表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
桜紅初恋(オウコウ・チューリエン)1月24日番外更新☆  作者: 白師万遊
┈┈••✼✿桜の章✿✼••┈┈
115/134

第五集:あまりの煌き


 太陽の日差しが天上界の真上にある正午、エルとルキは内城(ないじょう)の天空、ロートアイアン製の扉前にいた。昇っている最中、上空でばったり会い、一緒に飛んできた流れだ。


 「――末子(まっし)、元気してっかな」


 「――早くしろルキ」


 「――っるせえな、お前だけが待ち遠しかったわけじゃねえんだよ」


 ふたり共、昨日、一昨日と多忙で来れていない。二日ぶりの再会となる。エルに急かされ、ルキが創炎(そうえん)()の扉を開けた。


 二人同時に入り、翼を畳んだ。直後、ルキが眩しさで(まぶた)を瞑る。


 「――っうお!?」


 「――くっ……」


 エルも左腕で目元を覆い、遮光した。


 天上皇(てんじょうおう)神力(しんりき)で作られている創炎(そうえん)()の異空間に問題はない。ふたりが目を凝らす先で見つけた光の原因は、中央にて浮遊している末子(まっし)の炎だ。煌きが浅い水面で水光(すいこう)し、凝縮された万華鏡の如く、摩訶不思議(まかふしぎ)で魅力的な、美しい世界を広げている。幻想を超えた神秘的な赫奕(かくやく)たる光彩(こうさい)は尊い。


 それは末子(まっし)の透き通った炎の純度を示している。


 「ちょ、おいエル!! 助けろ!!」


 「……っ、これを装着しろ」


 エルが能力で黒い偏光(へんこう)サングラスを取り出した。

 偏光(へんこう)レンズは入射する光の性質を利用して、見たい対象物に取り巻いた不要な乱反射光(らんはんしゃこう)を取り除き、必要な可視光線(かしこうせん)だけを透過(とうか)させられる、優れた構造のサングラスで、かければ視界は快適になる。


 「……よし、こっちは平気だ。エルそっちは?」


 「俺も平気だ」


 ふたりは肩を撫で下ろし、炎の傍に寄った。装着するサングラス越しで煌々(こうこう)と色鮮やかに咲く華は純粋で穢れがない。(よど)みのない神光(しんこう)だ。


 上位神(じょういしん)の澄んだ魂の誕生をこれまで見守ってきた双子だが、サングラスの使用は初めての経験になる。高次元のエネルギー神体(しんたい)だ。恐らく性質や生気、精神は天地で最も天上皇(てんじょうおう)に等しい。


 「……まさかよ、こんな輝きで生まれてこねえよな? サングラス必須とか?」


 ルキが真情を吐露(とろ)した。現段階、末子(まっし)は裸眼で直視できないレベルだ。


 「杞憂(きゆう)だルキ。父上が……、きっと、まあ、調整してくれる」


 エルの語調はたどたどしい。確信はあるが「もしも」は拭いきれない。


 「……何なんだよエル、ハッキリしねえな。明日だぞ、コイツが生まれんの」


 「絶対(・・)は父上だ。父上が確定する」


 要は天上皇(てんじょうおう)次第だ。天上皇(てんじょうおう)御心(みこころ)末子(まっし)の魂に似合った容姿も創られる。上位神(じょういしん)が口を出すことは許されない。天上皇(てんじょうおう)の意向に従う、それが上位神(じょういしん)の揺るぎない信念だ。


 「――案ずるなルキ」


 刹那、天声(てんせい)が響いた。精巧、()つ、規則的にある無辺な宇宙で秩序を持つ完結した存在、天上皇(てんじょうおう)だ。七色に反響する声は神々しい。


 「本当だろうなジジイ」


 ルキが疑いの眼差しで彩雲(さいうん)を睨んだ。天上皇(てんじょうおう)の真意を問う男神(おがみ)はルキ以外いない。通常は万死に値する無礼千万な行いも、上位神(じょういしん)に限り免罪、(りょう)とされていた。


 「――虚言は申さん。末子(まっし)精光(せいこう)はお前達、上位神(きょうだい)の希望が一体になった証拠だ。明日を楽しみにしておくといい」


 「……って、さっさと去りやがった。片言隻句(へんげんせきく)かよ、あれだけ言うためにわざわざ降りて来やがったのか」


 天上皇(てんじょうおう)の気配はない。空は元に戻っている。


 「一言芳恩(いちごんほうおん)、が如何(いか)に大きい温情か。俺達の心配を晴らして下さった。ありがとうございます父上」


 エルが(こうべ)を垂れ、拱手(きょうしゅ)した。ルキは鼻を鳴らし「やってろ」と拱手(きょうしゅ)はせず、末子(まっし)に話しかける。眩耀(げんよう)した炎でルキの虹彩(こうさい)はまるで宝石のようだ。


 「精彩(せいさい)に富んだ色調だなお前は、っと可愛い奴……。俺達の希望だぞエル、俺達の血を引く宝だ」

 

 「……ああ」


 「お前……、涙は明日にとっておけよ」


 「(うるさ)い、俺は泣いていない」


 ルキの言葉を否定するエルの目元は湿っていた。命の尊厳を表す灯火(ともしび)に感動しない神はいない。


 「そうかよ。おい末子(まっし)、お前を迎える準備は整ってる。俺達兄姉(きょうだい)がお前の前途を祝福してやる、安心して生まれてこいよ」


 ルキが低声で零した囁きに応え、末子(まっし)がパチパチ火花を散らせる。ルキとエルは目笑(もくしょう)し、ここ数日の出来事を末子(まっし)に聞かせていたのだった。

 

おはこんばんは、白師万遊です( ᐢ˙꒳˙ᐢ )

最後まで読んで頂きありがとうございます(*´˘`*)感謝


感想、レビュー、評価、いいね、ブクマ、フォロー等々、

頂けると更新の励みになります٩( *˙0˙*)۶


また次回の更新もよろしくお願い致します(*ˊᗜˋ*)/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ