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桜紅初恋(オウコウ・チューリエン)1月24日番外更新☆  作者: 白師万遊
═════⊹⊱❖黑の章❖⊰⊹══════
125/134

第一集:双子の兄弟


 天上界内城(ないじょう)南、斗拱(ときょう)建築構造の正風殿(せいふうでん)の反り屋根の白い瓦と壁に、太陽の神々しい祝福、朝日が差し掛かる。寝室の窓は丸窓だ。手前の障子戸(しょうじど)は開けられていた。障子戸(しょうじど)の左右は半円に透けている。障子(しょうじ)越しで(きらめ)き差し込む光は柔らかい。


 「――……ん、エル……朝だぞ」


 「――……ああ、おはよう」


 上位神(じょういしん)ルキが隣で寝ている上位神(じょういしん)エルを揺すった。どちらも寝起きで声音が掠れている。


 光りを司る男神(おがみ)ルキは結っていない白い長髪を掻き上げ、上半身を起こした。二重瞼(ふたえまぶた)で白い虹彩(こうさい)目縁(まぶち)を擦り視界を整える。すっきりとした(あご)に鼻筋が通る高い鼻、鼻翼(びよく)は狭く小鼻だ。黄金比率の骨格で容貌(ようぼう)に欠点がない。


 「おい、……エル」


 「ああ……」


 正義を司る男神(おがみ)エルがルキに促され、のそり躯幹(くかん)を動かし頭部を持ち上げた。長髪の白い髪がハラハラ肩を滑っている。エルの彫の深い目容(もくよう)(ひたい)と合わせ三つあり、白い瞳で睫毛、唇や肌は白い。背丈はエルが198㎝、ルキが203㎝だ。山根(さんこん)鼻背(びはい)鼻尖(びせん)が一直線の鼻、目鼻立ちがいい顔立ちはルキと似ていた。


 ――何故ならふたりは天上皇(てんじょうおう)が初めて創りし男神(おがみ)、双子だからだ。


 因みに長男はエル、次男はルキである。


 ふたりが纏った長襦袢(ながじゅばん)は通気性のいい()だ。エルはきっちり着ているがルキは衿元(えりもと)(はだ)け、乱れていた。


 「ふあ~……、(ねむ)


 一級木材と特別な趣向と熟練たる手法で製造された木製の高級な天蓋(てんがい)付き、架子牀(かししょう)の寝床はエルのベッドだ。欠伸(あくび)をしているルキの宮殿は無論、ここではない。

 けれどルキはどんなに忙しい時でも必ずエルの宮殿を訪れ、彼と就寝する。根本的な理由は安心(・・)にあった。


 「……タリアを起こしに行くだろ、ルキ」


 「アイツ……、生まれて一度もひとりで起きれた試しねえよな」


 末弟(まってい)タリアが生まれて数世紀、ルキはタリアの目覚まし係だ。


 「まだ子供なんだ、大目にみてやれ」


 「子供ってお前な、……まあ子供か」


 タリアは上位神(じょういしん)の一滴の血と一欠片の希望が細胞に組み込まれている。上位神(じょういしん)天上皇(てんじょうおう)の命令で創った神々と違い、美に満ちる澄んだ神魂(しんこん)上位神(じょういしん)兄姉(けいし)と同等で崇高、唯一無二の存在だ。上位神(じょういしん)が創造に関わって尚、尊い魂は正真正銘、彼ら兄姉(けいし)各々(おのおの)の子供と言えた。


 「俺が起こしに行こうか?」


 「駄目だ。俺の役得だ。お前タリアに甘いし起こさねえだろ」


 「…………」


 エルは無言で肯定する。実は前科があった。ルキに頼まれタリアを起こしに行った際、眠るタリアが可愛くて写真を撮り続けた結果、気づけば正午となっており、ルキに説教された経験がある。


 「ま、タリアは俺達の子ですげえ綺麗ですげえ儚い。お前の気持ちもわかるぜ、エル」


 「綺麗で儚いか……最近、中位神(ちゅういしん)下位神(かいしん)の女神、男神(おがみ)がタリアを天界随一の美貌と(うた)い、色目で窺っている。タリアは秋波(しゅうは)に気づいていないが心配だ……」


 「あ゛……?」


 エルが吐露(とろ)した不安の原因にルキは濁音を零し、白い柳眉(りゅうび)を逆立て、眉間に皺を刻んだ。怒りの籠る(まなこ)は鋭い。


 「タリアは上位神(じょういしん)の誇りはある……が、下位神(かいしん)の神々を平等で扱う上、用件なく自ら話しかける。……タリアは自分に無頓着な性格だ。タリアの優しさを利用し近付き愛を囁く者が出てくるかもしれない。愛は素晴らしいが、タリアは生まれて数百年と若い。恋人を作る段階にないと俺は思っている」


 「段階もクソもねえよ。誰が好き好んで下位(かい)の連中にタリアを渡すか。タリアの恋人は俺が決める、間違っても下等な下位(ヤツ)じゃねえ」


 「……落ち着けルキ」


 殺気立つルキの背中を擦り、エルが(なだ)めた。予想以上の反応は敵意で汚れている。怒気を帯びた表情は恐ろしい。


 「チッ……胸糞悪いぜ。抱かせろエル、こんな酷い感情でタリアに会いたくねえ」


 「お前昨日も……」


 「昨日は昨日だ、いまはお前の中に一回沈んで冷静になりたい」


 そう告げるルキは襦袢(じゅばん)の上部を脱いでエルを押し倒し口づけた。すぐさま舌を捻じ込み、口腔(こうくう)を荒く蹂躙(じゅうりん)する。恋人でない双子だが神魂(しんこん)の片割れを愛さずにいられない。


 暫くふたりは再熱で疼く快楽を分かち合ったのだった。

おはこんばんは、白師万遊です(「・ω・)「

最後まで読んで頂きありがとうございます(*ฅ́˘ฅ̀*)♡


感想、レビュー、評価、いいね、ブクマ、フォロー等々、

頂けると更新の励みになります(*´▽`*)❀


次回の更新もよろしくお願い致します(*ˊᗜˋ*)/

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