第一集:双子の兄弟
天上界内城南、斗拱建築構造の正風殿の反り屋根の白い瓦と壁に、太陽の神々しい祝福、朝日が差し掛かる。寝室の窓は丸窓だ。手前の障子戸は開けられていた。障子戸の左右は半円に透けている。障子越しで煌き差し込む光は柔らかい。
「――……ん、エル……朝だぞ」
「――……ああ、おはよう」
上位神ルキが隣で寝ている上位神エルを揺すった。どちらも寝起きで声音が掠れている。
光りを司る男神ルキは結っていない白い長髪を掻き上げ、上半身を起こした。二重瞼で白い虹彩の目縁を擦り視界を整える。すっきりとした顎 に鼻筋が通る高い鼻、鼻翼は狭く小鼻だ。黄金比率の骨格で容貌に欠点がない。
「おい、……エル」
「ああ……」
正義を司る男神エルがルキに促され、のそり躯幹を動かし頭部を持ち上げた。長髪の白い髪がハラハラ肩を滑っている。エルの彫の深い目容は額と合わせ三つあり、白い瞳で睫毛、唇や肌は白い。背丈はエルが198㎝、ルキが203㎝だ。山根、鼻背、鼻尖が一直線の鼻、目鼻立ちがいい顔立ちはルキと似ていた。
――何故ならふたりは天上皇が初めて創りし男神、双子だからだ。
因みに長男はエル、次男はルキである。
ふたりが纏った長襦袢は通気性のいい絽だ。エルはきっちり着ているがルキは衿元が開け、乱れていた。
「ふあ~……、眠」
一級木材と特別な趣向と熟練たる手法で製造された木製の高級な天蓋付き、架子牀の寝床はエルのベッドだ。欠伸をしているルキの宮殿は無論、ここではない。
けれどルキはどんなに忙しい時でも必ずエルの宮殿を訪れ、彼と就寝する。根本的な理由は安心にあった。
「……タリアを起こしに行くだろ、ルキ」
「アイツ……、生まれて一度もひとりで起きれた試しねえよな」
末弟タリアが生まれて数世紀、ルキはタリアの目覚まし係だ。
「まだ子供なんだ、大目にみてやれ」
「子供ってお前な、……まあ子供か」
タリアは上位神の一滴の血と一欠片の希望が細胞に組み込まれている。上位神が天上皇の命令で創った神々と違い、美に満ちる澄んだ神魂は上位神の兄姉と同等で崇高、唯一無二の存在だ。上位神が創造に関わって尚、尊い魂は正真正銘、彼ら兄姉各々の子供と言えた。
「俺が起こしに行こうか?」
「駄目だ。俺の役得だ。お前タリアに甘いし起こさねえだろ」
「…………」
エルは無言で肯定する。実は前科があった。ルキに頼まれタリアを起こしに行った際、眠るタリアが可愛くて写真を撮り続けた結果、気づけば正午となっており、ルキに説教された経験がある。
「ま、タリアは俺達の子ですげえ綺麗ですげえ儚い。お前の気持ちもわかるぜ、エル」
「綺麗で儚いか……最近、中位神や下位神の女神、男神がタリアを天界随一の美貌と謳い、色目で窺っている。タリアは秋波に気づいていないが心配だ……」
「あ゛……?」
エルが吐露した不安の原因にルキは濁音を零し、白い柳眉を逆立て、眉間に皺を刻んだ。怒りの籠る眼は鋭い。
「タリアは上位神の誇りはある……が、下位神の神々を平等で扱う上、用件なく自ら話しかける。……タリアは自分に無頓着な性格だ。タリアの優しさを利用し近付き愛を囁く者が出てくるかもしれない。愛は素晴らしいが、タリアは生まれて数百年と若い。恋人を作る段階にないと俺は思っている」
「段階もクソもねえよ。誰が好き好んで下位の連中にタリアを渡すか。タリアの恋人は俺が決める、間違っても下等な下位じゃねえ」
「……落ち着けルキ」
殺気立つルキの背中を擦り、エルが宥めた。予想以上の反応は敵意で汚れている。怒気を帯びた表情は恐ろしい。
「チッ……胸糞悪いぜ。抱かせろエル、こんな酷い感情でタリアに会いたくねえ」
「お前昨日も……」
「昨日は昨日だ、いまはお前の中に一回沈んで冷静になりたい」
そう告げるルキは襦袢の上部を脱いでエルを押し倒し口づけた。すぐさま舌を捻じ込み、口腔を荒く蹂躙する。恋人でない双子だが神魂の片割れを愛さずにいられない。
暫くふたりは再熱で疼く快楽を分かち合ったのだった。
おはこんばんは、白師万遊です(「・ω・)「
最後まで読んで頂きありがとうございます(*ฅ́˘ฅ̀*)♡
感想、レビュー、評価、いいね、ブクマ、フォロー等々、
頂けると更新の励みになります(*´▽`*)❀
次回の更新もよろしくお願い致します(*ˊᗜˋ*)/




