第零集:エピローグ(ずっと……)
天上界内城、白い瓦の反り屋根が特徴的な正風殿は広大だ。背面は約100万株の可憐な小花、ネモフィラが咲き誇っている。空と溶け合う青い光景は壮観で気品があった。清楚に満ちる空間は爽やかで美しい。
その真ん中に四角形の石畳が二畳ほどあり、羊毛の緻密なディテールで構成された絨毯が敷いてある。非常に精妙な手織り絨毯は優美で豪華な印象だ。
「――タリアお前、誰に習ったんだ?」
「――アライア達か?」
上位神ルキと上位神エルがタリアに訊ねた。タリアはふたりの間にいる。摘み取ったネモフィラで、冠をふたつ、作っている最中だ。
「絵本で習ったんだよ。ラファお兄ちゃんとクロスお兄ちゃんが練習に付き合ってくれたんだ」
タリアは指先を動かしながら答えた。右にエル、左にルキがおり、三人共、絨毯の上に座り寛いでいる。
「あん? ラファフィルとクロスに? なんで俺が一番じゃねえんだよ!」
「落ち着けルキ、ふたりは遊び係だ」
タリアに噛み付くルキをエルが宥めた。一泊置き、ルキは「……ああ、成程な」と納得する。騒いでいたルキを意に介さず、タリアは作業を進め、繊毛がある肉質の茎を組み込み完成させた。
「できた!!」
瑠璃色の花冠を掲げ、エルとルキの頭上に乗せる。太陽の日差しで輝くタリアの虹彩が、鮮やかな万華鏡の如く煌いていた。タリアは微笑み、日々の感謝を告げる。
「エルお兄ちゃんとルキお兄ちゃん、いつもありがとう」
「……泣いていいか?」
グス、と鼻を鳴らすルキは涙目だ。
「ありがとうタリア、お前達ふたりは俺の自慢の弟だ」
エルがタリアとルキを一遍に抱き締めた。タリアは両手でふたりの漢服を掴み、「私もね」と続けて言う。照れた両頬は仄かに赤い。
「ふたりは私の、自慢のお兄ちゃんだよ」
「なにお前ら……、俺を泣かせたいのか?」
白い双眸を潤ませるルキは涙声だ。
「ルキお兄ちゃん泣いてるの?」
「さあな、感動してるだけだ」
タリアの問いを曖昧に躱したルキは名言せず、流れるがまま、エルの白い唇とタリアのきめ細かい額に口づけた。特段、エルは驚いていない。タリアはきょとんと目を丸めている。見上げた先にいるルキの表情は柔らかい。
「俺もお前らふたりが 宝で、誉れで、自慢だ。エルは俺と同じ炎から生まれた紛れもない同等の双子だろ。んで、タリアは俺の子供同然だ。生涯、愛してる」
時間の概念を超越した、無償で無条件、真実の愛だ。
「生涯、ずっと?」
タリアが語尾の言葉を換言し聞き直す。
「ああ、ずっとだ。忘れるなよタリア憶えておけ、俺の魂が消滅して尚、お前らを愛し守り助けると誓う。お前もだろエル」
「当然だ」
ルキに求められた同意に、考えるまでもなく、エルは即答した。目笑し合うふたりの絆は深い。
「私もー!! 私もずっとお兄ちゃん達が大好きだよ!!」
仲間外れにされたくないタリアが同調の意思を叫んだ。尖った口唇が可愛い。ルキはエルとタリアに両腕を回し、体重を乗せる。
「あー……、マジで幸せ」
「俺も幸せだ」
「私も幸せー!」
色彩豊かな幸福が密集した三人の背中を撫でる風は儚い。
「未来の俺がお前達と一緒にありますように」
――ルキは小声でそう、願ったのだった。
おはこんばんは、白師万遊です( ᐢ˙꒳˙ᐢ )
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