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俺の嫁はエルフ受けが悪い  作者: 吉田しく
59/96

俺の嫁はエルフ受けが悪い【59】

「で? そいつ、どうするつもりなの?」

 それなりに激しくもいつも通りな戦闘が終わった頃、ようやくザクロたちは到着した。

 とはいえ、戦力はもう必要ない。

 怪我を治してもらった上でしっかり起こしてもらった俺は、未だ気を失ったままでいるルジオの横に座っていた。

「どうすっかなぁ」

「何も考えてなかったわけ?」

「いや、最初は普通に討伐しておしまい、のつもりだったんだけどな」

 気絶、というか今は眠っている様子のルジオは、軽く撫でてやると気持ちよさそうに小さく「んむ……」と零した。

 一緒に過ごしているうちに、妙な愛着みたいなもんが湧いてしまった。

 いやまあ、人様に迷惑をかけるドラゴンであることに変わりはないのだが、それ以上にただの寂しがり屋ってことも分かってしまった以上、雑に排除するだけ、というのもよろしくないよな、と思ってしまう。

 こいつは悪いやつじゃない、とはさすがに手放しで言うわけにはいかないが、それでも多少の温情はくれてやりたいところ。

「まあ一応説明しとくか」

 というわけで、俺はこのルジオの住処に連れてこられてからのやり取りやらルジオ自身から聞いたことをざっくりと話した。

 一通りを聞いた上で、ザクロとタンポポは頭を抱えていたが。

「……言っとくけど、そいつは連れて行けないから」

「さすがにドラゴンを連れて歩くのはねぇ」

「俺だってそこは分かってるよ。さすがにそこまで言うつもりはないって」

「本当にぃ? ユウキのことだから、連れてってやりたい、とか言い出すんじゃないの?」

「いやいや、冷静に考えてこいつを連れて行くのは問題の方が増えそうだろ。俺だってそれぐらいは分かってる。でもただ討伐して終わり、ってのは可愛そうだと思ったってだけでな」

「じゃ、どうするの?」

 ザクロがじろりと睨んでくる。

 ちなみにハンナは怖い顔のザクロとタンポポにおろおろしているし、ヒイラギに関しては知らぬ存ぜぬといった具合にルジオの観察に励んでいた。

 助け船を期待することはできそうにない。

「できることなら、どっかで静かに暮らさせてやりたいんだよな。ただまあ、寂しい思いもできればさせたくない。とはいえ、人と関わるようなことになればまた面倒事を起こしかねないからなぁ」

「そうは言ってもさ、この子が普通に言うこと聞くとは思えないんだけど」

「そうなんだよなぁ」

 さっきまでの暴れっぷりからして、言うことを聞かせようとしたらまた戦闘することになりかねない。

 俺としてはルジオをこれ以上傷つけたいわけじゃないし、その気持ちは仲間たちも分かってくれているはずだ。

 だからこそ、悩ましい。

 ルジオの望むままに行動させてしまうと、誰かを犠牲にしたり、悲しませたりする結果ばかりになる。

 かと言って、俺たちだってこいつに構ってばかりではいられない。

 解決できる手段を模索したいところだが、俺にはそんな便利な力はない。

 どうしたものか、と悩む俺に、

「じゃあ、封印でもしましょうか」

 あっさりと、ザクロがそう告げた。

「封、印……?」

「ええ。まあどっか人が寄り付かない、そうね、雪山とかにでも封じて、眠っててもらいましょう。ついでに情操教育ね、夢の中である程度常識とか、人と一緒に過ごす上で必要なこととかを睡眠学習させましょう。ちょっと術作るから、待っててちょうだい。あ、ハンナ、手伝ってくれる? あとタンポポ、紙たくさん用意して。あと書くものもね」

「は、はい!」

「う、うん」

 ごく自然に言い連ねた後、ザクロはタンポポが用意してくれた巨大な紙にサラサラと魔法陣を書き出し始めた。

 その様子を見ながら、思い出す。

 そういえばこいつは、魔法使いとしては化け物なんだった。

「ってか、封印って、そんなこともできるのかお前……」

「一応ね。そんな得意じゃないから、何百年も封じるみたいなのは無理よ。私は何度も言ってるけど、基本的に専門は攻撃魔法だから」

「だとしても、ドラゴンを封印できるってヤバいよな」

 思わず確認してしまう俺に、ハンナは苦笑いを浮かべながら頷いてくれた。

「封印魔法なんて、御伽噺で聞いたことしかありません」

「そうなの? 技術的には可能じゃない。要は姿が見えない状態に持っていきつつ、眠らせて動きも封じたらいいんでしょ? 許可のない者と内部からの干渉以外では基本的に破れない状態を維持しつつ、魔法的な鍵を用意すればいいんだから、現存してる魔法の組み合わせでいくらでも作れると思うけど」

「その組み合わせるということが普通はできないんです。ザクロさんは、その、なぜか気軽にやったりしてますけど……」

「私だって気軽にやってるわけじゃないわよ。知らない魔法も多いし、魔法は知らなきゃ使えないし改造もできないから。基本的な知識で言えば私はハンナよりずっと魔法の使い手としては未熟よ」

 その言葉に、ハンナは助けを求めるような眼をこちらに向けてきた。

 分かるぞ、気持ちは。

 こんな規格外なチート能力持ちに持ち上げられたところで困るよな。

 タンポポもそうだが、やっぱり転生者の持っている能力はどいつもこいつも意味不明に強い。

 どれか1つの能力というか、決まった方向性に寄った能力ではあるものの、その分野ではとんでもない常識外れの性能を見せる。

 ヒイラギも戦闘となれば桁外れに強いし、タンポポの開発アイテムには幾度となく助けられているし、ザクロは言わずもがな強いし頼りになる。

 各々の地頭の良さってのもあるんだろうけど、それらの能力をいかんなく発揮している姿を見ると羨ましく思うことも多い。

 俺にもそういう便利な力があったらなぁ。

「うーん、ねぇハンナ、夢見の魔法についてなんだけど」

「えっと、この術ですと、誘導が少し曖昧ですかね」

「あ、なるほど。だったらここは知ってる存在に結び付けて――まあユウキでいいわね、それで夢の内容も結び付ければ、うん、これであとは――」

 瞬く間にザクロによる封印術式の構築が進んでいく。

 ハンナの手伝いもあり、あっという間だ。

 とはいえ、待っている間は手持ち部沙汰も良いところなので、俺は俺でやれることを考えてみる。

 とはいえなぁ、魔法はからっきしだし、ハンナからも「無茶した後なんですから、大人しくしててください!」と怒られたばかりだったりもする。

 俺は少し考えた後、眠るルジオ頭を軽く撫でてやりながら、優しく語り掛けた。

「次に会えた時は、もっとちゃんと話をしたり、一緒に遊んだりしような」

 すると、ルジオは聞こえているのかはたまた夢でも見てるのか、どこか嬉しそうに「うむ……」と小さく呟くのだった。


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