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第56話.予想通りってわけか

 俺とロベルトは格闘場に戻って、今の状況を整理してみた。


「密告者か……」


 やっぱり当面の問題はそれだ。一体誰が俺たちの拉致計画について密告したんだろう? やっぱりゼロムだろうか?


「でもちょっと雑ですね」

「雑?」

「はい、密告って……裏社会ではそこまで有効な方法ではありません」


 ロベルトが顎に手を当てて説明を続ける。


「たとえ密告で逮捕されても、組織のボスたちが罰を受けることはほぼありません」

「ふむ……」

「たまにドロシー卿のような使命感の強い人もいますが……その上の人間に賄賂を渡せば済む話です。ビットリオさんの話通り、お金とコネさえあればそこまで問題ではありません」


 なるほど。


「逆に密告したことが追跡されて正体がバレたら、もう裏社会では生きていけません。つまり密告って効果は低いのにリスクだけ高い方法です」

「じゃ、もしゼロムが本当に『黒幕』だったとしても……密告したはずはないと?」

「はい、ゼロムらしくないし……『黒幕』らしくもないです」

「確かに」


 自分の正体を隠すために味方まで殺した『黒幕』が、そんな雑な方法を使うわけがないか……。


「しかもこの密告によって、薬物や人体実験の件が警備隊の耳にも入るようになりました。『黒幕』としては損ばかりであまり得はありません」

「そうだな。じゃ、一体誰が……?」


 ロベルトは少し考えにふけた。


「そうですね……強いて言えば、ルアンさんなら密告をやってしまうかもしれません」

「どうしてだ?」

「あの人は慎重派を装っていますが、実はただの臆病者です」


 俺は白髪のルアンの姿を思い出した。彼は犯罪組織のボスというより、有能な経営者に見えた。


「その臆病な性格のおかげで、徹底的な計画を立てることに長けている人です。しかし危機に弱いというか……想定外の事態が起こると、とんでもないミスをおかしたりします」

「なるほど」


 犯罪組織のボスのくせに臆病者か……。


「じゃ、ルアンが密告者がどうか……確認してみよう」

「確認……ですか?」

「ああ、ルアンのやろうに手紙を送るんだ」


 俺は笑った。


「手紙の内容は『お前のやったことは全部分かっている。レッドより』でいいだろう」

「なるほど……」


 ロベルトも笑った。


「確かに効きそうですね。すぐ手配します」

「ああ」


 俺は頷いてから、別のことを考えた。


「しかし……何故ドロシーは俺たちを逮捕しなかったんだろう。もちろんすぐ釈放されるかもしれないけど……逮捕しておいて損はないはずなのに」

「あのお方は、たぶんレッドさんに興味を持っています」

「俺に?」


 興味?


「はい、レッドさんの力を上手く使えないのかな……という感じでした」

「俺を利用したいというわけか」

「もうすぐ向こうから接触してくると思います」

「そうかもな」


 あの女が何を企んでいるのか気になる。今度会ったらそれを確かめる必要があるな。


---


 俺はロベルトと別れて大通りを歩いた。組織員たちと合流しなければならない。しかし一人で歩いてから間もなく、俺は自分が尾行されていることに気付いた。


「へっ」


 俺もいろんな意味で人気が出るようになったな……と思いながら、人気のない裏路地に入った。するといきなり3人の屈強な男たちが現れて道を塞ぐ。


「やることが露骨だな」


 いつの間にか後ろからも3人の男たちが現れ、俺は完全に囲まれた。

 お前らの所属はどこだ? と聞くまでもなかった。パッと見ただけでよく訓練されている連中だと分かる。この都市でここまで訓練されている連中は……俺の組織員たちを除けば、正規軍だけだ。

 6人の屈強な男たちは少しずつ包囲網を縮めてきた。そして俺との距離が約5メートルになった瞬間、俺に向かって突撃してきた。


「ぬおおおお!」


 俺も正面のやつらに向かって突撃した。3人の男は俺を阻止しようとしたが……そのままぶっ飛ばされる。


「ぐおおおお!」


 倒れた男の体を持ち上げて、後方から迫ってくるやつらに投げ飛ばした。後方の3人は衝撃でふらつき、俺はその隙を逃さず拳を振るってやつらのみぞおちを強打した。


「うぐっ……!」


 結局やつらは抵抗らしい抵抗もできないまま倒れた。俺はまだ完全に気を失っていないやつの胸倉を掴んで持ち上げた。


「そこまでだ」


 急に女の声が聞こえてきた。振り向いたらそれは……もちろんドロシーだった。彼女は俺に冷たい視線を送っていた。

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