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桜紅初恋(オウコウ・チューリエン)1月24日番外更新☆  作者: 白師万遊
┈┈••✼✿桜の章✿✼••┈┈
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第三集:それぞれの願い


 天上界内城(ないじょう)の天空にロートアイアン製の扉がある。十二枚の翼を持つ上位神(じょういしん)のみが辿り着ける場所に、創炎(そうえん)()はあった。


 内部は天上皇(てんじょうおう)神力(しんりき)で異空間となっている。


 上空は青い空、下は薄い水面だ。境界線のない、360度、高積雲(こうせきうん)が漂った空を映す鏡の世界は幻想的で美しい。

 中央に約百センチの高さで浮かんだ透明の炎は燦爛(さんらん)()つ、上品に(きらめ)いていた。命の灯火(ともしび)は宇宙で最も尊い奇跡の(かたまり)だ。


 上位神(じょういしん)達が横一列に並んでいる。天上皇(てんじょうおう)天声(てんせい)が七色に反響した。


 「――長男エルを順に、希望と血を一滴、無垢なる末子(まっし)に贈りなさい」


 「はい父上」


 正面左端(さたん)にいるエルが返答し、進んだ。ブレードの長さが8cmのステンレスナイフを能力で取り出し、まだ形になっていない淡い末子(まっし)の手前で立ち止まる。

 

 「……可愛くて強い、思いやりがある子に」


 エルは願いを囁き、ナイフで人差し指の指頭(しとう)を切り、一滴、炎に零した。(きびす)を返し、ナイフをルキに手渡す。ルキが交代で前に出た。


 「……美人で強い、優しい子に」


 エルと手順は同じだ。「会える日が楽しみだ」と一言加え、三番目のリイガウにナイフを手渡し入れ替わる。


 「……純真で強い、穏やかな子に」


 リイガウは天真(てんしん)末子(まっし)を愛おし気に見つめ、襟元を正すラファフィルにナイフを託した。ラファフィルの歩武(はぶ)は慎重だ。


 「……嬋媛(せんえん)で強い、慈悲に溢れた子に」


 ラファフィルに続く五番目はシリスだ。ラファフィルに渡されたナイフは袖口で隠れて見えない。


 「可憐で強い、芯の強い子に」


 六番目はクロスだ。シリスに投げられるナイフをあわあわ受け取り、駆け足で末子(まっし)に寄った。


 「……え、と……。優美で強い、高潔な子に」


 クロスは「待ってるね」と囁き、七番目のアライアにナイフを繋いだ。アライアも早歩きで末子(まっし)と距離を縮める。


 「……閑麗(かんれい)で強い、魅力が充溢(じゅういつ)した子に」


 八番目はシュトリアだ。緊張気味な様子でアライアのナイフを分捕(ぶんど)り交代した。


 「……繊麗(せんれい)で強い、崇高(すうこう)な子に」


 九番目はエシュネだ。シュトリアにナイフを貰い、落ち着いた足取りで末子(まっし)と距離を詰める。


 「……婉麗(えんれい)で強い、清い子に」


 十番目はキッドだ。シュトリアのナイフを掻っ攫い、末子(まっし)のもとに片足で跳んだ。


 「……清淑(せいしゅく)で強い、気高い子に」


 十一番目はアマトだ。シュトリアにナイフを拒否し、親指の爪で一指し指の指先を切り、末子(まっし)に語りかけた。


 「……優雅(ゆうが)で強い、公平で平等な子に。元気に生まれておいで」


 上位神(じょういしん)、全員の希望の一欠片と一滴の血が、寂光(じゃっこう)たる炎に溶け込んだ。澄み切った光の輪が波打ち、兄姉(けいし)の贈り物に喜んでいるかのようである。


 「…………っ」


 上位神(じょういしん)達の(まなこ)が潤んだ。唇を震わせ、各々(おのおの)、天に拱手(きょうしゅ)した。


 「――いつでも会いに来なさい。下がって()い」


 「はい」


 上位神(じょういしん)、それぞれの返事が同声(どうせい)になる。そして後ろ髪を引かれながら、十二枚の翼を羽ばたかせ内城(ないじょう)へと降りた。純白で神々しい翼を一様に畳み、刹那、騒ぎ始める。


 「~~ねっ、ねっ、もお!! やばい~!! 途轍(とてつ)もなく可愛い子が誕生するんじゃね!? 僕、末弟(まってい)末妹(まつまい)、どっちでもいい気がしてきた~!!」


 クロスが歓喜で頭を抱え、アライアが同調した。火照る両頬は赤い。


 「クロス私もよ!! そりゃあ末妹(まつまい)がいいけどっ!! あの炎の尋常じゃない透き通りッ、可愛さが宇宙一になる予感がするわ!!」


 「ダア~~ッ!! 待ち遠しい!!」


 シュトリアが頭部を乱暴に掻き、叫んだ。その奥でルキが(あご)に右手を添え、微笑している。


 「さすが最後の上位神(じょういしん)、ジジイの入れ込み具合、半端じゃねえな。煌々(こうこう)としてたぜ」


 「父上は俺達ひとりひとり、精密に創り慈悲を下さっている。まあ、燭光(しょっこう)上位神(きょうだい)で断トツかもしれん。俺達兄姉(きょうだい)もすでに末子(まっし)耽溺(たんでき)しているしな。俺は今から末子(まっし)の衣類調達に行く、お前も来るかルキ」


 エルがルキの感想に納得しつつ肩を竦め、流し目で問うた。直後、ガクンとエルの上半身が前のめりになる。エルの体勢を崩した犯人はキッドだ。


 「俺も行く」


 「あらあら、私も行くわ。ルキくんも行くでしょう、ね」


 エシュネが団扇(うちわ)を口元に当て、ルキの左腕に自分の右腕を回した。ルキは口端を上げ、首肯する。満面の笑みが太陽で輝いていた。


 「ったり前だろ! 俺は兄だ。エシュネやキッド、お前らが初めて着た衣類だって俺やエルが選んでやったんだぜ」


 鼻を鳴らすルキは誇らしげだ。エシュネはにこにこ話を聞いている。


 「あらあら、まあまあ」


 「あ~!! 待って僕も僕も~!!」


 「ちょっと!! 置いてかないでよ!!」


 動き出す四人の背をクロスやアライアが追いかけ、結局、全員で末子(まっし)に必要な用品を揃えることになったのだった。

おはこんばんは、白師万遊です(*´▽`*)❀

最後まで読んで頂きありがとうございます!


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