で舞う髪は艶があって瑞々(みずみず)しい。外見年齢は十六歳前後だ。


  宇宙の美を集めたタリアは神秘的で儚い。


 「タリアお前ッ、こんなトコで何してやがる!!」


 「何って……、アルテミスの森で神体(しんたい)を癒していたんだ。アライアに習っていた舞のお稽古で疲れちゃって」


 ルキの怒号にきょとんとし、タリアは片頬(かたほお)を掻き説明する。普段着ではない襦裙(じゅくん)を着用していた理由だ。


 「はあ……ったく、こっちに来る場合は俺かエルが付き添う約束だろ。ひとりで外城をうろちょろするな、俺を不安死させたいのか」


 ルキはタリアの右腕を引き、抱き締めた。零れる溜息は深い。


 「え、と……申し訳ない」


 「下位神(かいしん)と喋ってねえな?」


 「下位神(かいしん)? ああ、アルテミスの森に誰もいなかったよ。私ひとり、貸し切りだった」


 ルキとタリアが交わした問答は温度差がある。タリアはルキが自分を心配していた原因の根本に気づいていない。


 「……お前の鈍感はいったい誰に似たんだ?」


 「……え? 私は鈍感じゃないよ兄さん、察しはいいほうだ」


 「嘘つくなタリア、察しがいいお前を俺は見た試しがない」


 「私はルキに嘘をつかない。ほら、眉間に皺を寄せないで。男前が台無しだ」


 そう断言してルキの(ひたい)を右手の人差し指で擦り、にっこり微笑するタリアは魅力的だ。慈悲で満ちたタリアの笑顔に、「なんて可憐なんだ」と下位神(かいしん)達は騒ぎ視線を注いだ。


 周囲の囁きを無視できず、苛立つルキが低声で告げる。

 

 「天上皇(てんじょうおう)に最も近い上位神(じょういしん)たる俺達の前で許可なく下神(かしん)が口を開くな、次は処罰する。生温い笞罪(ちざい)じゃ済まさねえぞ、俺は」


 「―――ッ」


 ルキが放つ言葉に場は静まった。消滅の危機を感じさせる命令だ。


 「ルキ――」


 「お前は黙ってろタリア、天上界の掟上、俺の発言は正しい。正しくなくても上位神(じょういしん)の発言は正善(せいぜん)になる」


 「……はい」


 正論でタリアは二の句が継げない。


 「いいかタリアよく聞け、お前は俺の、エルに勝る一番大事な末弟(まってい)だ。兄弟妹(きょうだい)を愛する以上にお前は特別なんだよ」


 ルキは双子の片割れエルを超す、愛し守りたいと思った者はタリアが初めてである。タリアは絶対に失いたくない、大切な自分の子供で優先順位は一番だ。恐らく、否、確実に上位神(きょうだい)達も同じ気持ちで相違ない。


 ルキの気迫に(にじ)んだ焦りの正体は、タリアの未来を危惧するものだ。


 「……ありがとう、兄さん」


 次男の愛情表現を数百年でタリアも理解していた。下神(かしん)に特段、厳しい(めん)も然りだ。もしタリアが彼らを庇ってしまえばルキは益々(ますます)、彼らを敵視してしまう。


 「内城(ないじょう)に帰るぞ、エルがお前の好きな大福を作って待ってる」


 「――――!? 帰ろう!! 早くルキッ!! 大福が私を待っている!!」


 タリアは暗くなった表情を一瞬で明るくし、ルキの左手を握り引っ張った。ルキを急かすタリアの足取りは軽い。「いや大福じゃねえ、エルが待ってんだ」と訂正するルキも又、タリアの行動で刹那に怒りを吹き飛ばしていたのだった。

 

おはこんばんは、白師万遊です(´ω` )/

最後まで読んで頂きありがとうございます!


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次回の更新もよろしくお願い致します(♡´▽`♡)ノ

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