俺の嫁はエルフ受けが悪い【89】
「んでまあ、これからどうするか、って話なんだけど」
改めて座席のついてもらったラコも交えて、今後のための作戦会議が再開された。
「どうしよっか」
「……お前が参謀じゃないのか?」
にっこり笑って俺の方を見るタンポポの姿に、ラコは呆れ顔だ。
「まあ、一応リーダーに聞くみたいなのがいるかなって」
「もう違うだろ、って言ってもまずは俺が何か考えろってんだろ」
「まあね。ユウキが僕の思うぐらいのことを考えてくれるならそれで僕の仕事は減るし、もっと良いのを僕が思いついてたらそれはそれで良しだし」
「相変わらず、こういう人に任せて良さそうな部分は適当だな、お前」
その変わらなさを微笑ましく思えるのは、俺たちが冒険を共にしてきたからこそだろうが、ラコには少しずつ慣れてもらう他ない。頑張れ。
「ま、考えるか。つっても、まずはどうあれ、あいつの居場所、だよな」
「そうだねぇ」
「ジンジの居場所でも、オモトの居場所でも構わないけど、どっちかを探る手段から考えないとだな」
こういうのに長けたやつとくれば、
「ヒイラギ、どうだ?」
とりあえずうちの諜報強者に話を振ってみる。
「……時間さえあれば、今回のように探ることはできるだろう」
「やっぱすぐには厳しいか」
「むしろ今回より厳しくなるでしょうね」
黙って話を聞いていたザクロがため息交じりに言った。
「今回に関しては、言っちゃえば適当にかつ大規模に国を広げてくれてたから見つけることが簡単にできたわけだけど、次もこうとは限らない。むしろ、慎重に動かれたりしたら、見つけるのは困難になるわ。ヒイラギ1人でどうにかなるもんじゃないわよ、きっと」
「ま、それもそうだな」
もちろんヒイラギ1人に調査を丸投げ、ってわけにはいかないと思っていたが、確かに今回みたいに目標がどデカく構えてくれている、なんてことがもう1度発生するとは思えない。
オモトがジンジより計画的で用意周到だとしたら、捜索の難易度は跳ね上がるわけだ。
「何かしら、明確にあの2人を狙い撃ちにして積極的に捜しに行かないと厳しいか」
「狙い撃ち、ねぇ」
んー、とタンポポが考え込む。
「たとえば、今回のきっかけになったような、人身売買に手を貸してる、とかな。何かしら、あいつらに繋がるきっかけを捜せればちょっとは話が早くなるだろ?」
「うーん、それだとちょっと悠長じゃない? 何かが起きてから対処してたんじゃ、次は手遅れになってるかも。ただの悪党相手だったらそれでも良いけどさ」
うーむ、確かに……。
であれば、先手を打てるような手が必要、ということか。
「居場所が分かった方がいい、ってのは、それこそ先んじるダメだしね」
「ザクロ、特定の人物を探る魔法とかないのか?」
「なくはないけど、できても町の中で、とかぐらいが限度よ? 対象に縁のあるアイテムとかがあれば、もうちょっとやれなくはないかもしれないけど……」
そう言うザクロに、俺とタンポポは顔を見合わせる。
「な、何よ」
「縁のあるアイテムじゃないけど、そういう相手ならいるじゃないか、ここに」
「それもたっくさん」
俺はラコを指さし、タンポポは周囲の元国民たちを指さした。
それを見て、ザクロは目をぱちくりさせた後、少し考えてから首を横に振る。
「ダメね、魔法そのものはいけるかもしれないけど、やっぱりある程度の地域は絞り込まないと厳しいわ」
「それさ、調べるのってザクロが1人でやらないと無理なの?」
「制度を求めるなら私がやった方が確実ね」
「求めないなら?」
「まあ、それなら、やり方さえ覚えれば……一応、魔法が使える人なら誰でも」
言いながら、ザクロは俺の方をちらっと見た。
つまり俺みたいなできないことの方が圧倒的に多いやつじゃなきゃいける、と。
「んー、じゃあさ、ここにいる子たち皆に、その魔法を覚えてもらって、各地に散ってもらう、とかはどう? それなら手も足りそうだし、範囲も絞り込む必要ないでしょ?」
「それならまあ、確かにいけなくはないかもしれないけど……」
ザクロは国民たちの様子を見て、もう1度ため息を吐いた。
「ちょっと時間を頂戴。スクロールにして回し読みさせれば多少は効率よく覚えさせられるでしょうから」
「お、確かに。紙とペンをしこたま用意しよう。あとはコピー機、作れたら早いかなー」
「あんた、もし作れたとしてもどこにも渡すんじゃないわよ」
「分かってるって。不用意な技術革新はイズミさんたちにも迷惑かかるしねー」
言いながら、タンポポはあれこれと道具を取り出し始め、ザクロは紙に魔法陣を書き始めた。
これは2人にしばらく任せておいた方がいいか、なんてことを思いながら、俺は俺でできることを考える。
何かしらの手段を使って、2人の足取りを追う、か。
考えながらふと、横に座っていたラコに視線を向ける。
彼女は虎耳虎尻尾を持つ獣人。
動物の要素をモチーフとして生み出されているのだとしたら、ある程度以上に動物と同等の能力を持っている、というのがお約束だ。
「なあ、ラコ」
「なんだ?」
「お前さん、ジンジの匂いとか分かるか?」
「ぶふぅっ!」
もし、彼女らの嗅覚が俺たちより優れていたりすれば、匂いを辿る、という手段が取れるはずだ。
というわけで、至極まじめな質問だったのだが、ラコは軽く口をつけていたお茶を盛大に吹き出してしまった。
そんな焦らせるようなことを言ったつもりはないのだが。
「て、てめぇ、何を聞きやがるんだいきなり!」
「いや、嗅いだことのある匂いとかなら、獣人だし追えるかと思ってな」
「はぁ!?」
「実際、嗅いだこととかあるのか?」
「……言えるかぁ!」
ちょっと涙目になりながら、ラコは立ち上がり、俺のことを思いっきりぶん殴ってきた。
まさかここに来て暴力に打って出られるとは思わず、気付いた時には俺は宙を舞っていたわけだが、うーむ、殴られるほどのことを言ってしまったのだろうか。
そんなことを思っているうちに俺は地面とご対面することになり、打ちどころが悪かったらしい俺の意識はあっさりと刈り取られてしまうのだった。




