表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/601

第6話.お前は…

 その子供は……汚くて、痩せて、傷だらけだった。しかもついさっきまで不良たちに殴られていたせいで鼻血を流していた。本当に悲惨な姿だ。


 でも……泣いてはいない。まるで……昔の俺を見ているようだ。


「レッド、何しているんだ?」


 爺の声が聞こえてきた。


「そのガキも殴るつもりか?」


「殴らない。俺を何だと思っているんだ」


「ならさっさとこい」


「分かったよ」


 俺は爺と一緒に町を離れて、小川の小屋に向かった。


「レッド」


「何だ」


「あのガキ、ずっと後ろについてきているぞ」


 俺は後ろを振り向いた。すると本当にさっきの子供の姿が見えた。町からずっと俺たちの後ろを追ってきたのだ。


「面倒くさいから、殴って追い払え」


「……あんた、本当に悪魔だな」


「今更知ったのか? さっさと追い払えってんだ」


「ちっ」


 ちょっと不愉快だけど仕方がない。俺は爺の指示に従って子供に近づいた。


「おい、お前」


 暴力を振る前に、俺はまず話をかけた。


「これ以上ついてくるんなら容赦ないぞ」


 体格からして11か12歳くらいだろうから、威嚇すれば空気を読んで逃げるだろう……と俺は思った。しかし子供は逃げずに……口を開いた。


「あ……あう……あう」


 子供の口から出たのはまともな言葉ではなく、まるで赤ん坊のような意味のない声だった。


「こいつ……喋れないのか」


 喋れないから殴られても助けを求めることができない。いや、それどころかまともに友達を作ることさえできなかったはずだ。それでずっと一人で苦しんできたに違いない。まるで……昔の俺のように。


「何しているんだ、レッド」


 爺が近づいてきた。


「まさか子供は殴れないってのか?」


「違う」


「じゃ、何をぐずぐずしているんだ!」


 俺は爺の方を振り向いた。


「このガキ……俺が連れて行く」


「……はあ?」


 爺の小さい目に殺気がこもる。


「何言ってんだ、お前? そんなガキはお前の復讐に何の役も立たないんだぞ!」


「分かっている。しかしそれでも連れて行く」


「こいつ……!」


 俺と爺は互いを睨み合った。もちろん爺にはまだ勝てないけど……俺は退かなかった。


「このクソ野郎、勝手なことしやがって……」


 爺が俺に一歩譲ってくれた。


「……お前が言い出したんだから、お前が面倒を見ろ」


「ああ」


「言っておくけど、そのガキは喋れないくせに女なんだぞ」


「……何?」


 俺は驚いて子供を振り向いた。女の子には見えないけど……爺がそう言っているから間違いないだろう。


「ちっ」


 これは本当に面倒くさくなった。でももう仕方がない。


「おい」


 俺は子供を呼んだ。


「言葉の意味は分かるか? 俺についてこい」


 その言葉を聞いた子供の顔が……明るくなった。鼻血と傷のせいでよく分からないけど、たぶん笑っているんだろう。


「あ、あう……あう……」


 子供はゆっくりと歩いて俺に近づき、手を伸ばした。まるで助けを求めているかのように。


「ちっ」


 爺はもう遠くまで行ってしまった。俺は子供の汚くて小さい手を取って……一緒に歩いた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] まじか、もう泣ける展開やん… ど鼠爺、言葉の不自由な少女とどのような関係性を築いていくのか楽しみです!!
[良い点] 喋れない、ヒロイン……?!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ