第四集:紛い物と特別
天上界内城と外城を繋ぐ門、七福門が完成して一カ月、上位神ルキはジッと神々の出入りを見つめていた。
七福門は楼門の構造だ。一階に屋根はない。二階部分は高欄が設置されてある。十二本の柱は紅く、屋根は金瓦で鬼瓦箇所が七福神だ。棟の隅、帆立瓦の部分も七福神が神々を見下ろす構図となっている。
「――何してんの、ルキ」
両腕を組んで動かないルキに、話しかけてきた男神は上位神リイガウだ。百合の耳飾りが風で靡いていた。
「……品のない神が増えたなって、アイツらは紛い物だ」
「紛い物、ってお前……、私達が生み出したんじゃねえか」
ルキが言う紛い物の神、換言すれば上位神外の神々だ。上位神の下位、翼を四枚持つ中位神や翼を二枚持つ下位神は上位神が各々の神力で創った神々になる。万物の創造主、天上皇創りし上位神だが、彼らは父の無限で果てのない神力に及ばない。天上皇の命で「神の御使い」を増やしたはいいが、やはり、尊さを感じることはできなかった。
「生み出したが愛着が湧かねえ。俺だけじゃねえだろ」
ルキが横目でリイガウを一瞥する。リイガウは溜息を吐き、右手の平で顎を擦った。「まあ」と考えながら同調はする。
「愛着が湧かない理由は、私達の子であって私達と異なった神々だからじゃねえの? 神力の波動や量、密度や純度が違うだろ。しかもアイツらが神力で創った子供や結婚して出産した子供、中級三神となりゃ、翼はねえし神力も私達と雲泥の差だ。でもまあ……、父さんや私達の使いだし……、ルキお前もそんな目くじら立てんな」
神々の御使いの増加は天上皇の計画のひとつだ。地上が豊かになった際、上位神の数で大地すべての監視、保護は無理に等しい。必ず、彼らの手助けが必要になってくる。上位神も納得の案件であった。
「別に目くじら立ててねえよ。あと俺達の子じゃねえ、ジジイの思想の産物だろ」
リイガウに諭され、低声で返すルキは露骨に唇を窄め、一部否定する。上位神次男のルキは案外、子供っぽい性質だ。喜怒哀楽は双子の長男エルに比べ、表情に出やすい。
「はあ……。ま、いいじゃねえの。私達にゃ末子がいる」
「――だよな!? アイツは俺達の、正真正銘、子供だ!!」
天上皇創りし最後の上位神は、兄姉の血と希望が細胞に組み込まれた唯一無二の存在だ。自分達の血が混ざって尚、同等で崇高、天上皇に授かりし上位神の宝だ。
「ぅおッ、……おお、落ち着けルキ」
突如、ルキに両肩を掴まれ、リイガウは前後に揺さぶられた。首がガクガク外れそうになっている。
「さすがリイガウ、わかってんじゃねえか!」
「いや、皆、わかってんじゃねえ? てかお前、今回は子育て志願すんの?」
新しい上位神が誕生した場合、教育係として上位神が数名、面倒をみる決まりだ。
「あん!? 当たり前じゃねえか!」
「当たり前ってルキお前な、シリスで失敗してんじゃん。シリスの意地わ……、じゃねえ、茶目っ気はお前のせいなんだぞ」
上位神の五男、シリスはルキが育てた。結果、俺様気質で悪戯好きな男神に成長している。上位神の兄妹は彼の無鉄砲な行為で度々、苦労していた。
「失敗じゃねえよ。アイツは生命の死を司ってる。厳しい状況下で任務を熟す神になるんだぜ? 優しさは裏に隠させてんだよ」
「……優しい一面はあるが……」
ごく僅か、と言いたいものの、リイガウは口籠る。
「だろ、任せろ」
自信に満ちたルキは手入れされてある片眉を上げ、ビシッと親指を立てた。白い虹彩が太陽で銀色に輝いている、反射した煌きは神々しい。
「……いや任せろってお前な、全員が志願してるし……」
「よし、エルを脅してくる」
「穏やかじゃねえ……って最後まで聞けよ。まったく、世話が焼ける兄貴だな」
翼を羽ばたかせ、飛んで行ったルキの背中はすでに遠い。独り言ち、苦笑するリイガウはエルを助けに、ルキと同じ方角へ足先を向けたのだった。
おはこんばんは、白師万遊です(*ฅ́˘ฅ̀*)♡
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