第六集:名をタリア
天地、宇宙、万物の創造主、天上皇が最後の上位神を創り、八日が経った。時間の概念が定着していない天上界、日時計が未の刻の初刻を指す時刻、天上界で最も位階の高い神、上位神達は全員、創炎の間に集合している。
横一列に並んだ上位神達は皆一様に後ろを向いていた。末子の炎はない、すでに天上皇が神魂に神体を授けている証だ。
「(クソジジイ、遅せえんだよ)」
「(まだかしら……)」
ルキやアライア、十一人全員がそわそわした様子で落ち着かない。
刹那、青い上空が彩雲となる。同時に水面が波紋を成し、色鮮やかで華やかな花々が上位神達の体の間を通り抜け、彼らの眼前に広がった。
天上皇の天声が七色声に分かれ響き渡る。
「――私の子等達、今日お前達に新しい末子が誕生した」
「…………っ」
上位神達がゴクリ、唾を飲み込んだ。
「――名はタリア、豊かさと開花を司る神だ」
「(……タリア)」
心中で上位神達が同声に末子の名を反復させた。
「――私が創造した最後の上位神となる。タリアはお前達と同等以上、貴重で新奇な神体だ。目視を諒としよう」
天上皇の許しを得て、上位神達が焦らず、ゆっくり体を反転させる。彼らの目線が一点に集中した。ここ数世紀で一番と断言できる待ち焦がれた瞬間が訪れる。
末子、タリアは中央にいた。
外見年齢は五歳児前後、身長は110㎝弱だ。ぱっちりしている二重瞼で毛先がくるっとした桜色の睫毛は上下長い。未知な世界を映す双眸は睫毛同様に淡い桜色だ。鼻筋は高く小鼻、鼻翼は狭い。控えめな唇は艶がある、顎はシャープで小顔だ。肌理の細かい滑らかな肌は白い。黄金比率に当て嵌まる全美で非のない顔立ちだ。
桜色の長髪は瑞々しく、一本一本、煌いていた。服装は桜色の深衣を纏っている。衽の先を腰に巻き付けたワンピース型だ。衣と裳が繋がった、体をすっぽり覆う衣装で、上半身は比較的ぴったりと、下半身の裳は緩やかになっていた。淡粉色の縁のスリットは開けず、長い衿を三角形のように背中に回し、淡粉色の柔らかい色合いをした絹の帯で締めている。丈は踵に届くマキシマム丈で衽の深い衣服だ。汚れのない十二枚の純白の翼は神々しい。
「……タリアです」
もじ、とした擬音が似合う仕草でタリアが名乗った。上位神の子供はある程度、天上皇の慈悲で言語習得の共通基盤が獲得されており、日常的な会話は可能だ。
凛とした美声、可憐な容姿、上位神達は判断が鈍り声音を揃え訊ねる。
「女神!?」
「――男神だ」
「男神!?」
天上皇に速攻否定され、上位神は驚愕した。可愛すぎる男神だ。美を象徴した末弟の儚さに皆、感嘆せざるを得ない。
兄姉が唖然とタリアを凝視していた最中、タッとタリアが駆け、左端で惚けている長男エルの前に来た。エルを見上げ、タリアが両頬を染め微笑んだ。
「……エル、お兄ちゃん、よろしくね」
純粋で崇高な春風の香りを漂わす末弟は麗しい。
「――――」
エルは突如、後ろに倒れ気絶した。
「……!?」
タリアが驚き青ざめる。短い腕を伸ばしかけた矢先、ルキがタリアの柔らかい細腕を優しい手つきで掴んだ。そして跪き、タリアの右頬を撫でる。
「コイツは平気だ。俺が誰かわかるか、タリア」
「……ルキ、お兄ちゃん、昨日、たくさんお話してくれた、ありがとう」
タリアは炎でいた際の記憶はあるが彼らの血や希望が混ざった事実は知らない。それは不要な情報として消されていた。上位神の兄姉が既知する真実であればいい、そう天上皇が下した判断に上位神は異論を唱えず、兄姉で愛しい秘密を共有する。彼らにとってなんてない些細な秘め事だ。
「……グッ、可愛い」
「私も私も!! さあタリア、私は誰でしょう?」
「……アライアお姉ちゃん」
「大っ正解!! キャ~ッ、タリアは女神よ女神!!」
「じゃあじゃあ~、はい僕は~?」
「……クロス、お兄ちゃん」
「っしゃあ!!」
彼是数分、問答が続き、タリアは十一人すべての名前を言い当てた。直後、折よくエルが目覚め起き上がる。
「……すまん、感動で意識が飛んでいた」
案の定の理由だ。兄姉達は納得の表情を浮かべていた。
「――タリアの前途を祝福しよう」
顔合わせが一通り済み、天上皇が光の粒を降らせる。キラキラ舞う清光は天上皇の恩寵だ。素直に「綺麗」と喜ぶタリアは幼子らしい。
「――全知全能なる天上皇の恩恵に奉謝致します。我等兄姉、末弟、上位神タリアの栄光を祝福します」
継いで兄姉達が片膝を突き、天上皇に拱手し、末弟の誕生を心から祝したのであった。
おはこんばんは、白師万遊です(ღˇᴗˇ)。o♡
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