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桜紅初恋(オウコウ・チューリエン)1月24日番外更新☆  作者: 白師万遊
┈┈••✼✿桜の章✿✼••┈┈
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第六集:名をタリア


 天地、宇宙、万物の創造主、天上皇(てんじょうおう)が最後の上位神(じょういしん)を創り、八日が経った。時間の概念が定着していない天上界、日時計が(ひつじ)(こく)初刻(しょこく)を指す時刻、天上界で最も位階(いかい)の高い神、上位神(じょういしん)達は全員、創炎の間に集合している。


 横一列に並んだ上位神(じょういしん)達は皆一様に後ろを向いていた。末子(まっし)の炎はない、すでに天上皇(てんじょうおう)神魂(しんこん)神体(しんたい)を授けている証だ。


 「(クソジジイ、遅せえんだよ)」


 「(まだかしら……)」


 ルキやアライア、十一人全員がそわそわした様子で落ち着かない。


 刹那、青い上空が彩雲(さいうん)となる。同時に水面が波紋を成し、色鮮やかで華やかな花々が上位神(じょういしん)達の体の間を通り抜け、彼らの眼前(がんぜん)に広がった。


 天上皇(てんじょうおう)天声(てんせい)七色声(なないろごえ)に分かれ響き渡る。


 「――私の子等(こら)達、今日お前達に新しい末子(まっし)が誕生した」


 「…………っ」


 上位神(じょういしん)達がゴクリ、唾を飲み込んだ。


 「――名はタリア、豊かさと開花を司る神だ」


 「(……タリア)」


 心中で上位神(じょういしん)達が同声(どうせい)末子(まっし)の名を反復させた。


 「――私が創造した最後の上位神(じょういしん)となる。タリアはお前達と同等以上、貴重で新奇(しんき)神体(しんたい)だ。目視を(りょう)としよう」


 天上皇(てんじょうおう)の許しを得て、上位神(じょういしん)達が焦らず、ゆっくり体を反転させる。彼らの目線が一点に集中した。ここ数世紀で一番と断言できる待ち焦がれた瞬間が訪れる。


 末子(まっし)、タリアは中央にいた。

 外見年齢は五歳児前後、身長は110㎝弱だ。ぱっちりしている二重瞼(ふたえまぶた)で毛先がくるっとした桜色の睫毛は上下長い。未知な世界を映す双眸(そうぼう)は睫毛同様に淡い桜色だ。鼻筋は高く小鼻、鼻翼(びよく)は狭い。控えめな唇は艶がある、(あご)はシャープで小顔だ。肌理(きめ)の細かい滑らかな肌は白い。黄金比率に当て嵌まる全美(ぜんび)で非のない顔立ちだ。

 桜色の長髪は瑞々しく、一本一本、煌いていた。服装は桜色の深衣(しんい)を纏っている。(おくみ)の先を腰に巻き付けたワンピース型だ。(ころも)()が繋がった、体をすっぽり覆う衣装で、上半身は比較的ぴったりと、下半身の()は緩やかになっていた。淡粉(タンフェン)(しょく)(ふち)のスリットは開けず、長い(えり)を三角形のように背中に回し、淡粉(タンフェン)(しょく)の柔らかい色合いをした絹の帯で締めている。丈は(かかと)に届くマキシマム丈で(おくみ)の深い衣服だ。汚れのない十二枚の純白の翼は神々しい。


 「……タリアです」


 もじ、とした擬音が似合う仕草でタリアが名乗った。上位神(じょういしん)の子供はある程度、天上皇(てんじょうおう)の慈悲で言語習得の共通基盤が獲得されており、日常的な会話は可能だ。


 凛とした美声、可憐な容姿、上位神(じょういしん)達は判断が鈍り声音を揃え訊ねる。


 「女神!?」


 「――男神(おがみ)だ」


 「男神(おがみ)!?」


 天上皇(てんじょうおう)に速攻否定され、上位神(てんじょうおう)は驚愕した。可愛すぎる男神(おがみ)だ。美を象徴した末弟(まってい)の儚さに皆、感嘆せざるを得ない。


 兄姉(けいし)が唖然とタリアを凝視していた最中、タッとタリアが駆け、左端で(ほう)けている長男エルの前に来た。エルを見上げ、タリアが両頬を染め微笑んだ。


 「……エル、お兄ちゃん、よろしくね」


 純粋で崇高な春風の香りを漂わす末弟(まってい)(うるわ)しい。


 「――――」


 エルは突如、後ろに倒れ気絶した。


 「……!?」


 タリアが驚き青ざめる。短い腕を伸ばしかけた矢先、ルキがタリアの柔らかい細腕(ほそうで)を優しい手つきで掴んだ。そして跪き、タリアの右頬(みぎほお)を撫でる。


 「コイツは平気だ。俺が誰かわかるか、タリア」


 「……ルキ、お兄ちゃん、昨日、たくさんお話してくれた、ありがとう」


 タリアは炎でいた際の記憶はあるが彼らの血や希望が混ざった事実は知らない。それは不要な情報として消されていた。上位神(じょういしん)兄姉(けいし)が既知する真実であればいい、そう天上皇(てんじょうおう)が下した判断に上位神(じょういしん)は異論を唱えず、兄姉(けいし)で愛しい秘密を共有する。彼らにとってなんてない些細な秘め事だ。


 「……グッ、可愛い」


 「私も私も!! さあタリア、私は誰でしょう?」


 「……アライアお姉ちゃん」


 「大っ正解!! キャ~ッ、タリアは女神よ女神!!」


 「じゃあじゃあ~、はい僕は~?」


 「……クロス、お兄ちゃん」

 

 「っしゃあ!!」


 彼是(かれこれ)数分、問答が続き、タリアは十一人すべての名前を言い当てた。直後、折よくエルが目覚め起き上がる。


 「……すまん、感動で意識が飛んでいた」


 案の定の理由だ。兄姉(きょうだい)達は納得の表情を浮かべていた。


 「――タリアの前途を祝福しよう」


 顔合わせが一通り済み、天上皇(てんじょうおう)が光の粒を降らせる。キラキラ舞う清光(せいこう)天上皇(てんじょうおう)の恩寵だ。素直に「綺麗」と喜ぶタリアは幼子(おさなご)らしい。


 「――全知全能なる天上皇(てんじょうおう)の恩恵に奉謝(ほうしゃ)致します。我等(われら)兄姉(けいし)末弟(まってい)上位神(じょういしん)タリアの栄光を祝福します」


 継いで兄姉(けいし)達が片膝を突き、天上皇(てんじょうおう)拱手(きょうしゅ)し、末弟(まってい)の誕生を心から祝したのであった。

おはこんばんは、白師万遊です(ღˇᴗˇ)。o♡

最後まで読んで頂きありがとうございます!


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