俺の嫁はエルフ受けが悪い【95】
ジンジの王国を瓦解させて数日。
「いい天気ですねぇ……」
「そうだなぁ……」
俺とハンナは村に戻ってきて、2人でのんびりしていた。
暖かな陽気を浴びながら、並んでふかふかのベッドに腰かけている。
あまりにも穏やかな、数日前とは全く違う時間に、あれは夢だったんじゃないかとさえ思えるぐらいだ。
もちろん、そんなことはないんだが。
「それでは、しばらく調査に出て来る」
ヒイラギはサカイ村に戻ってくるなり、そう言ってどこへともなく消えて行ってしまった。
今回はサラも連れて行ったので無茶なことはしないとは思うものの、改めて、あいつにちゃんと子育てができるのか不安ではある。
普段クールなフリしているくせに中身はただのクソオタクだからなぁ、あいつ……まあ、最悪自分の手に負えなくなったらまた頼りに来てくれるだろう。
今は信じるしかない。
「私も私で調査はしておくけど、ま、ヒイラギが出てるならそっちに任せた方が早いでしょうね。どっちかと言うと準備しとくべきなのは、うん、あっちよね……」
ザクロはそんな感じでぶつぶつと何事か呟きながら帰って行った。
あいつはあいつで自分の中で思いついたものを形にする時、怖いくらい集中するのでもう止めようがなかったりする。
たぶん何かしら新しい魔法を思いついたか、必要となる要素を考えていたりするんだろう。
ザクロが無駄な行動を取ることはほとんどないし、完成したらその時に向こうから声をかけてくることだろう。
「僕はどうしよっかなー、ねえ、どうしようか?」
「お前が分からんことを俺が分かるわけないだろ」
「それはそうなんだけどさぁ。ほら、ザクロとヒイラギが張り切ってる時って、僕の仕事、案外なかったりするじゃん?」
「それを言うなら俺はもっと仕事がねぇんだけどな」
「あっはは、それもそっか」
そしてタンポポはと言うと、そんな感じで暇を持て余した結果、
「ねえ、タンポポ」
「何?」
「ちょっと手伝ってほしい」
サクラに声をかけられていた。
「新しい人形の素材?」
「うん」
サクラはサクラで、創作意欲がめきめきと沸いてきているらしい。
一緒に出向いた龍の国のこともあるが、ルジオとの出会いがデカかったようだ。
「すんごいの作る」
「すんごいのと来たかぁ。んじゃ僕も気合い入れないとね」
興奮気味のサクラに、タンポポは乗り気の様子だった。
「ルジオも、手伝ってね」
「我もか?」
「あなたは原型。もっとよく観察させて」
「んん、よく分からんが、我が必要ということだな?」
「そう」
ルジオはそんなわけでサクラと一緒に行くことになった。
すっかり意気投合した様子で何よりだが、あそこのチームが一番とんでもない結果を持って帰ってきそうな気がする。
魔王、魔龍、チート能力持ちのトリオだ。
不安も大きいが、まあ、最悪の手前でタンポポが止めてくれることを願うばかりだ。
そんでもってナエは帰ってきたらヒナタメのところに戻ったとイズミさんが言っていた。
また来るとは言っていたそうだが、向こうにもまた顔出しをすべきだろうか。
とはいえ、マサギのやつもヒナタメのところに一緒に出向いたとのことなので、とりあえず心配はない――と思いたい。
あっちはあっちで困ったことがあったら泣きついてくることだろう。
ペットとはいえ自由に思考して動き回る存在の行動を制限するもんじゃない、というのは思考放棄だろうか?
そんなこんなで俺たちを最近取り囲んでいた連中は軒並み各々のやりたいことに散らばって行き、俺とハンナは束の間の平穏を手に入れていた。
なんだかずいぶんと久しぶりな気がする。
のんびりと2人で過ごすのなんていつものことだと思っていたが、ここ最近は何かと大変なことに巻き込まれてばかりだったので、逆に新鮮だ。
洗濯をしたり掃除をしたり、なんてことも一通り終わった後の、穏やかな昼下がり。
これから何をしようか、と少し考えても、ぽかぽか陽気がそれを許しちゃくれない。
ぼんやりとした頭で、暖かな日差しを浴びているともう、何もできっこない気がしてしまう。
「このままお昼寝でもしちゃいましょうか?」
普段以上にぽやぽやとした様子で、ハンナは提案してきた。
それも良いかもしれないな、なんてことを思いながら、「んん……」と曖昧な返事を返す。
すっかり眠気と陽気にやられた頭は、ほぼ眠りかけだ。
参ったな、全然何も考えられん、とぼんやりしきった俺の体を、ハンナが優しく押し倒してきた。
されるがままにベッドの上に寝転がる俺の頭を、細くしなやかな指が優しく撫でてくれた。
「ふふ、可愛い……」
ハンナはハンナで、とろーんとした顔をしている。
お互いあまり頭が働いていないからこそだろうか、普段やらないようなことも平気でやれてしまっている。
なんなら、このまま放っておいたらハンナが何をしてくれるのか、ちょっと楽しみな気持ちも――ああいや、もうそれどころじゃないぐらいに眠い。
微睡にまったく勝てっこないまま、俺はゆっくりと、睡魔に身を任せてしまうのだった。




