表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

女公爵が頼れるのは唯一執事だけってお話

作者: 下菊みこと

女公爵グレース・オルレアン。彼女は早くから両親を亡くし、女性でありながら公爵家を継いだ若き天才である。領民からの評価は高く、社交界でも注目される存在だ。そんな彼女は誰にも弱みを見せない。唯一、執事であり幼馴染であるグラシアン・ガティネ伯爵令息を除いては。


今日もグレースは部屋に一人で閉じこもる。灯りもつけずにベッドの上で小さく丸まっていた。月明かりが優しくグレースと寄り添うグラシアンを照らす。


「ご当主様。もう大丈夫ですよ」


丸まっているグレースはグラシアンに腹を撫でられて息を吐く。女性特有のこの痛みは、不順なのもあって毎回かなり重いものだ。婚約者も、愛人すらもいない彼女が唯一頼れるのは執事であるグラシアンだけ。彼にだけは、どうせもうバレているし弱みを見せられた。


「大丈夫、大丈夫。…ほら、少しは楽になりませんか?」


「…うん、ありがとう」


ー…


オルレアン家の屋敷では、時々いつもは活動的な主人が急に閉じこもる日がある。けれどみんな何も言わない。執事であるグラシアンが探りを入れさせてくれないのだ。周期からいって女性特有のその日というわけではないだろう、とみんなは思っていた。けれど、彼女はまさにそれで閉じこもっているのだ。生理不順と、それによる生理痛。気分も悪く、またイライラもしてしまう。彼女は人に弱みを見せるのが苦手だ。だから、隠してしまっていた。


最初はグラシアンも弱みを見せてはもらえなかった。グレースを心配して声をかけても、大丈夫だからの一点張り。だが幼馴染でもある彼はついにその日、幼馴染の部屋のマスターキーを使い部屋に入ってしまった。


幼馴染である彼女は、ベッドで蹲っていた。素早く扉を閉めて、鍵をかけると彼女に駆け寄った。


「ご当主様!?どうされました!」


「大丈夫…」


「大丈夫ではないでしょう!」


「大丈夫…一度頼っちゃったら、際限なくなるから…お願い」


「…。いいえ。ご当主様がお辛いのなら、そばにいます」


「…シアン」


「はい」


「お腹撫でて…」


「!…はい」


グラシアンはグレースの腹を撫でる。グレースがほっと息を吐いた。


「…いつもなのですか?」


「うん…」


「その…周期が乱れていませんか?」


「だから余計に辛い…」


「そうでしたか…」


女性特有のそれの辛さはわからない。ただ、いつも気丈な主人が青ざめているのを見ると相当なもののようだ。


「これからは私にだけ、頼ってください。必ず側におります」


「…うん」


こうして、二人だけの時間をグラシアンは手に入れた。願ってもない好機だった。


ー…


「シアン」


「はい、ご当主様」


「…シアンもそろそろ婚約者出来た?」


「いいえ。全ての縁談をお断りしています」


「なんで?」


「わかっているでしょう?ご当主様と同じ理由です」


グレースは目を見開く。なんで、いつからバレていたと思考を巡らす。


「ご当主様はポーカーフェイスは上手いですが、幼馴染の私には通用しませんよ」


ウィンクしてみせるグラシアン。グレースは負けたというように両手をあげる。


「好きです。グレース。私をどうか、貴女の伴侶に」


「…私でいいの?」


「はい」


彼女が頼れるのは、求めるのは、いつだって彼だけなのだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ